(二)-7
このとき、忘れていたあの気持ちを思いだした。高校受験までは覚えていたが、その後、すっかり忘れてしまっていた。あの中学二年生の時の、三者面談での先生が口にした言葉を、そしてその言葉でどんな気持ちになったかを。
自分のやりたいこと。直美はよく考えてみると、学校を決めるのも、勉強するのも自分の意志でしてきたのではなく、全て親のいうままにしてきた。それが当たり前の事だったからだ。そうするのが「良い子」だと思っていたからだ。
しかし、直美は大学生にになった。だから、自分の事は自分で決めていい。むしろそれが当たり前なのではないか。
直美は友達や知人に尋ねて回った。受験の志望校や学部をどうやって決めたのかと。
「自分で決めた」
多くの子から同じような返事をもらった。
もしかして、自分が当たり前と思ってきたことは当たり前ではないのではないか? 直美はそう考えるようになった。
(続く)
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