第3話 - 変身

テシエスはすべて崩れてしまった城を抜け出した。

そこにはロンド王子を待っている白馬が一匹立っていた。

テシエスは彼が王子の白馬であることを一気に悟った。


「私はテシエスだよ。 王子様の馬。 あなたの名前は何ですか?」


馬は首を左右に振り回してブルブルと音を立てた。


「あなたの名前がセルフェなの?」


白馬はそうであるかのようにうなずいた。


「そう、ロンド王子様を知っている。 その方のキスによって私が目覚めることができたの。 ところでラミ姫がロンド王子様を奪っていったんだ。」


馬は前足をさっと持ち上げて力強く叫んだ。


「本当?お前も一緒に助けに行くって? ありがとう、セルフェ。 」


セルフェはテシエスの手に頭を擦り付けた。

私たちは 今、友達だと言っているように感じた。


「レハラ·ディグリーユゲン。 君のその姿を変えて私に従え。」


馬の頭から輝き、周囲に煙が立ち上った。

煙が徐々に晴れると、青い上着に白いズボンをはいた少年の姿が現れた。

そよ風に少年のおとなしく縛られた長い純白の髪と白いマントがひらひらと舞った。

ハンサムな少年が青い目を輝かせて立ち上がった。

テシエスは手を差し出し,少年は頭を下げてその手にキスをした。


「セルフェ。さあ、ロンド王子様を救いにデュタワーに行こう。」


「はい、テシエス様 。」


セルフェはにっこりと笑った。



テシエスはセルフェに魔法を教え始めた。

テシエスは自分が知っている魔法を一つ一つ丁寧にセルフェに教えた。

セルフェはスポンジが水を吸い込むように魔法の知識を吸収した。

一度学んだ魔法をすぐ応用していくのが、なんとなく初めて学ぶ人のようではなかった。

テシエスは優れた弟子の実力に満足したが、一方では気になった。


‘おかしい。セルフェは確かに白馬だったのに、どうしてあんな隠れた能力があるんだろう?’


テシエスはセルフェに途方もない秘密が隠されているのではないかと考えた。


「セルフェ。もしかして白馬である前に魔法使いだったの?」


セルフェは顔を赤らめながら笑った。


「テシエス様もまったく。 そんなはずがないですか。 白馬としての記憶しかないんですよ。 私は確かにロンド王子様の白馬です。」


「 最強の魔法使いである私が見るには白馬である前に魔法使いだったと思う。 セルフェ。記憶をちょっと覗いてみてもいい? 誰かがあなたの記憶を封印したのかもしれない。 」


「たぶん白馬の記憶しかないでしょう。」


テシエスは土の上に魔法の紋章をたくさん描いた。

そして、その真ん中にセルフェが座った。

テシエスはセルフェの額に両手を当てて古代の呪文を唱えた。

魔法の紋章が徐々に輝き始め、緑の光がぴかぴかと二人を包んだ。





テシエスはセルフェの記憶を探り始めた。

ロンド王子を乗せて野原を走った数多くの日々。

ロンド王子と伝説の王国を訪れ、森の中の冒険をした日。

テシエスがセルフェを人間の姿に変身させた日。

ロンド王子とセルフェが初めて会った日もあった。

冒険好きのロンド王子が臣下のブラニと一緒に馬に乗って妖精の森に入ってきて、一人で立っている白馬を発見した。

白馬の首には「セルフェ」と刻まれた木片がかかっていた。


「おお!ここに白馬がいるね。 ブラニ。これ見て。 とても丈夫なやつなのに。 連れて行って訓練させないと。」


ロンド王子は木片をのぞき込み,白馬の背中を叩いた。


「 名前がセルフェだね。」


ずっと周りを見回して震えていたブラニが王子にささやいた。


「王子様。ここは妖精の森なのに、そんなに騒いではいけません。

いつどこから妖精が現れ、私たちを傷つけるか分からないんです。

そして、その白馬も怪しいです。 なんでここに一人でいるんですか?

きっと妖精がいたずらをしようとエサに出したんですよ。 王子様。」


ロンド王子はセルフェをなでて笑った。


「ブラニ、そんなに怖がることはないよ。 妖精たちはずいぶん前に妖精の戦争でほとんど滅亡したと。1人か2人が生きていると伝えられるが、その1人か2人に会う確率はゼロだ。 むしろ人間たちを怖がって隠れていると。」


ブラニは震え続けた。


「王子様。何といってもかまいませんので、早くこの森を出てください。その白馬も置いといてですね。」


セルフェは自分をなでているロンド王子がなんだか気に入った。

セルフェはロンド王子の頬に顔をこすった。


「あれ?セルフェも私が好きみたいだけど?」


ロンド王子がマントをはためかせながらセルフェの背中に上がると、セルフェが力強く足を踏み入れた。


「ブラニ、早くついて来て。 妖精たちが現れる前に。ハハハ! 」


ブラニは慌てて馬に乗り込んだ。


「 ロンド王子様!私だけ一人で置いて行ってはいけません。」


セルフェがなぜ妖精の森に一人でいたのか覚えていなかった。

つまり、ロンド王子に会う前の記憶が何もないのだ。


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