第153話 情報は武器になると知る男

情報ギルドに到着し、


いつもの様に順場を待っている。


今回も別室に通されてて、


〈トーストさん〉情報ギルドマスター、

〈ヨミさん〉サブマスター

職員の〈ケイさん〉の三名に囲まれた。


トースさんが、


「今日は、ロッカ侯爵や魔法技術研究所の事を追加で聞きに来たのか?」


と聞くので、


俺は、


「まぁ、情報を聞くというか…

俺の知っている情報を教えたいというか…


もう、見てください。」


と言って、アイテムボックスから〈思い出モニター〉を取り出して、


インテルの街で仕入れた〈ダイト〉さんと〈マット〉と映像を映し、


「こちらの、アホがマットと言って、〈認識阻害の指輪〉を着けた〈松下 竜司〉を知る男性です。


彼から、〈第13研究所〉が絡んでいる事が判明しました。


インテルの街の冒険者ギルドマスター、〈ダイト〉さんが、探りを入れてくれるらしいので、詳しい事はそちらで。」


と伝えると、


クールな雰囲気の〈ヨミ〉さんが、


「ユウ様、すでにインテルの街にて、冒険者ギルドと協力して情報を集めております。」


と答えてくれた。


〈おっ、仕事が早いね。〉


チラリと見た〈トース〉さんは、〈どうよ!〉みたいな顔をしている。


俺は、〈では、こちらはどうだ!?〉とばかりに、


「では、つづきまして、」


と、港町ベールでの出来事をモニターに映し出して説明を続けた。


・貿易商人に、貿易品を5つ貰う約束で〈キラーマーリン〉を倒した事、


そして…


と話していると、


ケイさんが、


「ちょ、ちょっと、キラーマーリンと言ったら、ここ数年〈宮殿〉からの新鮮な素材の討伐・納入依頼がある〈S級〉依頼の魔物じゃないですか?」


と驚いている。


俺が、


「あぁ、それなら先程既に納入して来ましたよ。」


と答えると、


三人共に驚き、慌てだす。


トースさんが、


「ケイ!

お貴族様達に、〈今回の新年会メニューにキラーマーリンが出る〉と一報を入れてやれ。」


と指示をだす。


?なんで?


と思っていると、〈ヨミ〉さんが、


「見栄の為ですよ。

皇帝陛下は美味しい物を新年会に集めて、貴族に振る舞うのですが、その際に、


〈これは、なんだと思う?〉みたいな事を必ず聞くのです。


貴族としては答えて〈食通〉ぶりたいでしょ?」


と、教えてくれた。


へぇ~、こんな情報でも武器に成るんだねぇ


と感心していたが、続きが〈重要〉なのを思いだした。


「まだ、情報があるから続けていい?」


と俺がいうと、トースさんが、


「お、おう、続けてくれ、


余りのスクープだったのでバタついた。


すまない。」


と言っているが…



案の定、

・商業都市ゴルドによるロッカ侯爵との密貿易


・武器や呪物の生産と横流し


・リール家の占領と、家族を違法奴隷として他国に売ろうとしていた事


等を現場の様子を映しながら報告したら、


二人共に頭を抱えていた。


部屋に戻ったケイさんが二人の様子をみて、


「どうしたんです?」


と騒いでいるが、


二人の頭痛は暫く続き、


やっと整理がついた二人が、


「これは、皇帝陛下案件だな…」


「えぇ、面会の予約をとります。」


と話している。


そして、トースさんは、


「すまないが、ユウさんは保護したリール家の方々を匿ってくれないか?」


とお願いするが、


「元から、そのつもりです。


そうじゃ無ければ、騎士の二人の腕を治す為に〈エクストラポーション〉を買ったりしませんよ。」


と俺が答えると、


ケイさんが、


「エクストラポーションって庭付きの新築が建ちますよ?!


それを二本って…」


と驚いているので、


俺は、


「お陰で、ほぼ全財産吐き出しましたよぉ。


高いんだよねぇ〈エクストラポーション〉って…」


とため息をつく。


ケイさんは呆れながら、


「高いどころか、普通買えませんよ。」


というので、


「騎士が片腕では大変だろ?


まぁ、もうすぐウチの街が出来て、少しずつ人も増える予定だから、街の警備で返してもらうよ。」


と答えたが、三人共に呆れている様子。


〈なんでよ?〉



俺が、


「じゃあ、エクストラポーションの代金の補填に今回の情報料でもくれますか?」


とトースさんに拗ねて言ってみると、


トースさんは首を横に振りながら、


「すまないが、この情報に見合う金は用意出来そうにない。


皇帝陛下にお話して、ユウさんに何かしらの褒美をお願いする程度しか、ギルドとしては…


カッコ悪いが、それが精々だ。


本当に申し訳ない、


帝国のゴタゴタに巻き込んでしまって…金まで使わせた。」


と頭をさげた。


俺は、


「別にトースさんが、巻き込んだ訳でも、帝国が巻き込んだ訳でも無いからいいですよ。


ただ、悪いヤツを炙り出して、俺の仇討ちの相手を全員教えて欲しいだけですから。


そうですね、

今回の情報の対価の一部として、〈トース〉さんと〈ダイト〉さんが〈取り合った女性〉の話を聞きたいくらいかなぁ?」


とおどけてみたら、


いつもクールな〈ヨミさん〉が真っ赤な顔でキョドりだす。


…〈ヨミさんなんかぁ~い!〉


と心の中でツッコミをいれていると、


トースさんが真顔で、


「許してやってくれ、

妻が恥ずかしさで二~三日使い物に成らなくなる…大事な時期だから…


この通りだ。」


と頭を深々と下げた。


〈嫁だったんだ…なんか…ごめんなさい…〉


そんなつもりじゃなかったのに…


別にヨミさんを〈恥ずかし責め〉するつもりは無いんだよ。


だから、顔を隠してクネクネしてないでお仕事を…


俺は、この時、

情報は時に、凶器になると痛感した。



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