第135話 予定が狂う男
魔族兄弟が拠点に来て1ヶ月が経った。
アドラとメレクの兄弟も少し肉が付き、体力も戻った様だ、
魔族は体力が無いと奴隷商人が言っていたが、それは皆がみんな魔族に食事をキッチリ与えていなかったからでは無いかと思える。
二人はかなりの働き者だ。
そして、
拠点にも新しい仲間が増えた。
〈フライングゲッコー〉の〈みゆき〉の産んだ八匹の子供が卵から孵り、〈みゆき〉は餌やりや飛び方のレッスンで大忙しだった。
一度自分を売り込みに拠点に侵入して来た〈皇帝バッタ〉という牛乳パックサイズのバッタが、
「私をあなた様の配下に…」
と喋っている最中に〈みゆき〉に喰われた時は、少し心が傷んだが、
その他は虫魔物の気配が消えて大助かりだ。
あとは、拠点周りの警備員兼、魔石収集係として石壁の外側に追加で屋根付きの石壁と同じ高さの石壁で囲まれた体育館サイズの空間で〈ブラックタイガー〉の若夫婦が暮らしている。
旦那の〈フライ〉と奥さんの〈チャン〉は、この壁外の住み処の使用料的な感じで、日々の獲物から魔石のみを取り出して、住み処の一角に貯めてくれているのをたまに回収させて貰う形だが、
〈いまから数年は子作りと子育てに精を出すので、従魔として旅するのだけは許して欲しい…〉
と頼まれた拠点警備専門従魔夫婦なのだが、
資料にはブラックタイガーは、力のステータス補正がなかなか凄いことが書いて有ったので、それだけでも値打ちだ。
最後は拠点の中勤務の力仕事担当、
〈アーマードベアー〉の男の子、〈ベアえもん〉は森で調子こいて襲ってきたからボコして、泣かして、従魔にした。
今は腰の低い魔族兄弟のアシスタント的なポジションで、
解体場では獲物を運んだり、
畑では土を耕したり
と結構役に立っている。
そして、拠点の施設で新たに〈革工房〉が解体場横にできあがり、
アドラの解体した皮をメレクが鞣して加工する、
革細工道具も皮加工用の鞣し液などもザムダの街で買って来た。
そして、遂にサンの鞍が仕上がり、遠征は勿論、ゴンドラを改造してコンテナタイプにすれば従魔を乗せて遠方から連れ帰る事も可能になった。
四回ほどザムダの街に行って、素材の買い取りを頼んで、色々買い物をしたあとだが、帝国大金貨十枚前後の予算が出来たし、
冒険者ランクも〈C級〉に上がった。
〈街の入場料が免除になるし、一度帝都に行って、従魔召喚を購入するかな〉
と思いつき、早速出かけようとするが、留守中の食糧などの保管場所が無い!
慌ててアイテムボックスを調べると、戦争の時の非常食のおにぎりやホットドッグが50人前×三食分入った〈マジックバッグ大〉が入っていた。
〈戦争の時の兵糧かぁ~〉
…いくら何でも入るからって、一度整理しないとダメだな、
こんな便利な物を出し忘れるとは…
俺はマジックバッグを取り出して、
アドラとメレクに
「マジックバッグの中の食べ物は食べても良いけど、食べ過ぎたらダメだよ。
50人前入りだから25日は大丈夫な予定だけど、遅く成るかも知れないから、
マジックバッグの中はまだまだ余裕があるから食材も予備で入れて置くので、留守番よろしく、
帝都に買い出しに行ってきます。
ついでに牛魔物か馬魔物を帝都の近くで従魔にするかもしれないから、
遅くなったらゴメンね。」
と断って〈サン〉に騎乗し、
魔族兄弟と狼親子と熊に見送られて、南東の帝都を目指し飛び立った。
ドラグーンは三日三晩飛び続けられるが、俺が三日三晩は無理なので、夜はマジックハウスを出して眠った。
しかし、ドラグーンのスピードたるや馬車で一ヶ月掛かりそうな距離を一週間余りで飛びきった。
三日三晩トップスピードで飛べば、もしかしたら休み無しで帝都に来れたかもしれないが、トイレ休憩や、日中でも高度が高くて凍えるほど寒いので、アイテムボックスから水袋を出して〈サーモ〉で熱めのお湯にして湯タンポにしながら凌いでいたが、夜間飛行は確実に凍死案件だ。
一週間でも凄い得した気分だから十分満足している。
帝都の近の山で一旦降りて、街道まで山を下り街道をトボトボ歩く、帝都までは2時間くらい掛かりそうだ。
日々の散歩が過酷な為に数時間歩くのは別にいいが…
「兄さん、金目の物を全部置いていきな!」
と、面倒臭い〈野生の盗賊〉が現れた。
魔法で殺しても良いが、街も近いし引きずって行けば犯罪奴隷として第二の人生を頑張るだろう。
使えるモノは出来るだけリサイクルした方がいい。
ドラグーン四体と
森狼二頭、
フライングゲッコーの親子九匹に
ブラックタイガー二頭と
アーマードベアー
それに今は会えなくなった〈プラ〉と〈クロイ〉そして、息子のペガサス〈グレイ〉
のステータス補正が有る俺を、三人程度の野生の盗賊では、モンスターボールを投げるまでもなく
高速移動をして三人の武器を叩き落としてアイテムボックスに回収して、丸腰にしてからデコピンで沈めるようとする、
しかし、かなりソフトタッチにしたのだが、相手はすっ飛び、頭から血を流して気を失っていた。
それを見た残りの二人が全面降伏して、戦闘は終了したのだが、
腰縄をうって三人を引きずって街に向かうが、気絶した一人を二人が交代で背負って進む為に時間ばかり食ってしまい、
酷く予定が狂ってしまった。
門兵さんに盗賊を引き渡すと、〈捕縛証明〉なる書類を渡された。
冒険者ギルドで賞金が掛かっていた場合この書類と引き換えで後日、賞金が貰えるらしいが後日っていつ?
門兵さんに聞けば、
「余罪確認に一月ぐらいかかるし、気長に待ちなよ。」
と言われた。
〈待てるか!〉
帝都に来るのにも一苦労なのに…
門兵さんは、
「まぁ、若い兄さんに捕まる盗賊だから賞金は無いかもしれないけど、
この三人を奴隷商人に売った金額は確実に貰えるから、
一杯飲んで食って、ちょっと良い宿で休めるぐらいにはなるから楽しみにしてな。」
と兵士の詰所から送り出された。
全く楽しみではないが、一応覚えておこう…
べ、別に〈帝都で買い食い出来るなぁ〉とか考えて、
……ます。
めっちゃ楽しみです。
〈だって、帝都は懐かしい味がいっぱい有るからっ!〉
しかし、今回は無駄遣いはノンノンです。
〈エドりん〉のスキルショップで幾つかのスキルと、〈エドりん〉の意中の彼、テイマーギルドのサーカス団の団長風のギルドマスターの所で〈従魔召喚〉を買うのが目的だから。
急いでテイマーギルドに向かい、
〈従魔召喚〉を購入するが、王国と帝都ではスキルの値段がかなり違う。
必要性や希少性などの違いかもしれないが、帝都では〈従魔召喚〉はマイナースキル扱いだった。
帝国には〈召喚術士〉という異界の強力な魔物や悪魔などを呼び出して契約して使役する、
テイマーの完全上位互換の激レア術士が数名いるので、〈召喚〉と言えばあちらさん、
〈従魔召喚〉?!プププっ
みたいな扱いらしい…
お陰で小金貨五枚とお安く手に入った。
スッゴク嬉しいけど、なんか元気のない俺を気遣って、テイマーギルドマスターが、
「キャサリンのお店で良いスキルを探しましょう。」
と、俺の手を引いてスキルショップに向かったが、
それは〈エドりん〉に会いたい為の口実でしょ?
案の定、スキルショップに来たら二人がイチャイチャしだしたので、さっさとスキルを買って帰ろうとしたのだが、
店員さんの接客がまた悪くなっていた。
〈聞きたくないけど、聞かなきゃ先に進まないんだろうなぁ〉
と思い、
「元気ないですね、どうかしましたか?」
と質問すると、
店員の〈おネェさんは〉
「聞いてよ、もー!
彼が出来てラブラブだったの、でもソイツ、奥さんと子供がいたのよぉぉぉ!!
どう思うぅぅぅぅぅ?」
と…〈正直どうも思いません…〉
むしろ、〈奥さんと子供〉に同情します。
俺がひきつりながら、
「大変でしたね。」
と声をかけると、
「そうなのよぅ!…」
と、凄くいっぱい喋られて、俺自身が大変な目に合った…
予定が狂いまくっている…
早く買い物を済ませて従魔スカウトに行きたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます