第176話 戦いの終わりと別れ

ドルクの右側からブルーとアースが攻撃を仕掛けて気を散らし、


ブレスを吐こうとしたら遠距離から鼻の穴や口の中の柔らかい部分を松下に撃ち抜かれる。


注意がそれた所を狙い、


俺は手にしている宇宙光線銃風の魔導銃を構えて、


ヤツの右目を〈ホーリーレイ〉で撃ち抜く。


「ギャアァァァオォァァァ!」


と吠えながら最後に見た風景を頼りに俺にブレスを放つ、


すると、


「結界!」


とサラが回り込みブレスを遮断してくれた。


サラが居なければ、本日二回は確実に死んでいる…


俺は、


「助かったよサラ、有り難う。」


と感謝を述べると、


「兄貴、ホーリーが、暫く結界は張れないかもって…


あまり、役に立たなかったね…アタイ」


と、しょげる。


俺は、


「馬鹿なことを、今日だけでも、

俺の命を二回救ってくれた。


十分だ。」


と告げる。


そして、「一旦離れるぞ!」


と大声を出して離脱する。


カースドラゴンが


〈どこにいる!どこに行った?!〉


と光を失い手当たり次第にブレスを吐いている…


念話で、


〈旦那ぁ、いつでもイケるぜ!〉


とヤングさんの声がした。


〈お願いします!〉


と俺が言うと、


魔導砲台が〈ピカッ〉っと光った後で、


「ズドゥム」と響く轟音、


すると、砲弾はカースドラゴンの腹をえぐり血が吹き出す、


「グガァァァァ!」


と叫び前のめりに倒れるカースドラゴンだが、


追撃が続く、


〈ワイバーン騎士団、超長距離集団戦法・メテオレイン!


はじめぇぇぇ!〉


とノーラ騎士団の念話が聞こえ、


死の雨が倒れたカースドラゴンに降り注ぐ


血に触れた岩が砂になるが、お構い無しで次から次へと降り注ぐ岩、


そして、


〈次!ビックドリルとストーンフォールを有りったけ落とす。


一番から投下はじめぇぇぇ!〉


と念話が聞こえるが、


岩山の下から、


〈許さない、ゆるさない、ユルスモノカ!!〉


とドルクとは思えない地の底から響く様な声がするが、


その声を掻き消すように、岩で出来た弾丸達が降り注ぎ、


大地に突き刺さる。


暫くして、

衝撃音が無くなり、にわかに静まり帰る戦場、


静寂の後…


「オーォォォォ!!」


という歓声が誰からともなく沸き上がる、


しかし、血の一滴までも〈呪物〉と化しているドラゴンの亡骸を〈呪解〉するまで安心は出来ない。


血に触り、手が腐った事もあり、


〈呪解〉の担当は俺だけにして、もしもの時用にアースに〈エクストラポーション〉を持って待機してもらう、


魔石ランドセルを背負い、〈クリーン〉や〈呪解〉を繰り返しながらカースドラゴンに近づいて行く…


ドラゴンの背中に到達し、


〈クリーン〉で血を取り除いた後


背中に触れて、フルパワーの呪解を放つ、


青白い光りに照らされて、ドルクから黒いモヤが滲み出ては掻き消される…


〈お兄ちゃん有り難う…〉


と幼い声がした…キョロキョロしながらも

呪解を続けていると、


〈世話に成った、迷惑を掛けてしまった…我はもっと早く死ぬべきだったのかもしれない…すまない…〉


とドルクの声が聞こえて、濃い黒い靄がスッっと空中に霧散して消える…


ランドセルが空になり、青白い光りも消えて、


いつもの昼下がりの日差しが辺りを包んでいた。


〈終わった?〉


と、脱力しそうに成った瞬間に、


「兄貴!」


とニコニコしながら駆け寄る〈サラ〉と、


〈ユルスモノカ!〉


という声が同時に聞こえた。


「まだ来るんじゃない!」


と叫ぶが、カースドラゴンの死体からドス黒いモヤの蛇が生まれて、サラに向かい体をくねらせる…


俺は、サラに向かい全力で移動するが、


蛇は、〈カカッタナ〉と呟き、


そのまま俺に襲いかかる…


サラのもとに行くことばかり考えていた俺は対応出来ずに首元を噛まれた。


蛇は、


〈ワレハ、ミちヅレのノロい…シぬマデなカヨクしヨウや…〉


と、洒落たセリフを言ってくる。


俺は、魔力の限り〈呪解〉を掛ける間、


サラが真っ青な顔で固まっている…


今にも泣きそうなサラを見つめて、


俺は、〈ニコッ〉と笑うのが精一杯だった…



そして、



俺は、黒くなり、砂の様に、風に吹かれ、


消えた。


俺のアイテムボックスの中身が弾ける様に吐き出され…


俺が、〈死んだ〉…と周りの者も理解した。


唖然とする騎士団達…


呆然とする後輩、


フラフラと俺が居た場所に歩みを進めるブルー、


膝から崩れるアース、


そして、叫びながら泣くサラ…


大勝利と大敗北を同時に味わったような結果が残された者達に伝えられ…


国は何ともいえない夜を迎えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る