第2話 コロニー

 人間が住める数少ない場所コロニー。

 ここでは悪魔により世界が破壊される前と同じように生活ができている。

 学校や農業、牧場や工場もあり、中で一通りのことは完結できているが、それでも不足する物があるため他のコロニーとの物々交換が行われる。


 四人家族は物々交換に出かけた一行で、運悪くグレムリンに襲われてしまったのだ。

 他に生き残りはいなかった。


「ここは中規模コロニーですか」


「ええ、町が作ったコロニーなので、これが限界みたいです」


 今回の悪魔襲来は三度目であり、過去の情報から三千年後に悪魔の襲来と天使の来援があると予想されていた。

 予想通り前回から三千年後に悪魔の襲来があり、間を置いて天使が現れ、激しい戦いを繰り広げて現在は小康状態となっている。

 天使はその場にいた人間を助け、別の場所へとかくまってくれるため、人々の救いとなっている。


 現在の兵器ではグレムリンには効果があっても、悪魔には全く効果が無い。

 なので基本的に悪魔からは逃げるしか手が無いのだ。

 しかし過去二回の大戦において、唯一悪魔を倒した武器が存在するらしい。

 ≪破魔神滅剣はましんめつのけん

 悪魔はおろか神さえ倒せるその武器を探す事こそ、咲久耶さくや煉也れんやの目的なのだ。


「物資を少し分けて欲しいのですが、可能ですか?」


「もちろんです! 一人や二人分どうって事ありませんから!」


 と、ここまで咲久耶さくやは口を開いておらず、煉也れんやと助けた父親だけが喋っている。


「ねぇねぇお兄ちゃん、お兄ちゃんはぐれむりんと戦って怖くないの?」


 女の子が煉也れんやの手を引っ張って聞いている。

 それを見た咲久耶さくやはカッと目を見開いて女の子を睨みつける。

 だがすぐに笑顔になり女の子を抱きかかえた。


「兄さんはとても強い。グレムリンなんかに負けない」


 咲久耶さくやの外での顔だ。

 基本的に家族以外には背伸びしたような態度をとる。


「そうなんだ~。お姉ちゃんも強いの?」


「もちろんだ。私達兄妹は最強だ」


 女の子はキャッキャッと喜んでおり、それを両親も頼もしそうに見ている。

 その後は役所らしき場所へ行くと家族が背負っていた荷物を渡し、受付の人と会話を始めた。


「すまない、少し時間がかかるから家に戻っていてくれ。お二人も一緒にどうぞ」


 役所を出て母親についていくと、天井には届かないが高いマンションがあった。

 コロニーの人々は基本的にマンションに住んでおり、一戸建てはほぼない。

 エレベーターで四階に登り部屋に入る。

 どうやら二LDKのようだ。


「ごめんなさいね、四人だとこんな部屋になっちゃって」


「いえお構いなく。食料を分けていただいたらすぐに出ますので」


「そんな事をおっしゃらずに一晩泊って行って下さいな。あの人もそのつもりですから」

 

「兄さん、私……」


 珍しく咲久耶さくやが口を開く。

 何かあったのかと煉也れんや咲久耶さくやを見ると、咲久耶さくやはブレザーの制服を指でつまんで見せた。

 泥が付いて汚れており、もちろん髪もべたついている。


「ありがとうございます、一晩お世話になります」


 まずは風呂に入り服を洗濯すると、父親と母親の服を借りて夕食の準備をする。

 その頃には父親が帰って来たので煉也れんやと父親が話を始めた。

 夕食後は子供達が限界を迎えたため、早々に就寝となる。


咲久耶さくやさんは私と一緒でいいかしら?」


「そうだね、煉也れんやさんは僕と一緒に寝よう」


「いえ、私は兄さんと一緒で構いません」


「え? でも兄妹とはいえ同じ部屋はいやじゃ――」


「兄妹だから平気です」


「そ、そうですか」


 半ば強引に兄妹で部屋を確保し、二人はリビングに布団を敷いて寝る事になった。


「えへへ~、お兄ちゃんと布団で寝るのは久しぶりだね」


「何週間ぶりかな」


「む、隙間が空いてる。くっつけるね」


 咲久耶さくやは布団が離れているのが気にくわないようで、わざわざ布団から出てくっつける。

 そして布団に入ると煉也れんやの方を向いてにやける。


「そういえばあの女の子、お兄ちゃんに色目使ってた」


「使ってないだろ」


「アレはお兄ちゃんに惚れてる目だわ、女の子はませてるから」


「じゃあお前もませてるのか?」


「私はお兄ちゃんがいればそれでいいもん」


「いい加減兄離れし「い・や・だ」そうか……」


「ねね、一緒に寝ていい?」


「ダメって言っても入ってくるんだろ」


「うん!」


 ゴソゴソと煉也れんやの布団に移動し、ひょっこりと煉也れんやの横に顔を出す。


「えへへ、おやすみお兄ちゃん」


「ああ、お休み」


 咲久耶さくや煉也れんやの腕を抱きしめ、いやまるで赤ん坊の様に煉也れんやに抱き付くと、スヤスヤと寝息を立てはじめた。


 翌朝、夜が明ける前に二人は目を覚まして訓練を開始した。

 玄関からは出れないので掃き出し窓からベランダに出ると、そのまま下に飛び降りたのだ。

 四階から飛び降りたにもかかわらず着地の音がせず、二人はあっという間にどこかへと走り去っていった。


 そろそろ人々が起きてくる時間になり、空も随分と明るい映像が映されてきた。

 二人は壁を駆け上がり四階まで登ると窓を開けて部屋に入る。

 部屋にはメモを置いてあったが、四人家族は目をまん丸にして二人を見ている。


「お、お帰りなさい。あの、さっき連絡があって、町長がお二人に会いたいそうなんですが、よろしいですか?」


 特に断る理由もないので了承し、朝食を食べて携帯食料を分けてもらい、父親の案内で役場へと向かった。

 役場の三階に町長の部屋があり、中に入るとバーコードハゲの中年男性が三人を迎え入れた。

 ソファーに座ると町長が口を開く。


「初めまして。お二人はグレムリンを剣で倒したとお聞きしましたが、間違いありませんか?」


「はい、私と咲久耶さくやはコレでグレムリンを倒しています」


 そう言って煉也れんやは背中からナイフを一本だし、咲久耶さくやは背中の刀を少し持ち上げて肯定する。


「ではお願いです、第三百六十九コロニーを助けに行って欲しいのです!」

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