第10話 あんことラムちゃん

—————————————————

【前回までのあらすじ】

AI翻訳機によって話せるようになったあんこ(♂)。

自分の意思を人間に伝えられるけど、人間の言葉は分からない。

猫からの一方通行のコミュニケーションは人間界でどこまで通用するのか?

—————————————————-


「ダーリン、うちはお腹が空いてるっちゃ」


あんこは大きい方のヤツにご飯を催促している。


「早くするっちゃ!」


今日のあんこは「うる星やつら」の『ラムちゃんモード』だった。


「わかってるよ。待ってて、チャ」

ラムちゃんになりきれない大きい方が不器用に答える。



「ママ、あんこのラムちゃん、かわいいのかな?」

大きい方のヤツはママに言った。


「かわいいじゃない。ねーあんこ。」


「そうだっちゃ。うちはかわいいっちゃ。」

あんこは言った。



あんこは大きい方のヤツに要求した。

「ダーリン、うちをなでるっちゃ。」


大きい方のヤツが撫でるとあんこはすぐに飽きてきた。


「ダーリン、なにするっちゃ、もうあきたっちゃ。」

あんこは大きい方のヤツを噛んだ。


気分屋の猫がラムちゃんモードで話すとわがままさが際立つ。

大きい方のヤツはすっかり疲れてしまった。


「あたる君の気持ちがよくわかる。」

大きい方のヤツはママに言った。


「そうね。ラムちゃんが言うとかわいく聞こえるけど、あんこが言うとわがままな女子みたいね。」


「ラムちゃんをかわいく使うのは難しいんだよ。」


大きい方のヤツもママも『ラムちゃんモード』があまりかわいくないことに気付いたようだ。



「うちはもう眠いから寝るっちゃ。」

そう言ってあんこは猫ハウスに戻って行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る