第136話 虐めてた亀を懲らしめる男
従魔召喚も買えたし、
思ったスキルスクロールも〈エドりん〉のお店で買えた。
あとは従魔スカウトに向かうのだが、今回はステータス補正狙いで従魔をスカウトしようと思う、
松下竜司をシバくにしても、魔導銃の火力は怖い…
防御力をもりもりにしてから再戦に挑みたいので、
まずはミルクも手に入る牛魔物の中で防御力のステータス補正の多い、〈ブラックカウ〉や上位種〈キングブラックオックス〉を狙いたい。
ミルキーカウのように群れに子牛がいるとメス牛全員がミルクを出すのではなくて、産後の牛しかミルクを出さないが、
拠点メンバー分有れば問題なしである、
少なくともママ牛はスカウトしたい。
〈サン〉に乗って帝都から三日ほど、南東に飛ぶと、白い花が咲き乱れる大草原に到着した。
デカイ亀にデカイ馬、目当ての黒い牛もいる。
一見のどかな草原だが、絶賛血生臭い戦いが行われていた。
デカイ亀は地竜の一種で〈トータスドラゴン〉防御力の化け物で大食漢の肉食魔物が、
馬や牛の魔物を踊り食いの真っ最中だ。
「〈サン〉亀の真上取れるか?」
と俺が聞くと、
〈勿論!〉
と言って高度をあげていく。
アイテムボックスから魔石が満タンの〈魔石ランドセル〉を背負ってから、
グングン上昇する〈サン〉に俺は、
「いくぞ!」
と合図を出すとドラグーンの〈サン〉は空中でピタリと止まり、
次の瞬間真っ逆さまに〈亀〉を目指して落下を始める。
亀に〈ターゲット〉をロックして、ランドセルが空になる勢いの〈集中・ストーンフォール〉を放つと、ウィンドドラグーンと並走するように巨石の重量の岩が弾丸となり加速しながら落下を開始した。
そして、〈サン〉は俺と息を合わせて、落下を始めた岩に渾身の〈ウィンドブレス〉を当てながら急降下を続ける。
ブレスの後押しで加速を続ける岩は、さながら隕石の様だった。
「〈いっけぇぇぇぇぇ!〉」
と叫ぶ、俺と〈サン〉の心が重なった時、
〈一筋の光〉が〈トータスドラゴン〉の甲羅に突き刺さる。
奴の甲羅にヒビが入る…
しかし、甲羅に亀裂が入っただけで、亀を倒すまでは至らなかった…
「ひぇーあれで無理なら打つ手なしか?」
呆れと諦めが半々でトータスドラゴンを見ると、
〈うわぁぁぁぁん、痛いよぉ、風がシミるよぉぉぉ!!〉
と戦意ゼロで泣いている。
生まれて初めての〈痛み〉で心がポッキリいったみたいだ…
俺は〈サン〉に乗ったまま〈トータスドラゴン〉に、
「目の前にいる牛や馬を見逃してくれるのなら、甲羅を直してやるけど、どうする?」
と聞くと、トータスドラゴンは、
「頼みます。
ドラグーンさんの羽ばたきすらズキズキとシミるんです…
助けて下さい。」
と、防御力自慢のはずのメンタル弱々亀がすがるように助けを求める。
俺は
「はい、では双方戦わないこと!いいですね。」
と言った後で、亀の甲羅に〈接着〉をかけていく。
〈接着〉は同じ素材をくっ付けるスキルなので、ヒビの入った甲羅の亀裂が消えていく、
念のために〈マジックポーション〉を飲みながら〈接着〉続けて、亀の甲羅の修復が終了した。
トータスドラゴンはホッとした様子で、
〈ありがとうございました。
死ぬかと思いました…見逃して頂いたばかりか、治療までして頂き、なんと御礼を申したらよいか…〉
と話すトータスドラゴンに
「ブラックカウを従魔にスカウトに来たのに、絶滅させる勢いで食べられてたから、手荒な事をした。
別に、ブラックカウ達を見逃してくれたら、お前をどうこうするつもりはない。」
と俺が答えると、ブラックカウの群れが近づいて来て、
一匹のメスの〈ブラックカウ〉が、
〈私達の群れを助けて頂き、誠にありがとうございます。
食べられてしまった夫に代わり御礼を申し上げます。〉
と頭をさげた。
俺は、
「旦那さん食べられたの?
もっと早く来れたら良かっのにゴメンね。」
と話すと、
「いいえ、食べたり食べられたりは仕方がない事ですが、群れの半数が生き残ったので、夫は大きな仕事を成したのだと誇りに…思って…おります…。」
と涙を堪えるメスのブラックカウに、
「ウチの牧場で暮らしてくれる仲間を探して要るんだけど、誰か来てくれる?」
と俺が聞くと、
ゾロゾロと集まる〈ブラックカウ〉達、
何やら相談した後に、
リーダーの奥さんが、
「残った私を含めた三家族の母三頭に群の子供達十三頭の合わせて十六頭すべて、ご主人様の従魔に成らせて頂きたく思います。」
と答えた。
以前ならリーダーや上位種を従魔にして、その個体の〈統率力〉で群れをマヨネーズの街で飼育していたが、今回は十六頭全てを従魔にするので、
「では、名付けをしようか?」
と言うと、トータスドラゴンが申し訳なさそうに、
「あのう、私も従魔にして頂けますか?」
と聞いてきた。
俺が、
「えー、いっぱい食べる子は養えないよぉ~。」
と答えると、亀は、
「30年に一度です。
食事で手当たり次第食べるのは、30年に一度の事です。
今回は腹八分目なので20年ぐらい食べなくてもいける自信が有ります。
是非、私も従魔にしてください。」
と食い下がる。
どうしようかな?
と考えていたら、デカい馬は走り去ってしまった。
まぁ、馬は次回でも良いかな…
よし、亀も従魔にしよう。
そう決めて名付けを始めたが、
牛だけでも十六頭…
ネーミングセンスが無い俺にやれるのか?
悩みに悩んで、
母牛三頭に〈エーミ〉〈ビーミ〉〈シーミ〉
と付けて、
エーミの子供三頭に〈エータ〉〈エージ〉〈エミコ〉
ビーミの子供二頭に〈ビータ〉〈ビフコ〉
シーミの子供三頭に〈シイコ〉〈シフコ〉〈シサブロウ〉
両親とも食べられてた兄弟牛
〈デイコ〉〈デフコ〉〈デサブロウ〉
〈エフイコ〉〈エフジ〉
…オスは親のアルファベットとタ、ジ、サブロウ
メスは親のアルファベットと、イコ、フコ、ミコ
と規則的な名前にした。
疲れた、名付けはしんどい…
トータスドラゴンは〈ガラパゴス〉に直感で決めた。
流石に〈サン〉に運んで貰うには、多すぎるし、デカ過ぎる。
ガラパゴスに関しては、拠点より現地勤務の方が動き易そうだ。
「ブラックカウの皆さんは、後日召喚するので待機していて下さい。」
と指示して、
〈ガラパゴス〉には、
「皆を召喚するまで食べちゃった責任だから、もしもの時は〈エーコ〉達を守る様に!」
と命じて一旦拠点に帰ろうとすると、
デカい馬が再び現れて、
〈娘も一緒に従魔にして頂けますでしょうか?〉
と娘の馬を連れて帰ってきた。
「えっ?」
と俺が驚いていると、
〈正直、仲間は全滅して、親子二人で生きていくのは辛いのです。
どうか、我々親子を哀れと思って下さるのなら、どうか…どうか…!〉
と頭を下げる
〈魔物鑑定〉をすると
〈バトルホース〉
〈頑強〉〈脚力〉〈精神力〉
と、結果が出た。
軍馬の最高峰〈バトルホース〉かぁ、
馬車を引かすには、スタミナやスピードが足りなさそうだが、戦場なら敵を恐れずに突っ込んでいく勇敢な馬だ…
よし、二人とも採用!
〈サン〉に
「あの馬の親子コンテナに入れたら掴んで飛べる?」
と聞いたら、少し考えた後に、
〈休憩を頂ければ…多分…〉
と自信無さげに答えた。
頑張ってね〈サン〉。
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