短編『SOS!美少女ヒットマンに命(ハート)を狙われている‼』

森岡幸一郎

『SOS!美少女ヒットマンに命(ハート)を狙われている‼』2020.07/24執筆


先日、僕こと、「鷹宮 夏楓たかみや かえで」に彼女ができました。


アーシャちゃんは「白石・F・アレクサンドラ」と言ってドイツロシアと日本人のクォーターで、可愛くて美人で、料理も家事も出来て、子供が好きで、その上頭もよくて、何よりも僕のことが大好きだという、文句なしの彼女なのですが、でも、たった一つだけ問題があるんです。


実は彼女、殺し屋なんです・・・

 


僕とアーシャちゃんの出会いは忘れもしない、先週の日曜日。


ひょんな事から僕が仕事中のアーシャちゃんを目撃してしまった時でした。



「ご、ごごご、ごめんさない!!!ボ、ボク何も見てませんから!」


僕は慌ててその場を立ち去ろうとしましたが、すぐに追いつかれて、血まみれのアーシャちゃんに馬乗りにされてしまいました。


「い、命だけは!命だけはぁ‼」


僕は必死に命乞いをしました。


「現場を見られたからには生かしておけない。可哀そうだけど・・・死んでもらう…」


僕の願いは聞き届けられず、アーシャちゃんは表情一つ変えないで、持っていたハンドガンを無理矢理僕の口に突っ込んできます。


僕は声にならない声ですすり泣いていました。


「……可愛い」


アーシャちゃんは僕の泣き顔を見て顔を赤くしていました。


「君、名前は?」


ハンドガンは引き抜かれました。


「た、鷹宮夏楓です」


「かえで君…」


さっきまで無表情だった顔が、ニマァっとほころびました。


「学校は?どこ行ってるの」


「え?ぇ、あの、その」


「言え」


再び口に銃をねじ込まれます。


「ひ、ひいまふ!ひいまふ‼」


「どこの学校?」


「私立の六黒高校です…」


「学年は?」


「…2年です」


「………今日はもう帰ってもいいわ」


その後、僕がどうやって家に帰ったのかは覚えていません。


でも、次の日彼女が、僕のクラスの転校生として、黒板の前に立っていた事は鮮明に覚えています。


恐怖に打ち震える帰宅途中、うちの隣に止まった引っ越しトラックから、せっせと段ボール箱を運んでいた彼女の姿も、僕は一生忘れることができないでしょう。



それからというもの、僕は彼女に命を狙われています。


アーシャちゃんは唯一の目撃者である僕を消そうとしているのです。


僕はもう彼女から逃げることはできません。


朝は必ず、僕と一緒に登校するといって、家の前でいつも待っています。


逃げれない様に腕を組んでがっつりホールドされています。


おそらく人気のないところに連れ込んで抹殺する気なのです。


それに加え、毎日手作りの御弁当も持ってきてくれます。


毎日メニューを変え、色彩鮮やかな美味しそうな御弁当ですが、騙されてはいけません。


実はこれには猛毒が入っているのです。


「かえで君、あーん」


ああ、とうとう終わりの時が近づいて参りました。


お父様、お母様、先立つ不孝をお許しください。


僕は、僕はぁ、グスン、二人の子供に生まれてぎで、じ、幸せでじだぁ。


「あーん」


「パクン」


「どう?美味しい?」


「う、うん。おいしい…」


「うれしい」


僕は奇跡的に生き永らえたようです。


にしてもアーシャちゃんはすごい笑顔なのが気になります。


ま、まさか!遅効性の毒なのか!


うぐゥっ、やっぱり僕はここまでのようです。


お父様、お母様、先立つ不孝をお許しください。


僕は、僕は二人の子供に生まれてぎで……


「かえで君、泣く程美味しかったの?」



一生やっとれ。


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短編『SOS!美少女ヒットマンに命(ハート)を狙われている‼』 森岡幸一郎 @yamori966

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