第35話 - 長い時間が経ったが変わらぬ二人

皆沈黙した。

テシエスはセルフェを優しく見つめた。

セルフェは照れくさくてただ笑ってばかりいた。


「セルフェ。私は今のセルフェも好きだった。 その純真な笑いが本当に気に入った。 私はまたセルフェが好きになったの。」


「私もテシエス様が前から本当に大好きでした。 テシエス様もご存知ですよね?」


五色に輝く涙が浮かぶテシエスがセルフェを抱きしめた。


「うん。私も知っているよ。 この姿忘れないよ。 愛してるよ、セルフェ。」


「愛してます、テシエス様。 これまで本当にありがとうございました。」


ラミとロンド王子は笑いながら近づいた。


「セルフェ。あなたに会えて本当に楽しかった。 ありがとう。君を忘れないよ。」


「王子様もまったく。 姿だけ変わるだけで、記憶はそのままだと思いますが。 まあ。」


「その間面白かった。 申し訳ない気持ちもあるし。 元に戻ってもよろしくね。」


ラミ姫の言葉にセルフェは笑った。


「もちろん、ラミ姫。」



テシスはシグラ王を見た。


「お父さん、もう私たちの記憶を戻してください。」


シグラ王の両手は二人に向けられた。

光が四方を覆った。

2人の頭の中の青い石板が割れてしまい、セルフェの姿が変わっていくのをテシエスは感じた。

記憶が戻ったテシエスとセルフェ。

長身の背にだらした銀髪をぎゅっと結んだ柔らかくて強靭な青年の姿。

その上、海のような青い瞳は深ささえ感じさせた。

過去に見た肖像画の中のその姿と、もしかしたら同じなのか。

向かい合う二人。

セルフェは愛らしい彼女に微笑んだ。


「テシエス。こんなにまた会うなんて。 長い年月がかかったけど私の心は変わらない。」


涙ぐみながらにっこり笑うテシエスはセルフェの胸に飛び込んだ。


「セルフェ。セルフェ。 私も相変わらず愛しています。」


感動的な場面に涙を流すラミ姫の肩をロンド王子が軽く叩いた。


「ラミ姫も泣く時があるね。 お姫様もまだ少女だから。」


「私をこんなに泣かせたのはテシエスとセルフェが初めてだよ。」


その時、ロンド王子の袖をそっと引っ張る手があった。


ロンド王子が振り向くと,シュピーは恥ずかしがって立っていた。


「あそこに時間があったら私たちお花見でも行きましょうか?」

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