第30話 - 黄金色の瞳を持つ魔族

ここは西端のアドリベル王国。

恐ろしい暗雲が王国の城を中心にゆっくりと回っていた。

暗雲の中央には非常に大きな穴があり、そこからぼやけた黄色の光が照らされていた。

遠くから見るだけでも恐ろしい場面だった。

その下には空を突くように高くそびえる黒い城がひっそりと立っていた。

城の周りを回る川は、供え物になった犠牲者の血で赤く染まっていた。

カラスたちがあちこち飛んでいた。


黒い城のバルコニーにミラベルが両手であごをつついて、この陰惨な景色を興味なさそうな顔で眺めていた。

腰まで下がってくる長い黒髪に尖った耳、そしてテシエスのような黄金色の瞳をしていた。

しかし、テシエスが暖かい黄金色なら、ミラベルの黄金色の目は冷たい光をしていて、見る人をぞっとさせた。


「ミラベル、今何してるの? 神に対抗するために作られた君は、こんなにのんびり遊んでいる暇がない。」


下半身は黒い馬で、上半身は灰色の肌をした人間の姿である親方チュタがミラベルに近づき厳しく叱った。

すらりとした体をひねりながら伸びをしたミラベルはにやり笑いながら情けないように答えた。


「私が何をしてもしなくても構わない。 私がいないと何もできないことが。」


チュタは歯をかみしめた。

あっという間にごつい手でミラベルの細い首を荒々しくつかんだチュタ。

荒々しくうなり声を上げた。


「あなたが特別に生まれたからといってうぬぼれるな。 あなたはただ私たちの目的を達成させる道具にすぎない。 君のようなものが気に入らなければなくして、また別のやつを作ればいいんだ。」


ミラベルは左手を上げてチュタの額に指一本を当てた。

チュタの後頭部から光線がピュッと長く伸びた。

彼の頭が貫通したのだ。

半人半馬の親分は頭から血を流しながら倒れた。


「じゃあ、作り直してみる? 私を作るのに太古の頃から時間がかかったが、今回はどれくらい早く作り出すか? ハハハ。」


ミラベルは大声で笑いながら廊下を走った。

それからホールの大きな鏡に飛び込んだ。

どこへでも行ける魔法の鏡だった。

ミラベルが叫んだ。


「シャイルン王国へ!」

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