第9話
日本は、核の炎に包まれた。
東京は壊滅。大阪も壊滅。みたいな話を皆が話してたのが小耳に入る。
避難所は大混雑。だいたいトイレも水が流れないし、電気も止まっている。
食料さえない。
僕は混乱を避け、ひとり人気のない山の方へ来た。
リュックに入っているテントを張り、一人暮らしている。
良いテントで、中に入ると外の寒さなんて感じない。しかも1人用でなく2人用のだから、快適すぎる。
そのほかのグッズも、ライフラインがなくなった今、こいつがなかったら光も水も、どうやって手に入れていた事やら。
テレビもネットも何も通じない。ラジオも何も聞こえなくなった。
何もない。
寝るしかない。
寝てよう。
仰向けに寝転んだ。
それから大事な大事な金貨が入っているリュックを掴み、抱き着く。
抱き枕みたいにして、横になった。
テントが 風で緩やかに揺れる。
金貨をどうするかな。復興するまで我慢か……。
まっ核だか何だか知らないが、早く復興しろ日本。
目を閉じる。
今日も一人眠りについた。
「きーきーきー」
「きーーききーきー」
……なん、だ……。
「きーきー」
「きーきーきー、きーききー」
うるさいな……。
うるさいキーキー音に目が覚める。
と、なんだかよくわからない生き物が枕元にいた。
……猫?
2足歩行の猫がテント内に入ってきて、僕を取り囲んでいる。
……なぜに猫の着ぐるみなんて……。
……、……着ぐるみじゃない……?
猫たちを凝視する。
なんだこれ、本当に生き物だぞ……化け猫!?
猫たちは、前足……両手か……? に持っている物を僕に突き付けていた。
……急須?
急須みたいなのの、その注ぎ口部分を突き付けられている。
「きーきー、きーきー」
なんだかよくわからない生き物は、僕に何か言っている。
「きーきーきーきーきーきー」
きーきーと、何言ってるかわからない。
が、急須の先を突き付けて、僕を脅しているってことは、よく分かる。
「きーきーきーきーきーきー」
僕に外に出ろと言っているのか?
身振りからすると、そう言って言るっぽい。
大人しく、立ち上がり、外に出た。
そのまま、街中まで連行される。
街の中では、猫たちに必死の抵抗をしている人がいた。
その暴れていた人を、猫は、急須みたいなやつからビームを出し、おとなしくさせている。
ビームが当たった人は、どうやら、足をつったらしい。
痛そうに、転がり踵を押さえている。
そして猫たちは、足がつって動けなくなった人を、トラックに投げ入れていた。
……あの急須はやはり武器……。
「キーキーキーキーキー」
猫が僕に向け、きーきー、ほくそ笑んで言ってきた。
お前も、言う事を聞かないとああなるぞ。
そう言ってる気がする。
背筋がピンッとなった。
僕は手を上げたまま、猫の誘導していく通り歩く。
街中の人も誘導されて、どうやら同じ場所に向かっていた。
全員というわけではないらしい。
同世代の男、のみか?
一体、何をする気だ?
てか、一体なんだこいつら?
僕は猫に連れられ、駅へと来た。
「きーきー、きー、ききーきー」
駅前の広場の空中に円盤型のなんかが浮いている。
あれは、ユーフォ―!?
その真下に、金ぴかの猫が立っている。
金ぴかの猫は、ほかの猫に指示を出していた。
……あれが、ボス……。
人間達を、自分の前まで普通の猫に連れて来させ、なんかしている……。
……何やってるんだ?
大量の人ごみで、よく見えない。
人の隙間から、なんとか覗き見ると、金ぴかの猫の横には、小型冷蔵庫ぐらいあるデカい急須……みたいなのがある。
「きーきーきー」
金ぴかの猫は、自分の前に連れてきた人間をじろじろ見て、
「きー」
深いため息をして、前足でデカい急須を叩く。
デカい急須の注ぎ口が光って、前に居た人が消えた。
残った両足首から血が飛び散る。
おもわず目を反らした。
なんてこった!? なっなんだ、あれ!?
悲鳴が辺りから聞こえてくる。
そりゃ叫びたくなる。
再び覗いてみると、金ぴかの猫は、足首を蹴り飛ばすと新しい人を前に連れてこさせていた。
そして何か、きーきー言って、ため息ついて急須で消す。
金ぴかの猫は、ずっとこれを繰り返していた。
何をしているのか全く分からない。
何かを調べている?
てゆうか、待ってくれ……。
僕も、金ぴかの猫の前に連れてかれる人間の列に並ばされているじゃないか!?
やばい!
まさか、宇宙人か、あれ!?
頭上のユーフォ―とかから考えるに、そういう事なのか!?
日本はエイリアンの占領下に!?
政府は、警察は、自衛隊は何をやってんだ、あんな猫ごときに!?
早く来てくれ、今すぐ、じゃないと死んじゃうじゃないか!
どんどん、前に並んでいる人がデカい急須の光で消えていく。
僕の番が迫って来る。
これは、マジで死ぬ5秒前なんじゃないのか!?
未来で清掃員だったのはなんだったんだ……?
……僕は死ぬのか?
「きき、きーきー、きー」
「へ?」
しまった、ボケっとしてたら僕の番がきている!
「きーきーきー」
急須を突き付けられ、金ぴかの猫の前に立たされた。
「ききーききーきー」
皆にそうしてるように、金ぴかの猫は僕にも何か言ってきた。
「はい、あの……」
「きーきー」
「いえ……あの、あの、ななんです? あの……」
「きーきーきー」
金ぴかの猫がため息をついて、急須を叩こうと右手を振りかぶる。
殺される!
――駅で裸になれ。
突如、あの時の未来の僕の言葉がよぎる。
直感だった。
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