『近畿地方のある場所について』 4
小沢くんとの最後の会合も例の神保町のカフェで行われました。
席に着き、飲み物が運ばれてくると、彼はアイスのカフェラテに入れたガムシロップを混ぜながら話しはじめました。
「僕の見解を聞いてもらえますか」
私は彼の話を聞くことにしました。
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以前も認識を合わせたように山へ誘うモノは女性に執着しています。「林間学校集団ヒステリー事件の真相」や「新種UMA ホワイトマンを発見!」からわかるように山へ誘うモノ本体はあくまで山からは出ず、何らかの影響を受けた男性を使って女性を山へ誘いこんでいます。誘いこんでいる男性たちが生きているのか、もうすでに死んでいるのかはわかりませんが……。
以前から薄々感じていましたが、誘いこむ目的は女性、なかでも比較的若い女性を「嫁」にすることでしょう。これが、僕たちの「嫁」の概念と同じかはわかりませんが。
ひょっとして、山へ誘うモノは嫁を差し出させるための男性や、自らが嫁になった女性の「肉体」をダムへ飛びこませているのではないでしょうか。
それが原因であのダムは自殺スポットになっている……。
そう考えると、「実録!奈良県行方不明少女に新事実か?」の少女も発見されていないだけで、ダムのどこかに沈んでいるのかもしれません。
ただ、「浮気」のエピソードであるように、人形を身代わりとして差し出すことで、嫁になることからは逃れられるようです。「新種UMA ホワイトマンを発見!」や「待っている」のような、身代わりがなくても生きている例外はあるみたいですけど。
小学校で流行っていた『まっしろさん』と『ましろさま』についてですが、これは山へ誘うモノの影響を受けた、マンションに住むこどもたちが小学校でそれを遊びとして広めたものでしょう。山へ誘うモノが巨大な白い姿をしていることから『真っ白さん』、『真白さま』とも読み取れます。「浮気」で書かれている身代わりを差し出すという点も共通していますし。
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ここまで話すと一呼吸置き、彼は言いました。
「もう少しです。もう少しな気がします。赤い女やシールのことも含めてまだわからない部分は多いですが、もう少しで全部つながっていい特集になりそうなんです」
その勢いのまま、彼は続けました。
「僕、ここまで来たら一度●●●●●に行ってみようと思います」
私はもちろん止めました。
でも、彼は行ってしまいました。
2か月後、彼は死にました。
●●●●●で見つかりました。
皆さんに嘘をついてしまって本当にごめんなさい。
『近畿地方のある場所について』はこれでお終いです。
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