第175話 荒ぶるドラゴンに決意する男

サンに乗り、


呪いに苦しみながら、〈滅びのブレス〉を撒き散らすカースドラゴンの〈ドルク〉の注意を上空へ向ける様に飛びながら語り掛ける。


「ドルク、落ち着いてくれ!」


とブレスをかわしながら俺が顔の前を飛ぶと、


〈オマエ知らない、人間嫌い!〉


と敵意を向けてブレスを吐く


〈空に向けてなら、いくらでもブレスを吐くと良い…〉


俺に敵意を向けている間は街に向かう事は無いかも知れない…


俺は念話を使い


〈すまない、封じ込めに失敗した。


ワイバーン騎士団等、空を飛べる者以外は全員街まで退避して下さい。


可能な限り街から遠ざてみます。


周辺にいると無差別ブレスの餌食になるので、


退避を!〉


と指示を出して、


わざとドラゴンの注意を引く様に飛び、


俺は、街から離れる様にドラゴンを誘導する。


「ドルク、落ち着いて、ブレスを止めてくれ!」


と呼び掛け続けながら飛んでいると、


ワイバーン騎士団の背中にしがみつき、魔導拡声器を使い、


「ドルク、ドルク。


落ち着いて、お話を聞いて!」


と呼び掛ける細身の竜人の女性と、


「ドルク、


悪いヤツはここには居ないよ、大丈夫だから」


と優しく語り掛ける竜顔の男性


二人の声を聞いて〈ドルク〉は、


〈エミル?…ザント?


どこ?助けてよ、苦しいんだ。〉


とブレスを止めて地上に降り立つ、


「そうよ、ドルク。


落ち着いて、私たち皆大丈夫だから、


お話を聞いて…」


と〈エミルさん〉が語りかける。


〈わかった〉


と、ドルクの瞳から怒りの色が消える、


「よーし、ドルク、


どこが苦しい?教えてくれ。」


と拡声器で話しかける〈ザントさん〉


ドルクは、


〈お腹が痛くて、胸が苦しくて、頭がグルグルするんだ…〉


と切なそうに答える。


〈何とか呪いを取り払ってやらなければ…〉


と思った時に、


ソレは起こった…


姿の変わり果てた二人を目にした瞬間に、


「グルゥガァァァウォォォ!」


とドルクが吠え、俺を睨む


〈人間…許さんぞ!

我が里の者達を苦しめ、殺し、弄んだ…人間め…エミル、ザント…すまない


そんな姿に…


我が手で、人など滅ぼしてくれるわ!!〉


と、今までに無い殺意を俺に向ける。


「ドルク様、その方は我々の味方です。」


とエミルさんは慌てて説明してくれたが、ドルクは聞く耳を持たない。


〈急に話し方が変わったし、エミルさんがに変わったのも気になる〉


竜顔のザントさんが、


「お逃げ下さい、王様!


ドルク様の主人格は人を心から憎んでおります。」


と叫ぶ。


「主人格?」


と、また気になるワードが現れたが、兎に角俺はロックオンされた上に恨みの対象に認定されたらしい…


西に飛べばマヨネーズ王国

南に飛べばザムダの街

東か北に絞られたが、


まずは、少しでも離れなければ…


復讐に燃えたドラゴンは、何をするか判らない。


北東に向かい飛ぼうとした時、


ドルクがニャリと笑い、


〈西に人が群れを成して逃げているな、街か国が有るのだろう、


手始めに滅ぼしてやるか…


わざと離れようとする所を見ると、それが一番困るのであろう?〉


と話して飛び上がろうとする。


最悪だ!


エミルさんと、ザントさんが、


「駄目です!どうかお静まりくださいませ!!」


「ドルク様、私たちの恩人なのです。」


と説得してくれるが、


〈邪魔をするなぁぁぁぁ!〉


とブレスを吐く。


直撃したザントさんとワイバーン騎士がワイバーンごと砂になる。


〈狂ってやがる。〉


もう、迷っている暇はない、


俺は、サンにヤツの鼻先に先回りする様に指示して、魔導銃を握りドルクの右目を狙い〈ホーリーレイ〉を撃ち込んだ。


呪いの塊に聖属性の魔法は効くらしく、

一直線にのびた光線がドラゴンの瞳を貫く、


「ギャアァァァオォ!」


と叫び、片目を失ったドラゴンが純粋な怒りを俺に向ける。


〈クソ!!人間がぁぁぁぁ!!!〉


と俺に襲いかかろうとした瞬間に、


岩の雨が降り始めた。


〈陛下、一旦離脱を


ヤツが二度と飛べない様にしてやります!〉


とノーラ騎士団長の念話が入る。


〈仲間の仇だ!〉〈これ以上好きにさせるか!〉


などと念話が飛び交う、


岩の雨がカースドラゴンの翼膜を破き、鱗を引き剥がし、


強烈な打撃を加える…


残った左目で俺を睨み付けながら岩に埋もれていくカースドラゴンに、


止めとばかりにビックドリルが落下する。


しかし、サーチには赤いドラゴンの巨体がうごめくのが見え、


岩の隙間から黒いモヤが立ち込める。


〈許さない、許さない、許さない!〉


と壊れたオモチャの様に繰り返す声が聞こえ、


岩の山もビックドリルもサラサラと砂になる…


そして、

砂の中からボロボロのドラゴンがユラユラと立ち上がる、


飛ぶことも叶わず、足を引きずりながらも街を目指す怨念の塊は、


俺を見つけて〈滅びのブレス〉を放つ、


あまりの事に呆気に取られていた俺は、回避が遅れた…


〈もう駄目だ!〉


と思い目を閉じた瞬間に、


「結界!」


と叫ぶ声がした。


そーっと目を開けると、目の前に信じられない光景が有った。


「兄貴、お待たせっ!」


と、真っ白い羽毛を纏ったワイバーン程の大きさのドラゴン?に乗ったサラがいた。


「サラ…」


と俺は、一言呟くのがやっとだった。


「兄貴と並んで戦えるように、アタイ頑張ったんだよ…この子は〈ホーリードラゴン〉の〈ホーリー〉、


守りしか出来ないけど、守りなら任せて!」


とサラは語り、それからニコッと笑って、


「ただいま、兄貴っ」


という、


俺は、感情のジェットコースターに振り回されながら、


「お帰り、サラ…」


と答えたとたんに涙を流しているのに気がついた。


ハッとしたが、お陰で冷静になれた。


〈ドルクには悪いが、これ以上誰かを殺して欲しくない…〉


決心した俺は、ノーラ騎士団に、


〈再度メテオレインの準備を!〉


と指示を出して、


〈魔導砲台の準備をヤングさん達ドラグーン部隊に頼みます。〉


と言うと、


レクター司令官から


〈準備万端!照準さえ合わせれば撃てる状態です。〉


と答えてくれた。


〈では、ヤングさん、マーズさん、狩人の長距離武器の扱い方をあの黒いヤツに見せてやって下さい!〉


とお願いして、


俺は弟子三人に、


〈ヤツの左目をやるから援護たのむ。〉


「サラは俺のサポートをお願い!」


と伝えると、


弟子達は頷き空中に散開して遊撃を開始し、


ヤツの注意を反らす。


奴の死角からの魔導銃での攻撃をブルーとアースが繰り返す。


イラついたヤツがブレスを放とうとした瞬間に、


カースドラゴンの鼻の穴に攻撃が入り、


「ギャアオォォォ!!」


と痛がりブレスを止める、


振り向けば、黒い翼を広げて空中でライフルを構える〈後輩〉がいた。


「医務室の全員の避難完了だ、

俺も混ぜてくれよパイセン!」


と言っている、


「混ぜてやるが、死ぬなよ後輩!」


と告げて、カースドラゴンの残された視界を奪う為に行動を開始した。

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