第144話 待ち時間に買い物を楽しむ男

アホの回復を待つ間に、窓口の男性職員さんが、


「本日はどういったご用件で?」


と、聞いて来たので、


「割りの良い依頼がないかなぁ?

と思って来たのと、


狩ってきた魔物の買い取りをお願いしにきました。」


と俺が答えると、


職員さんは、俺が手ぶらなのに気がつき、


「もしや、アイテムボックス持ちで?」


と聞くので、俺は、


「えぇ。」


とだけ答えた。


すると更に、


「もしかして、地竜の新鮮な血は無いでしょうか?」


と前のめりで聞いてくる。


少し職員さんの〈圧〉に引きながら、


「血抜きしていない地竜が丸々一体入ってますよ。」


と俺が答えると、


職員さんは、頭を深々と下げながら


「是非とも、お売り頂けないでしょうか?」


と頼んできたので、俺は快く了解した。


職員さんは。


「地竜の鮮血と素材の納入クエストは、錬金ギルドからの依頼でしたが、なかなか受けてくれる冒険者が居なくて…


一度冒険者パーティーが引き受けたのですが、傷を付けすぎて必要量の鮮血が、取れずに、ケチがついた依頼でして、


では、ギルドカードの提示と、あとは、解体場にて確認を行いますね。」


と言って、解体場に連絡をいれた。


ギルドカードを提出して、簡単な手続きをしたあとで、

職員さんの案内で解体場に移動すると、


既に解体場の職員さんが、


「気合い入れろ、鮮度を落とす前にバラすぞ!!」


「「おう!!」」


と気合いを入れている。


革製のエプロンにデカイ刃物やバケツを用意して待機する職員さんに見守られながら、


解体場の真ん中に〈デン〉っと地竜を出すと、解体職員が押し寄せて解体をはじめる。


窓口のギルド職員さんが、


「では、精算に半日ほど頂きますので何処かで時間を潰していただいて、精算が終了したのちに、あのアホの処分も含めてお時間を頂きたいと思います。」


というので、


「買い物でも行ってきます。」


と告げて俺は街に向かった。


コナーの街に有った看板の、


『マジックショップ パトラ』の本店が有るので、その店を目指す。


街の目抜き通りの一等地に大きな建物があり、『パトラ』と看板があがっていた。


一階は警備員が待機するなか、ダンジョン産のアイテムを扱うフロアだった。


〈百貨店の一階の高級ブランドの雰囲気だな…〉


と思いながら武器や防具、アイテムやオリジナルスキルスクロールまで販売していた。


〈確かに高級品ばかりだ、警備員が居るのも納得、〉


チラリと見たアイテムは、


〈看破の眼鏡〉

人物鑑定で相手の名前とスキル、

魔物鑑定で魔物の名前とスキル、

植物鑑定で植物の名前と生態や効能、

アイテム鑑定でアイテムの名前と効果が解る。


大金貨百二十枚と書いて有った。


〈ひぇ~、なんちゅう値段だよ!〉


と驚いた俺は、逃げるように二階のパトラ商会オリジナル魔道具売り場を目指す。


ダンジョン産のアイテムを手本にして、錬金術師達が作り上げた魔道具が並ぶ、


ポップに、『受付業務に最適! お客様の名前が解る。〈名札眼鏡〉上司の方、〈部下の名前確認〉にもどうぞ。』


と書いてある。


値札は、大金貨一枚…


下の階の値札を見たあとだから〈安い?〉と錯覚してしまいそうになる。


隣のポップは、『匠の自信作、ダンジョン産とほぼ同じ効果を再現、〈アイテム鑑定虫眼鏡〉武器や防具の買い取り業務にオススメ』


と書いて有った。


〈あぁ、ブルーにあげたアイテム鑑定眼鏡と同じヤツだな、小型化できたらダンジョン産と同じ物が量産できるのかぁ、この商会の錬金術師さんは頑張っているんだなぁ~〉


と感心していると、その隣には、


『匠の最高傑作、商売関係の方に是非!

右目でお客様の名前と、左目でアイテムや武器、防具の名前が解る、〈スーパー名札眼鏡〉、顔は思い出せるが名前が出て来ない時にもどうぞ。』


〈何だか凄く便利なのでは…?〉


と思えてくる、


値札を見ると、大金貨二枚…


サンで空を飛ぶ時のゴーグル代わりにもなるかもしれないから、買っちゃおうかな?


「うーん…?」


と唸っていると、女性店員さんが、


「お客様、一度お試しになってみますか?」


と声をかけてくれた。


俺は、店員さんの押しに弱い人間なので、


「は、はい。」


と答えて店員さんがケースから出した眼鏡をかけてみると、


「ぅわー!良くお似合いで。」


と、おだてる店員さんの上に〈アイリーン〉と書いてある。


俺が、


「アイリーンさんと書いてある。」


と呟くと、店員さんは、


「はい、アイリーン、花も恥じらう十八才です。」


と答えたが、


〈どう見ても二十代後半だよ、アイリーンさん…〉


俺が、「18…?」と呟くと、


アイリーンさんは、


「まさか、年齢も解るんでしたっけ?」


と〈スーパー名札眼鏡〉の説明書に目を通している。


そして、


「もう、やっぱり解らない商品じゃ無いですか!


お客さんの直感が鋭いだけでしたかぁ~、


アイリーン、びっくり。」


と答えたのだが…


〈多分、十人中十五人がアラサーと判断しますよ、アイリーン姉さん。〉


と思ったが、黙っておいた。



結局、〈スーパー名札眼鏡〉を買ってしまった…



眼鏡をしたまま三階の武器・防具売り場にあがる。


そこで、在ることを思い出した。


鑑定眼鏡越しに〈鑑定〉をかけたブルーが、〈鑑定結果が詳しく解る〉と言っていた。


〈俺も出来るかも〉


と、近くに有った鎧に、眼鏡を外して〈鑑定〉をかけると、


〈炎の鎧〉炎魔法耐性


と結果がでたので、そのままそっと眼鏡をかけると、


〈炎の鎧〉炎魔法を25%軽減


と結果がでた。


〈おっ、出来た!〉


と感動し、とても得した気分のままフロアを回る。


そして、


〈マジカルインナー〉魔法耐性 10%


という魔法防御にもってこいな鎧の下着があったので迷わずに購入した。


大金貨五枚だが十分価値はあるので満足だ。


しかし、ここは魔境だ。


思わず買い物をしてしまい財布が軽くなってしまう。


あとの時間は大人しく冒険者ギルドの酒場で時間を潰そう…

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