第12話


 後日、女の子は大将に僕が宝石類を集めているあまを報告した。


「きーき、きーきー」

「だめだ、余計な行動は慎め」


 女の子は、悲しそうに通訳する。


 だが、ここで引き下がるわけにはいかない。現に未来の僕も引き下がってない。


 僕は殺される恐怖を抑えて、金ぴかの猫にわがままを言った。


「僕は構いません。しかしシャラナは、趣味として魔道具作りにはまっております、ですので、作らしてあげたいのです」


 そういった僕を、女の子はびっくりした目で見る。


 それから慌てて、猫に僕のセリフを翻訳した。


「きーきーきー、きーきー、きききき、きーきーきーきー、きききーーきき、きーきーきーきー、きー」

「お前は、ホントにそのアンドロイドを可愛がるのぅ、まっそいつのためなら良いぞ、俺のでもあるし、おれの猫工知能はたまに俺ら以上の品を創るしな」


 女の子は微笑みながら通訳した。


「きーきーきー、ききき、きーきーきき、きーきー」

「では、今回の命令はその書類の3つのみだ。首尾よくやるように」

「はい」


 金ぴかの猫が宇宙船に乗って、去って行く。


「マスター!」


 女の子が駆け寄ってきた。


「あの、ありがとうございます! シャラナのために、あんなこと言ってくれて!」

「なに、良いんだ。君が幸せなら」

「マスター……」


 女の子が、僕を感謝の目で見つめている。


「シャラナ、マスターが私のマスターで、幸せて背ございます……」

「仲良くやって行こうな」

「はいマスター!」


 この女の子は、脱走計画の要だ。


 ……長引くだろう。


 どれくらいかは知っている、10年くらいだ。


 女の子には、あの大石を作ってもらわねばならない。


 宝石類を日本中から集めさせ、女の子に挙げた。


 金は使わなかったので、僕が貰う。


 良いぞ。


 この金を持って大昔に飛べば……。


 3年後、女の子は回る太陽系の模型化と思ったら時計だったりする魔道具を完成させた。


 ああ、ああ、待ち遠しい。


 今日シャラナは、銀の皿みたいなのがいくつもついた望遠鏡を僕に自慢気に見せてきた。


「おー! すごいすごい!」

「マスター! ここがこだわりのポイントでございます! 見てくださいませ」

「引っ張るなよ、見るよ」


 よし、こうやって煽てて、作らせ続ける。


「そろそろ魔道具で部屋が一杯になって来たね」

「そうなんです……」


 女の子は困った顔をした。


「じゃあ、下町に魔道具を置いて置ける家を作ってあげるよ」

「ホントでございますか!」


 女の子の顔が笑顔になる。


「僕が、いつも懐かしんで行っているアパートの隣にしよう、ちょうど空地だ」

「できるのでしょうか、新たに建物を、個人の理由で建てるなど、大将がお許しになさるでしょうか」

「なんとか言ってみるさ」

「ああ、ありがとうございます、マスター」

「ははは、良いのよ良いのよ」

「マスター、いつもシャラナのために、ありがとうございます!」

「気にするなって、もう。ついでに工房も作ってやるよ」

「まぁ、うれしゅうございます」


 女の子が笑顔で抱き着いてきた


 ……こいつの相手も、あの石を作るまでの我慢だ。


 女の子は、僕になついてくれている。毎回、作ったものを見せてくる。僕に褒められたいみたいだ。中身は女の子か。大人にはならないのかな、たまに僕に、いやに引っ付いてくることがあるが。


 なんでもいい、あの大石を作ったら、もう用なしだ。


 をアパートの横の家をリフォームして倉庫を作った。


 だけど、女の子の趣味で骨董屋みたいな小奇麗なものになる。庭には花が咲き乱れていた。


 猫に新たに家を建てる事に、今回だけ許してもらい、6年が過ぎる。


「マスター、またシャラナ自信作を作りましたっ」

「どれどれ、見せ……」

「この石の穴を覗いてみてください」


 あの石だ。


 きたきたきたきたきたきたきたきたきたきた。


「すごい、過去にも未来にも行けるなんて」

「はい、すごいですっ」


 女の子が、えっへんと胸を張る。


「でも、そろそろ部屋は魔道具でいっぱいじゃないか」

「そうなんでございます、せっかく家と工房を作ってくださいましたのに」

「なら、僕が新たな置き場所を作ってやろう」

「ほんとでございますか?」

「ああ」

「ですが、新たに家はもう建てられないのでは……」


 女の子が俯く。


「大丈夫、いい考えがある」

「というのは?」

「この石で行ける過去に同じ工房を作って、そこに置けばいい」

「この石で行ける過去に、でございますか?」

「そうさ、たしかずっと空き家だった」

「あら、なんていう、ナイスアイデア。さすがマスター!」


 女の子はキャッキャッ飛び跳ねていた。


「ダイヤル一杯の10年前にしよう、僕らがいる頃と、それと被らないようにしないと、なんかややこしい事になる、よね……」

「そうでございますね」

「時空のルールはよくわかんないや、シャラナ、そこら辺きちっとしてね」

「はい、了解でございますマスター。心配はいりません、毎回同じ過去に行く事が可能ですので、シャラナの行った先で被らなければ、もしくはその過去にずっと滞在するなどしないかぎり、何の問題もございません」


 よし。あとは、10年くらい前の僕が来るのを待つだけ。


 早く来い。


「過去では、過去の僕が来るかもしれないね、ははは」

「まぁ、それは楽しみでございます」

「魔法の道具とか言って、見せてやったら、ははは」

「それは、またもナイスアイデア。さすがマスター。では骨董屋という事にしておきましょうか、ふふっ」

「ははは、それは良い、ははは」


 早く来い、その日よ。


 やることを確認しよう。

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