第145話 色々と見つける男

ギルドの酒場で時間を潰すのだが、


この後にアホと話し合いが有るので酒を飲む訳にもいかない。


ミカンみたいな果物のジュースと、ミスティのオススメ料理のトウモロコシの粉を使った生地を平たく焼いた物に、肉に野菜をくるんだタコスの親戚みたいな〈ラップ〉という名物をかじって過ごす。


旨いが、予想通りの味だな…


と、浮かない顔で食べていると、ギルド酒場の女将さんが、


「アンタ、素人かい?


〈ラップ〉はこのインテルの街の特産マジカルソースをたっぷりつけて食うんだよ!」


と机の上に常備してある赤いソースを


「ミチャチャチャァ~」


と絞りだした。


〈最悪だ、真っ赤にされてしまった。〉


だが、ショックを受けたのは別の事だった…


当たり前に有って気にして無かったが、


〈プラスチックボトルがある?〉


と驚きながらソースが入った入れ物を眺めていると、女将さんが、


「冒険者だろうから、他所から来たなら知らないかもしれないねぇ、マジカルソースは…」


とマジカルソースの説明をはじめる。


俺は、


「女将さん、違ってこの入れ物!

一体どこで売ってるの?」


と聞くと、女将さんは、


「アンタ、どんだけ田舎の出身だい?


スライムボトルなんて何処にでも有るよ、


それこそ、すぐそこの雑誌屋にも置いてある。」


と教えてくれた。


〈スライム煮詰めてトリモチ作ったけどあれの応用かな?


王国では見ない技術だ。〉


俺は、


「女将さん、有り難う早速買ってくる。」


と言って手に持った〈マジカルソースたっぷりのラップ〉を頬張った。


…無茶苦茶辛い!そして、独特の香りが苦手だった…


〈マジカルソースは買って帰らない!〉


ジュースで流しこみ、半泣きで雑貨屋に向かい、


スライムボトルを購入した。


これで、コナーのソースとマヨネーズをお好み焼きとかにかけるのが楽に出来るし、ソースのブレンド毎に分けておける。


本日一番の買い物かもしれない。


大銀貨一枚で済んだ…


一番安い買い物が一番手応えがあった。



そろそろ、いい時間になったので冒険者ギルドの窓口にまわると、


担当してくれていた男性職員さんが、


「お待たせいたしました。」


とお金とギルドカードをカウンターに出してくれた。


「ユウ様、買い取り金額と、依頼達成報酬とあわせて大金貨53枚と、おめでとうございます〈B級〉に昇格です。」


と、報告してくれたのだが、


〈帝国はB級の通過儀礼はないのかな?〉


まぁ、昇格出来たら別に文句はないのだが…


やはり、王国が野蛮な国に思えてくる、人を殺せないと一人前になれない事と、殺されても仕方ない盗賊がゴロゴロしている事も…



それから、職員さんに案内されて、


別室に通されアホと対面すると、


アホは大人しく成っていた。


「兄さん、すまない。

酒が入っていたとはいえ、いきなり喧嘩を吹っ掛けて…」


と頭を下げている。


アホの横には厳ついオッサンが座りっており、


「この冒険者ギルドのギルドマスターの、〈ダイト〉だ、

この度は、このアホな弟分の〈マット〉が大変迷惑をかけて申し訳ない、


俺と同じ孤児院出身で、ソコソコ腕はたつ冒険者なのだが、嫌な事があると朝から酒に溺れ、問題を起こす…


〈マット〉もいい大人だから、孤児院の兄貴風を吹かせて注意するべきではないと思っていたが、


今日話してみて、返って逆効果だったと知った…」


と頭を下げるギルドマスターに


「兄貴が頭を下げる事じゃねぇ、

俺が、甘えてただけだから…


〈ダイト〉の兄貴が俺を無視してると思い込み、勝手に拗ねて、いじけていた。


そんな時に兄さんそっくりな〈リュウ〉さんに出会ったんです…


孤児院出身の俺の事を親身になってくれて叱ってくれました。


リュウさんと、一緒に依頼をこなしていたんだけど、


数ヶ月前に何も告げずにリュウさんは消えてしまい…それで、また拗ねちまって…


本当にスミマセンでした。」


と謝るマットに、


俺は、


「そんなに、〈リュウさん〉とやらに俺は似てるのかい?」


と聞くと、


マットは、


「顔は兄弟かと思うくらいに似てますが、雰囲気と言うか何と言うかが違う様な感じがします。」


と話す。


俺は、


「へぇー、

他に〈リュウさん〉の特徴は?」


と質問すると、マットは、


「えーっと、魔法技術研究所の第13研究所からの仕事を指名で受けていたのと、

研究所の試作の変な武器を使ってたくらいかなぁ?

あとは、秘密だから…」


と言った瞬間にギルドマスターからのゲンコツがはいる。


「良いから全部話せ。

俺も初めて聞いたが、聞けば聞くほどキナ臭い…


第13の試作武器の辺りが特に嫌な感じがする。」


とギルドマスターが怒鳴り、アホは頭を擦りながら、


「痛っっっ…

解ったよダイトの兄貴、


リュウさんは〈魔眼〉持ちだ。

相手のスキルをランダムで奪えるって一緒に飲んだ時話してくれたんだよ…」


と、


ビンゴだ、

特徴が一致しすぎる。



早速手がかりを見つけてしまったのだが…二人にバラすべきか…


どうしよう?

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