第29話 - 世界の西端にある魔族の王国アドリベル

水晶で飾られた美しい部屋にシグラ王とテシエス一行が座っていた。

テシエスとセルフェ、ロンド王子、ラミ姫は楽な服に着替えた後だった。

シグラ王は窓越しに花畑を見下ろした。

シュピーはいつものように庭で花たちと話していた。


「これまで複雑なお便りが多かったんだ。」


「私たちは皆、シュピーにやられていない人がいません。 シュピーのいたずらは度が過ぎます。500年も眠っていたせいで知り合いと別れてしまいました。」


ラミ姫は肩をすくめて言った。


「シュピーはセルフェを見た後、私たちと話したくなかったので、なぜ私たちを待っていたのか聞くことができない。」


ロンド王子はシュピーがなぜそうするのか疑問に思った。


セルフェはシュピーのことが気になって落ち込んでいた。


「私が......私が妖精に何を間違ったのだろうか? どうして私を見るやいなやナイフを投げたのだろうか。」


ロンド王子はセルフェを慰めた。


「セルフェ、そんなに憂鬱に思わないで。 シュピーは気まぐれだとテシエスも言ったじゃない。 必ずしも君が間違ってそうしたとは限らない。」


シグラ王は愛らしい表情でテシエスを見た。


「テシエス、大魔法使いのセルフェを覚えていないのか? あなたはセルフェをとても尊敬した。 君たち二人は会ったことがあるんだよ。」


「え?本当ですか? お父さん。私たちが旧知ですか? どうして思い出せないのでしょうか? 子供の頃だから忘れたのかな? そんなことを忘れてしまうはずがないのに、本当におかしいです。」


「テシエス様が私を尊敬していたんですって? 陛下。私の記憶が早く戻ってくるようにしてください。 気になることがとても多いです。」


シグラ王が笑った。


「心配するな。 待てば封印が緩む時が来るだろう。 その時封印を解いてくれ。」


シグラ王の言葉に皆微笑んだ。


「お父さん。私の考えではシャイルン王国に何かが起こったようです。 何が起こったんですか?」


テシエスはシグラ王の手に自分の手を重ね,心配そうに尋ねた。


「君にかなわないな。  実は10日前に西のアドリベル王国に男の子が生まれたんだ。 名前はミラベルって言うんだよ。」


「アドリベル王国といえば、黒の半人半馬が住んでいるところじゃないですか。」


「そうだね。そこの空にはいつも暗雲が立ち込めていて、雷や稲妻が鳴り、地上には供え物の血の匂いがするところだよ。 そこに連れていかれて生きて帰ってきた人はいなかった。 彼らは神と対立する種族だ。」


ラミ姫が驚いた顔で、


「そんな怖いところがあったなんて全然知りませんでした。」


と語った。


シグラ王が言った。


「アドリベル族は西の端に住んでいて、世の中に現れないように悪を行うんだ。 だから、知り合いが珍しいんだよね。」


じっくり考えていたロンド王子が拳で手のひらをポンと叩いた。


「思い出しました!師匠から聞いたことがあります。 神話や伝説を求めて旅をする私に、決して西の端には行かないようにと言いました。」


シグラ王は真剣で厳粛な口調で話した。


「そのアドリベル族がミラベルを作って神に対抗しようとしている。」


テシエスは有意義な顔で尋ねた。


「ミラベルはどのように生まれましたか? お父さん。」


シグラ王はテシエスを黙々と見つめながら答えた。


「テシエス。あなたがその事実を知りたがっていると思った。 神があなたを自然の法則と違って特別に創造したように、ミラベルもそのように魔族が創造した存在なのだ。 神に、つまり君に挑戦状を突きつけたのだ。」


雰囲気が重くなった。


みんなの視線がテシエスに向けられた。

テシエスは頭をもたげた。

その顔にはある決意が宿っていた。


「お父さん。彼らが挑戦してきたから避けずに戦わなければなりません。」


シグラ王がこれまでの柔らかかった態度とは逆に強く言った。


「だめだ!彼らの意図が何であれ、あなたは前に出るな。 危険すぎる。 君は喧嘩する必要がない。 私とシャイルン族の戦士たちが自由にするから、あなたは当分王国の中に安全でいなさい。」


「お父さん!神は悪を打ち負かすために私を作ったのかもしれません。」


「テシエス!その理由は神様がいつか教えてくれるはずだ。 お前は気にするな。」


シグラ王は飛び起きて部屋を出た。


「お父さんがあんなに興奮したのは初めてだよ。」


テシエスは言った。

シュピーは窓の外でそっと彼らを見ていた。

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