第四話 輝くサンシャインギャル☆ 葵ひまわりですっ☆
Vtuberアイドルプロジェクト「ばちゃます」
三年前から立ち上がったVtuberタレントによる動画配信サービスで、主にゲーム、歌、雑談配信などでそれぞれのタレントの個性を出しつつ、SNSサイト・ツブヤイッタ—やオンラインサロンも活用し、視聴者が気軽に接することができる‶いつでも会えるVtuberアイドル〟をコンセプトにやってきている大人気アイドルグループだ。
それを内の姉が経営しているなんて夢にも思わなかった。
「着いた。ここよ」
都心にある集合住宅に連れていかれる。
自転車が脇に停められている生活感がある駐車場に、ベランダには洗濯物が干されている。どう見てもただの生活用マンションだが、すみれはずんずんと中へ入っていく。
エレベーターに乗り、最上階まで昇る。
506号室。
表札に『株式会社チャイルド・第二支部』と書かれていた。
「ここが今日からあんたが所属する「ばちゃます」の活動拠点よ」
「こんなただのマンションの部屋が?」
中が相当豪華かと思えばそうではない。
リビングは確かにオフィスっぽく、パソコンや書類が敷き詰められているが、本当にこじんまりとしており、キッチンもそのままなのでかなり生活感があった。
キッチンの傍にはオシャレなテーブルが置いてありそこで食事をしている少女がいる。
「ん? その
その、ボブカットの少女が振り返って俺を見る。
あ———この娘知ってる。
「この子は
「へぇ~……あんたがぁ……」
少女がじろじろと俺を上から下まで見る。
男だとバレないか不安になるが、
「そ、これから宜しくね☆」
拳を突き出してきた。
この陽キャ感……やっぱりあの人だ。
「よ、宜しくお願いします……」
コツン、とその拳に自らの拳をぶつける。
「ウェ~イ!」
少女は嬉しそうな声を上げた。
「ほ、本当にそのまんまなんですね。
「え⁉ あたしのこと知ってんの⁉」
少女は驚いた顔をするが、その表情も、Vのモデルとまんま同じ表情をしていた。
「参ったなぁ……名乗る前にリアルバレしちゃうなんて……もうちょっと自分を偽んないとダメかな?」
声やしぐさはそのまんま———葵ひまわりだった。
それだけじゃなく、
「わかりますよ。顔もそっくりですもん」
リアルの〝葵ひまわり〟は、Vのモデルとほぼ同じ顔をしていた。Vのモデルが彼女自身をモデルにデザインされたんじゃないかと思うほどだ。
「ハハハ……」と苦笑するひまわり。
「そりゃそうでしょ。ウチのアイドルたちは皆、リアルの顔をモデルにVtuberモデルをデザインしたんだから」
と、すみれは言う。
「へぇ~……え、そうなの⁉」
あのアニメキャラみたいな側のアイドル達が、みんな現実世界の人間をモデルに⁉
「そうよ。だから、ウチのアイドル達は皆中身も相当レベル高いわよ~。嬉しいでしょ~その中に入ることができて」
「入ることができてって、〝俺〟はその話をまだいいって言ってないっていうか!」
確かに自分もこんなひまわりみたいな女の子たちの輪の中に入ることができるようになるというのは夢のような話だが、唐突過ぎてまだ事実として受け入れられていない。
「俺?」
「あ……」
しまった。
つい、〝俺〟と言ってしまった。
男らしい一人称を使ってしまったことにより、ひまわりからいぶかし気な目を向けられる。
ジーッと見つめられ、冷や汗が出る。
が———、
「アッハッハッハ! 社長の言う通りの女の子だね。確かに大丈夫かもしれないネ」
「で、しょ~! アハハハハ!」
「???」
ひまわりとすみれが顔を合わせて笑い合う。
話が二人だけで通じ合っていて俺は何が何だかわからない。
「あの……どういうことで? というか、俺のことをひまわりさんはご存じなんで?」
あ、また俺って言っちゃった。
「知ってるよ。社長の親戚の男の子っぽい口調がどうやっても抜けなかったボーイッシュな女の子で———」
あ、そういう設定なのかとちらりとすみれを見た。
その瞬間の表情が印象的だった。
すみれは、憂いを帯びた表情をしていた。
そして、ひまわりは「それからぁ、今度デビューが決まっているウチの五期生で!」と付け加えて、話をつづけた。
「今度から
「へぇ~………えっっっ⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉⁉」
———今、何て言った?
俺が———
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