第177話 神様から相談を受ける男
白い空間にあるリビングルームで、
小太りの神様とテーブルを囲みお茶をしている。
神様がビスケットをポリポリ食べながら、
「土屋君、死んじゃったね。」
と語りかける。
俺もお茶をすすりながら、
「死んじゃいましたねぇ。」
と答える。
「なんか、アッサリしてるね土屋君…」
と言いながら神様はジャムをビスケットに乗せて食べている。
「確かにね、地球で死んだ時は不完全燃焼人生だったけど、
この十年くらい、
俺的には、かなりアクティブでファンタジーでスペクタクルな人生を味わえましたし…
…神様、そんな甘いヤツに、甘いのを乗せて…オシッコにアリが集りますよ。」
と遠い目をしながら答える。
神様は、
「天界にアリは居ないし、大丈夫だよぉ~。
でもね、普通なら人々を救った土屋君にはサービスしたかったけど、
神様パワーが、今は転生させるほどないからね…」
と言いながら、ジャムに飽きたのかプリンを出して食べはじめる神様を横目で眺めている。
神様は、
「後の事は気にならないの?」
と質問するが、
気にならないと言ったら嘘になる。
しかし、神様パワーも無い今、ご厚意で輪廻コースに戻されずに〈お茶〉をする特別扱いをしてもらっているだけで感謝だ。
「弟子も、街の人も…なんなら後輩も頑張ってくれるだろうし、皇帝陛下はこっちの最高戦力でしょ?
俺が、黒幕をシバいて、魔族や、ドルクを虐めた事を謝らせたい気持ちはあるが、
後を任せても大丈夫だと信じている気持ちの方が大きいので、
無念…な感じはないですね。」
と答えてビスケットをかじる俺に、
神様が、モニターのスイッチをつけて、
「田中君の子孫の様子でも見るかな」
と独り言をいいながら、
モニターを眺めると、
魔導銃に苦戦しながらもロッカ軍を追い込んでいる映像が流れる。
神様は、
「こっちは大丈夫そうだね、
じゃあ、こっちはどうかな?」
と、第13研究所の秘密の研究施設に潜入した〈影〉の視界が映るが…
もう、最悪な状況だった。
三人の爺さんに返り討ちにあい、軒並み奴隷紋を刻まれ、改造されている真っ最中である…
神様がモニターに近づき、三人の爺さんを穴が空くほど見る
そして、
「あちゃぁー、決定だ。
土屋君、これは駄目だよ…邪神族だよ。
やっぱりヤバいの召喚しちゃってたね…
暗殺者では倒せないよぉ~。
一応、神様だもん…
土屋君どうしよう?
彼らを解放して、マヨネーズ王国で面倒見てくれない?
ついでに、邪神族もやっつけたり…」
と無理難題を言ってくる。
「神様、俺死んじゃってますよ。
もう、ソコに映ってるジジィ共をシバく事すら叶いませんよ…」
と寂しそうに答える俺に、
神様は明るく、
「えー、そんな土屋君に朗報です。
ウチの世界にも、人族以外に魔族、そしてこの度〈ドラゴニュート〉が誕生しました。
新たな人種誕生を報告した結果、
格上の神様から、〈そろそろ結婚して世界に人種を増やしたら?〉と提案されて、お見合いをしまして…
結婚を致しました!
いえ~い、パチパチパチ!」
と、ウキウキで話している。
「おめでとうございます。
それは、神様の朗報であって、俺のでは…?」
とアホ顔で神様を見ていると、
神様は、
「あははは、
そうだね、神様ルールは知らないよね。
えっとね、神様の結婚は世界と世界が繋がって、人種や文化などがジワジワ混ざって1つの世界になります。
しかし、どんな世界にも悪いヤツや、ヤバいヤツは居ます。
そこで、神様の結婚のお祝いとして、そんなヤツをやっつける存在を作る権利が格上の神様から頂けます。
英雄、勇者等よりも上の代行者です。」
全く話が見えてこない…
神様はルンルンで、
「奥さぁ~ん。」
と呼ぶと、神様リビングに美しいエルフの女性が現れ、
「はぁ~い、なぁ~にぃ~?」
と答えて神様とイチャイチャしだす。
「奥さぁ~ん、
プンプン!
奥さんの世界のエルフ族とドワーフ族が来る前にまた増えちゃったんだよぉ…」
と…一体何を見せられているのやら…
俺は意を決して、
「神様、こちらの美女は?」
と聞くと、
「美女ですって!あなた。」
と喜ぶ女性と、ちょっと膨れっ面の神様が、
「奥さんは僕のだからね!」
と敵対してくる…
「いや、違って…お名前とか?」
と聞く俺に、
「女神です、どうぞよろしく。」
と答える。
〈名前ないのかな?〉
と考えていると、
女神様が、
「そうなのよ!
結婚して混ざった世界で各種族が次世代の子供を産んで初めて、
私たちに名前が与えられて、出来る事が増えるし、神力が上がるのよ!
邪神族も1種族に数えられるし、アンなの増えても嫌でしょ?
あーあ!誰か神の代行者に成ってジジィをぶっ殺して、2人の世界から叩き出してくれないかなぁー!
…チラッ…チラッ、チラッ。」
〈はいはい、考えてる事が解るのね…〉
と理解した俺に
とわざとらしく困った上で、チラチラ見てくる…
いや…チラ、チラと声に出している…
神様は、
「ぶっ殺すだなんて…
綺麗なお口がバッチくなるよ…
あーあ、誰かが奥さんのお口がバッチく成らない様に、邪神族を根絶やしにしてくれないかなぁ~?
…チラッ」
もういい、付き合うの面倒臭く成ってきた。
「で…何をしたらいいの?」
と諦めて聞くと、
女神様は、
「あら、催促したみたいでゴメンなさいね。
新しい体で、新しいスキル、
それに、新しい仲間とで、
ジジィをぶっ殺す簡単なお仕事よ。
目的を果たして後は自由行動、
まぁ、寿命がきたら天界に来て私たちの手伝いをお願いするかもしれないけど…
そんなの些細な事よね…?」
〈些細じゃねーよ〉…と考えたら、
女神様は、
「あら、そう?」
と返事をした。
〈あ、心が読めるんだった…〉
と考えると神様夫婦が〈ウンウン〉と頷く…
俺は、観念して、
「もう、解ったよ!!
マヨネーズの皆が気になって、気になって仕方がないのも解ってたんだろ?!
やるよ!
ドルクを虐めたジジィをこの世界から退場して頂いたらいいんだろ。」
と答える俺に、
神様が、
「そんな土屋君に朗報です。」
という…。
「結婚報告なら既に聞きましたよ。」
と俺が注意すると、
神様は、〈チッチッチ〉と指を振り、
ビー玉を4つ机に並べた。
寿司を〈ざんまい〉させる社長の様に手を広げ、
「土屋君のお供の魂候補だよ。」
と神様が告げるので、中の1つを手に取ると、
「ご主人、逢いたかったよ」
とミーの声がした。
「ミーちゃん…?」
と呟くと、神様が、
「そうだよ。神様パワーが戻ったら、土屋君のお供に転生させる予定で天界で待機してもらっていたんだよ。
まさかこんなに早く転生チャンスが来るとはビックリだけど。」
と教えてくれた。
「流石、貴方!」
とまたイチャイチャが始まる…
〈もう、許して…〉
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