太宰治の代表作、だろう。人間失格とならび。
人間失格とならべたとき、私は迷うことなく本作をとるものだが。
志賀直哉に、貴族のことば遣いではないと言われたと、太宰治はいきり立ち、お前(志賀直哉)のものこそ、そうじゃないかと言ったそうで、志賀直哉はともかく、そんなことでヒストリーを起こすほどでもなく、それが太宰治のよくもわるくも個性とはいえそうだ。『如是我聞』など著しい。私は『如是我聞』が、太宰治のなかでは好きなのだが。
本作は、太田治子の母親がモデルになっている。彼女の手記やはなしを使い、創作されている。太宰治が目をつけただけあり、魅力的な感性をもつ方。なにせ、太宰治を自分が好きで好きでたまらない人と喝破した方。
美しいものが、美しく滅びるさまを描いた砂糖菓子のような作品。