第39話 - ミラベルの微笑

一方、ロンド王子と兵士たちは魔族と戦うのに忙しかった。

いつの間にかラミ姫がどこにも見えなかった。


「ラミ姫!ラミ!どこにいるんだ!」


ラミ姫は半人半馬たちに捕まり、チュタに連れて行かれた。人質にしようとしているのだ。ラミ姫は厳格に魔族を叱った。


「こいつら!このラミ姫を何と見て人質にしようとしているんだ! いっそ私を殺せ!」


ラミ姫が短剣で魔族兵士を刺し、怒った魔族たちが駆けつけてラミを殺そうとした。その時、突然激しい風が吹いてあっという間に魔族を全て吹き飛ばした。

ミラベルはラミ姫の前に立っていた。

ラミ姫がびっくりした。


「なぜ私を救ってくれるのか? ミラベル。」


ミラベルは後ろに座っているラミ姫を振り返り、笑った。


「人間の女でありながらあなたのように強い人は初めて見る。 死なせておくのがもったいない。 名前がラミって言ったよね? 私が友達がいるところまで安全に連れて行ってあげる。」


ラミは ‘これはどういうこと?’ と心の中でとても驚いたが黙っていた。

半人半馬たちも ‘これはどういうことだろう?’ とこっそりとまた集まってきた。


ミラベルは強いながらも恐ろしい口調で叫んだ。


「退け!ラミ姫に手を出す者は私がただではおかない!」


ミラベルの鋭い目と彼の逆らえない気運に圧倒された魔族たちは身動きもできなかった。


ミラベルはラミをさっと抱きしめた。

ラミは驚いてミラベルを見た。

ミラベルの黄金色の瞳は冷たい感じもしたが、深さが感じられ透明で美しく輝いていた。

彼はラミに優しく言った。


「私をぎゅっと握って。 飛び上がるよ。」


ラミはためらい、ミラベルの首を両腕で抱きしめた。

ミラベルは軽く空に飛び上がり,ラミは下を見下ろした。

だんだん小さく見える魔族がわいわい声を上げていた。


ロンド王子と兵士たちは幸いセルフェと合流し、追いかけてくる魔族を打ち負かしながら城に向かっていた。

そして、テシエスとシュピーはシグラ王を助け無事に城に到着した。

その時、空から誰かが降りてきて彼女たちの前に着地した。

テシエスは彼らが誰であるかを知り、非常に驚いた。

ミラベルはラミを抱いていた。


「ラミ!なんてミラベル!」


ミラベルを見るテシエスの恐ろしい目つき。


「ミラベル!どうしてラミを抱いているの? 早くラミを降ろせ!」


ミラベルはラミ姫を床に軽く置いた。

ラミはテシエスがすぐにミラベルを攻撃するのではないかと心配していた。


「そうじゃない!ミラベルは私を救ってくれたの。 半人半馬たちに捕まって連れて行かれていたが、突然現れて私を助けてくれて友達がいるところまで連れて行ってくれたの。」


テシエスとシュピーは一瞬耳を疑った。

ミラベルは気絶しているシグラ王を見た。


「お父さんに何をするつもりなんだ! とんでもない!」


ミラベルは冷たい笑みを浮かべた。


「落ち着け、テシエス。 卑怯に怪我をした人と戦うつもりはない。」


帰ろうとしているミラベルにラミ姫が言った。


「ミラベル、ありがとう。」


ミラベルはラミ姫に微笑んだ。

その笑顔はミラベルらしくない暖かさを感じた。

ラミは笑顔の意味を知ることができた。


「フッ。」


ミラベルは軽く遠くへ飛んでいった。


「ありがとうという言葉は初めて聞くよ。」


飛びながらミラベルはつぶやいた。

妙な気分だった。

微笑ましくも嬉しい魔族らしくない気持ちだと思った。

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