第149話 ご褒美と奴隷と男
さて、商人の貿易品から5つ貰える事になったので、
早速アイテムボックスから〈スーパー名札眼鏡〉を装着して、荷物が積んである船に向かうのだが…
やはり、この商人が早く帰りたい理由が船の中に見受けられた。
〈魔導銃〉や〈呪物〉、
スーパー名札眼鏡をかけてアイテム鑑定をおこなうと、
〈試作魔導銃〉
威力が安定せずに暴発の恐れあり
〈簡易スタンピードメーカー 卵タイプ〉
狂化の呪いと特定の方角に進みたくなる暗示をかける。
とでた。
証拠隠滅と小銭稼ぎかな?
俺は木箱の中身を次々に確かめて目に焼き付ける。
そして、
「商人さん…商人さんでは呼びにくいな、
商人さん名前は?」
と聞いてみる
「ポ、…ポティートと申します。」
と答えるが、眼鏡の効果で、頭の上に〈ポテト〉と出ている。
〈はい、嘘ぉ~…でも、偽名ならもうちょっと変えろよ…〉
と、思いつつも、俺は、
「へぇ、ポティートさん、こんな珍しい物をどこで、手に入れたの?」
と聞くと、
「高貴な、さるお方としか…」
と口ごもる、
〈どうせ、ロッカ侯爵とかいう粘着質な一族だろ。〉
「ポティートさん、私はてっきりロッカ侯爵様の贔屓にされている〈ポテト〉さんという商人の方かと思っておりましたが、人違いでしたか…」
と、カマをかけてみたら、
「なんです、旦那ぁ人が悪い。
ロッカ様のお知り合いですか。」
と警戒を緩める、
〈アホだ、やはりこの商人、アホだ!〉
俺は、
「えぇ、以前少しお世話になったので…」
〈主に、スタンピードをぶつけられた件でね。〉
商人は、
「では、旦那はこのブツの正体を…?」
と聞いてくるので、
「恩を仇で返したくないから見なかった事にするよ。」
というと、商人は
「ぐへっへっ、解ってらっしゃる。」
と完璧に信用した様子で、
ぺらぺらと情報を勝手に漏洩していく。
〈ポテト〉はセントラル王国の南に位置する〈商業国家 ゴルド〉の国お抱えの貿易商人で、
ゴルドは帝国との貿易を望むが、陸路では必ずセントラル王国を通る必要があり、高い通行料に悩まされていて、
〈いつかはセントラルを何とかしたい!〉
と思っていた時に、同じくセントラル王国を潰したい〈ロッカ侯爵〉と縁があり、
セントラルを攻める為の最新鋭の武器の横流しをするついでに、個人貿易で儲けようとしているらしい。
〈アホだ、洗いざらい自分から…〉
試作武器の処分担当とも知らずに…
と少し気の毒に思いながら、
「帝国内でも出回らない最新型の武器なので、羨ましいですが…仕方ないですね」
とわざと残念そうにすると、
「5つの対価の一つでいかがです?」
と商人が言ってくる、
「良いの?」
と俺が確認すると、
「実は数も未定で引き取ったので、1つくらい少なくても問題ないし、むしろ私の交易品を持って行かれるよりも有難い。」
と言うが、
俺も〈暴発の危険性あり〉は、いらない…
木箱に並んだ〈試作〉シリーズを〈スーパー名札眼鏡〉を通して〈アイテム鑑定〉をしていくと、
もう、何日も寝ていない科学者がヤケクソで作ったような〈宇宙光線銃〉みたいなオモチャ感が凄いハンドガンが箱の端っこに転がっていた。
しかし、見た目に反して〈魔導銃〉安定して魔法を圧縮し射出できる。
と鑑定結果がでた。
えっ、掘り出し物?
俺は、
「ポテトさん、これは?」
と聞くと、
「あぁ、没になった試作品をサービスで入れてくれたヤツだね。
資料にも〈その他〉と書いてある分の品ですが…
旦那、いいんですかい?
ドラゴンでも殺れそうな大型のもありますぜ。」
と不良品の試作品を指差す。
俺は、
「いいんだよ、記念品感覚だから
それに、ゴルドで待ってる方々も、〈
と適当な事を言っておいた。
「ぐっへっへ、旦那は気が利きますねぇ
この調子であと四つも、お手柔らかにお願いしますよぉ~。」
と商人は揉み手をするが、本気で〈簡易スタンピードメーカー〉はいらない、
違法取引品の証拠の確認は完了した。
あと四つ、チャッチャと決めて退散しよう。
船尾の暗い荷物室に入ると柱に繋がれた奴隷が十人ほど居る、
俺が
「この奴隷は?」
と聞くと、
商人が、
「ロッカ侯爵様に楯突いた奴の嫁と子供と、そのメイドの娘です。
ソコに倒れている片腕の騎士二人はコイツらを取り戻しに来て、ロッカ侯爵の騎士に返り討ちにされたヤツらです。
正直、闘技場に客前で魔物に喰われる餌として売るくらいしか使い道が無いけど、タダ同然で押し付けられたのでしかたなく…
あとは、〈魔導銃〉の試し撃ちにと貰った魔族のガキと世話役の娘です。」
と言っている。
〈胸くそ悪い!〉
しかし、解放するにも、あと四つの対象には数が多すぎる…
「ポテトさん、
魔族はまとめて〈的〉という1つの商品だよね。」
と俺が言ったら、
「旦那、それはご無体ですよぉ、
確かにタダでしたが、飯代金がかかって居ますので、ガキは一纏めで構いませんが、色々利用できる娘は個別でお願いします。」
とゲスい笑みをこぼす商人、
〈五人の魔族の子供と魔族の娘は何とかなったが、〉
残った、俺たちを睨む奴隷家族の上に
〈ド・リール〉という家名が付いている…
犯罪の匂いしかしない。
〈あと2つで全員は解放出来ないが…どうしよう。〉
「ポテトさんあと2つでソコの兄妹を貰ってしまったら、ポテトさんが大損してしまうね。」
と俺がいうと、商人は、
「あちゃー、それは参りました、私のヘソクリで買い付けた違法奴隷で、奴隷紋もケチって買ってきましたが、ほとんど兄妹の値段であとはオマケですからね。
正直大赤字です…」
と困り顔をする商人に、
俺は、
「それはお気の毒に、ではソコの妹の方をゴルドで売る値段で私が買いましょう、そのかわり他のオマケを一纏めにして、兄と合わせて2つでどうでしょうか?
ここまでの食費も奴隷全員分合わせてお支払しましょう。
それでどうです?」
と、提案すると商人は、下衆な笑顔で、
「それならば、奴隷丸ごと買い付ける前の金額でいかがでしょう?
幼女は高値に成りますが、売るのが困難で、正規で売るなら15迄育てるか、闇のオークションは危ない橋になるので、今から、幼女好きの顧客を探す手間が省けます。
大金貨十四枚でどうですか?」
と言ってくる…
〈ここからが勝負だな。〉
俺は、
「おいおい、いくら何でも何も出来ない幼女で、奴隷紋も無いヤツが、
大金貨十四枚は高過ぎる。
〈キラーマーリン〉の討伐のご褒美で妹以外は私が頂いたはず、その分の買い付け料までは、いくら何でも…
ゴルドまでの輸送費と食費も要らなくなるし
大金貨八枚が妥当だろう、
ソコに今までの輸送費と、食費、とポテトさんへの手数料と合わせて、
大金貨十枚でいかがです?」
と悪い笑みを見せながら大金貨十枚を〈ジャラリ〉と渡す俺、
すると、商人は、
「旦那ただ者じゃないね、実にいい線を突いてくる。
商談成立です。
私も大損しなかったのは旦那のお心使いのお陰ですよ。
こいつを元手に何か買い付けて本日中にゴルドに向かいます。」
とホクホク顔だが、
俺は、最低限の出費で、闇取引の情報と証拠と証人を手に入れた。
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