第143話 お決まりイベントに会う男
コナーの街で買い食いを楽しむが、どれもこれも旨い。
〈絶対に〈ソース〉を買って帰らなければ!〉
と思い、ソースを販売している商会を探しながら街をうろつく。
すると、
『ソースの事なら元祖 臼田商会』
と書いてある看板を見つける。
〈おっ、有った!〉
と店を見つけて〈臼田商会〉に向かい進み出すと、
「お客さん、ちょいまち!」
と虎縞のハッピを着た男性が、俺を呼び止めて、
「ソースを買うなら虎マークの〈本家 臼田商会〉だよ。〈バッタモン〉のやつは買ったらダメやで、お客さん。」
とセールスしてくるが…
〈何処にでも有るのね、〈本家・元祖〉問題は…〉
俺は〈自分の舌しか信じない〉ので、
虎のマークの本家のソースも、
牛のマークの元祖のソースも一通り買って帰る。
しかし、おなじ〈
南の端の海のある領地から食材を仕入れて風味を加えた〈アンカーじいさんのレシピを受け継ぐ元祖〉と
風味等はお客さんが自由に加えるものと〈野菜の旨味とスパイスの香りで勝負する初代社長のオリバーさんのレシピを引き継ぐ本家〉
〈イカリ印とオリバーさんのソース…〉
味見したけど、正直どちらも旨いよ、
もう、この街を作った〈臼田〉さんの末裔なんだから仲良くしなよ…。
と思いながら、彩りが鮮やかな街をあとにする。
そして、次に、ソースのついでに潜入するのは、
〈コナーの街〉から北西の方角にある魔術と科学の融合都市、〈魔法技術研究所〉の本拠地のある〈インテルの街〉に向かう。
サンに乗って3日の位置にある〈インテルの街〉には、
念のためにアイテムボックスから、〈魔族崩れ〉から手に入れた〈認識阻害の指輪〉を取り出して装着し、手袋で指輪も隠した。
もしかしたら、松下 竜司の本拠地でも有る可能性が高いので、用心はし過ぎる程度で丁度いい。
俺も馬鹿ではないので、怒りのままにヤツをシバきに来た訳ではない、
あれでも異世界召喚被害者の1人だから、異世界召喚の実験をしてるヤツを探す為の下準備の情報収集が目的だ。
〈火元を消さねば火事はおさまらない〉
とやって来たのだが、
とても怪しい技術を街をあげて取り組んでいる風ではなく、
ダンジョン産のアイテムや、
それらのアイテムを模した人工アイテムが並ぶ店が続き、
大きな書店には専門書が並び、
スキルショップにはレアなスキルも各種揃っている
〈学者が作った学者の街〉のようだった。
〈健全な街っぽいけど、魔族を使った人体実験とかしてるヤツがいるのかな?〉
などと思いつつ、冒険者ギルドから調査していく、
はじめて街に来たヤツが向かうべき場所だし、もしも研究者からの依頼が有れば情報を聞くチャンスだ。
しかし、ギルドに入るなり知らない冒険者に
「リュウさんお久しぶりッス」
と声をかけられた。
俺が不思議そうな顔をしていると、
チンピラ風の冒険者は、ジーっと顔を覗きこみ、
「んだよ!紛らわしい顔だな、別人じゃねーかよ!!」
と怒りだして、
俺の胸ぐらを掴んで、
「紛らわしい顔で、ごめんなさいって土下座しろや!」
と、すごんで来たから、
イラッとしてしまい、
アイアンクローでチンピラを持ち上げたままギルドの窓口に行き、
「帝都の方から来ましたが、こちらのギルドでは、因縁を吹っ掛けて土下座をさせる遊びが流行っているのですか?
顔が誰かに似ているから土下座しろと胸ぐらを掴まれ恫喝されました。」
と報告したら
受付の職員さんに、
「失礼ですが…まず、そのピクピクしているアホを降ろしてあげてくれますか?
あと少しで死んじゃいそうなので…」
と言われて〈ハッ〉っとしてチンピラを落としてしまった。
チンピラは糸の切れた操り人形の様に、立つことも叶わず、グニャリと力なく崩れる、
「おーい、アホがまた問題起こしたらしいから、治癒師のオッサン呼んで来てくれ。」
と声をかけてから俺に向き直り、
「申し訳ございませんでした。
あのアホが回復次第事情を聞き、ご納得がして頂けます様にしたいと存じますので、お時間を下さい。」
と、頭を下げられた。
お決まりの冒険者ギルドイベントにまきこまれたが、
あのチンピラの、「リュウさん」が気になる。
たぶんこの指輪の前の持ち主かもしれない、
この指輪は誰が着けても似たような〈モブ顔〉に見せる指輪みたいだな、
〈認識阻害〉なんてカッコいい名前をやめて、〈モブの指輪〉とかにしたら良いのに…
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