第147話 南に向かう男達

アダルティーな宿屋にリベンジに向かう弟子を見送った俺は、


複雑な気持ちを忘れる様に、努めて明るく振る舞い、


アドラとメレクにお土産の魔法系のスキルスクロールを渡す。


二人はとても喜んでくれて、久しぶりに従魔達を引き連れて、アドラとメレクの魔法の試し撃ちも兼ねて、ぞろぞろと〈狩り散歩に出掛けた。〉


街の工事現場を左手に眺めながら拠点北の山を目指すと、


山の中腹に大きなカマボコ型の出入口があり、ドラグーンが出入りしている。


アドラが、


「ご主人様が留守の間に、親方達が山を改造しまして、


何でも魔法で横向きの穴を空けて、石壁で補強した町一個入るくらいの広さらしいですよ。」


と説明してくれた。


魔石足りるかな?

あんな大工事したらランドセル何回空に成るかも解らない…


アダルティーな宿屋から三人が帰ってきたら帝国の南の山脈にいる〈山ネズミ〉を乱獲しに行かせるかな?


〈よし、そうしよう。〉



俺は更に南下して、そのまま山を越えたら海に出るらしいから、


塩水に〈ドライ〉をかけたら塩が取れるだろうし、


何より、海産物が手に入る。


もう、夢しかない!



数日経ち、親方達の作業員に一段落がつく、


ヤングさん達が集めた大量の魔石を使い、

9つ有るエリアのうち、右下の居住区画の壁が出来上がり、仮の移住村としての長屋が建ち並ぶ予定だ。


石壁生成用の魔石が少くなった事もあるが、


工房組から、


〈3ヶ月したらそちらに向けて出発する。〉


と言われているらしい。


〈ガラパゴス〉は街の出入口から〈ザムダの街方面〉に向けて森のつまみ食いを始めているし、


あとは、魔石の限り長屋を建てて、迎え入れの準備に移るらしい。



その日の夕方に、


南の空から奴らが帰って来た。


何でも、ブルーは前回笑った嬢に再度挑み、これを無事に撃破、


自信を取り戻したブルーは、連泊を希望し…


嬢をメロメロにして来たらしい…


〈楽しんでんなぁ!ちくせう!!〉


俺は、なぜかニコニコしている三人を呼び出して、


「えー皆様には明日から遠征に出て、南の山脈地帯にて、血と、暴力と、殺戮の日々を過ごして貰います。


移動に片道10日、現地で一週間、帰りに10日の予備日が3日、


延べ1ヶ月の予定の遠征で山ネズミを乱獲し、親方達に魔石の山を届け、従魔や作業員に新鮮な肉を仕入れるために、


馬車馬の様に働いて頂きます。


三人とも種馬の様に頑張ってこられた様ですので、山籠りもへっちゃらですよね。


では、明日の朝イチに出発しますので解散。」


と告げてたのだが、


その後、三人は食堂で親方達を、交えて


戦果を報告しているのを見かけた。


…親方の弟子達に内緒で小金貨三枚くらい渡してザムダの街に繰り出させてやろう。


酒場もアダルティーなお店も有るから…


働きっぱなしで、可哀想だし、


きっと後で三人を羨ましいと思うだろうから…


俺みたいに…



俺は部屋に戻って、テーブルにコップを、2つ並べ、山田商店で購入した〈酒〉をアイテムボックスから取り出して注ぎ、


片方のコップを手にとり、もう片方に〈コツリ〉と当てて、


「ブラックさん、貴方の息子は立派に成長して、卒業しました。


可能であれば奥さんの枕元に立って、息子の…の成長を報告してあげて下さい。」


と今は亡きブラックさんと酒を酌み交わしてから休んだ。


翌日、ブルーに、


「卒業おめでとう。」


と言ったら、


「卒業って何ですか?」


と聞き返していた。


親方達は解ったようだが、


流石は王国育ち、入学する学校が最近まで無かったから卒業文化も無いんだね…



アドラとメレクに後を頼み、サンに乗り、三人を引き連れて


南の山脈を目指して拠点を飛び立つ、


帝都から更に南、〈バンバ〉達と出会った草原の先の高い山を目指す。



〈ファイ〉に〈バーン〉それに〈サンダー〉も冒険で手に入れたお金でスキルを買ってもらい、スタミナもスピードもあるので少し飛ばし気味に目的地に向かうことができた。


別に従魔達も疲れてないし、冒険者チームも全員問題ない、


なんと、一週間で山脈にたどり着いた。


三人に、


「では、山ネズミの乱獲宜しく。


俺は、更に南下して港町の〈ベール〉に行ってきます。」


と告げると、


「旦那は観光ですかい?」


「旦那様は狩りはなさらないので?」


「師匠、僕何かしましたか?」


と、それぞれに言いたい事はあるみたいだが…


「質問は受付ていません


俺は…そ、そう情報収集に向かうのです。


では、サラバ!」


と俺は、サンに乗って飛び立った。


さぁ、働け、働け!


〈エンジョイした分キッチリ働いて頂きます。〉

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