11
直史は、呆然とした。その言葉で、自分はフラれるのだ…と感じたのかも知れない。
「ねぇ…おが…直史君、わたし、直史君にお願いがあるの」
「…」
まだ呆然とする直史に、菟萌は震えるくちびると、テーブルの下で震える手をグーにして続けた。
「直史君に、私を…好きなって欲しい。あの人以上に。あなたを…好きなりたい。あの人以上に。安心したい。嫌いにならないで欲しい。だから…」
菟萌の声がだんだん震えだす。もう、言葉を紡ぐのは無理らしい。これ以上続けたら、どんどん直史には重荷になって行く。解ってる。でも、伝えないわけにはいかない。
「愛して…欲しい…」
とうとう、我慢ならず、菟萌の頬には透明な雫がポトリポトリと零れ始めた。これでフラれたら、きっともう2度と人を好きなる事は無い。だから、もしも直史がこの想いを受け止めてくれるなら、菟萌は、羅賀を2番にしようと、この人を愛していこうと、心に誓っていた。
「先輩…僕部屋に来ませんか?」
「え?」
直史は、突如立ち上がり、伝票を持つと、レジに向かった。そして、菟萌の手を握ると、電車に乗り、直史の家に向かった。
直史のアパートに着くと、菟萌は緊張してきた。起こりうる事は、何となく想像がついたからだ。
ガチャリ…と鍵を開けると、廊下を通り、リビングに通された。すると…、思わず菟萌は驚いた。部屋中、アイドルや、アニメ、ミュージシャンなどのフィギュアやポスター、大量のDVDが所狭しと並んでいた。と言っても意外に片付いている。
「こんなんですよ?俺。先輩の元カレみたいに、写真とか撮れないっすよ?でも、言えます。これだけは…」
見た事がないくらい、真面目な顔で、菟萌を見つめた。菟萌は、思わず視線を逸らした。あんなに一生懸命克服して、何とか直史に助けてほしくて、本当は、もう心臓が飛び出るくらいの緊張を抱え、直史に話しかけていた。
逸らされた視線も、構わず、直史は、そっと菟萌の手を握りしめた。
「俺、幸せにします。菟萌さんの事。大事にします。嫌いになんてなりません。一生一緒にいます。愛してます!!」
菟萌は、震える手をそっと解き、直史の顔を手で包んだ。
「もう…一人にしないで…。大好きよ…直史…」
「俺もです…」
そのまま、2人は、ベッドに倒れ込み、セックスをした。菟萌は久しぶりに高揚感を覚えながら、羅賀に比べると、気持ちよくさせるセックスをする、直史に何度もキスをねだった。
強く強く、愛し合う2人。
やっと言えそうだ。
『羅賀…愛してる…。さようなら…』
部屋にフィギュアと寝癖 涼 @m-amiya
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