第134話 ひとっ風呂浴びる男達

魔族は魔力が強いらしいので、

門番ゴーレム君をアドラに預けておき、


メレクには畑作業をお願いして、


俺とリオとレイは散歩がてら狩りに向かう。


サンには拠点周りの警備と、手頃な魔物が出た場合の駆除を依頼した。


魔の森には、


木から木へ飛び移る一メートル程のヤモリ〈フライングゲッコー〉や、


どこの森にも大概いる、ジャンプ力自慢の〈跳ね鹿〉、毛皮は敷物等にもなる一般的な獲物に、


タックル・スタンプ・プレスのボアシリーズも沢山いる。


しかし、彼らはあくまでも餌扱い、この森にはソレらを補食する。


首周りや背中に鎧状の分厚くて丈夫な皮を持つ〈アーマードベアー〉に、


象並みの大きさの黒い虎、〈ブラックタイガー〉というエビみたいな名前の補食者も現れる。


調査もほとんどされていないので、狩りに出る度に色々な発見がある。


サーチスキルの〈索敵〉で姿を探し狩りをしていく、赤いシルエットを狙って弓矢で雑魚は倒して、大物は魔法に切り替えてリオとレイと協力して倒す。


しかし、今回からは本格的に〈従魔〉のスカウトも開始していく、


現在、拠点での一番の悩みは〈虫魔物〉と、それを狙う〈フライングゲッコー〉が拠点内部に入ってくる事だ、奴らは壁でも平気で歩き回れる。


魔族兄弟だけでお留守番を任せるのは、少し心配なので、


〈フライングゲッコー〉の一家を仲間にして、虫魔物の補食と拠点を縄張りとして、


他のフライングゲッコーの侵入を阻止してもらうことだ。


それと拠点のガードマン的な大型の従魔も同時に探す。



リオ達と森をうろつくが、

簡単と思っていた〈フライングゲッコー〉のスカウトに手こずっている。


まず、彼らが素早く、基本的に木の上にいる事と、

あまり賢く無くて会話が困難なので魔物魅了の効果を使うまでもいかずに逃げられる。


上位種ならば虫魔物でも会話はできるが、〈フライングゲッコー〉の上位種にはまだ出会えていない。


数十匹追いかけまわしてようやくお腹の大きなメスの〈フライングゲッコー〉に出会えた。


彼女は卵の重さから軽快には動けずに、岩の隙間に隠れていた所を〈レイ〉に見つかり、交渉のテーブルについてくれた。


「安全な住み処を提供しますので、虫魔物を食べて家を守って下さい。」


とお願いすると、〈フライングゲッコー〉は、


〈卵安全なら、虫片付ける〉


と、返ってきたので。


「頑丈な住み処を石壁に作るから

お願いします。」


と約束すると、


〈名前〉


と言ってきたので、了解してくれた様だ。


俺は〈フライングゲッコー〉のメスに〈みゆき〉と名前をつけた。


ヤモリの〈みゆき〉だ。


すると〈みゆき〉が、


〈鳥魔物も壊せない頑丈な巣を頼みます。〉


と急に流暢に喋りだした。


もしかしたら従魔契約を結ぶと、魔物は少し賢くなるのかもしれない…


などと感心していたら、リオが、


〈ご主人、一旦家に帰るのならば荷車をお願いします。〉


と言ってきた。


俺はアイテムボックスからペータさん特製の狼用の荷車を出して、リオに装着すると、〈みゆき〉が荷車にノソノソと乗り込み、拠点へと戻る。


門の所にもどり、大声で、


「あーけーてっ」っと叫ぶと、


ゴーレム君が門のを持ち上げて、中に入れてくれる。


そして、その後のゴーレム君の管理はアドラがやってくれるので楽になった。


アドラとメレクに〈みゆき〉を紹介して、二人に今回の狩りの成果を渡して解体を頼み、


俺は〈みゆきハウス〉を制作していく、


アイテムボックスから石レンガとウッドブロックを取り出して、石壁の内面に石ブロックに〈接着〉を使って台座をつくり、ウッドブロックでぬくもりのある巣箱と呼ぶにはデカ過ぎる、


小型物置サイズの小屋を作った。


みゆきは壁をペタペタと這い上がり、石壁と小屋の隙間作った出入り口からスルリと中に入った。


そして、再び隙間から顔を出すと、


〈サイコー〉


とだけ告げて、また小屋に入ってしまった。


〈うん、気に入ってくれた様だ。〉



一仕事終えて、解体場に向う、


魔族兄弟は血まみれで解体を頑張ってくれているので、解体場近くに作った風呂小屋でお風呂の準備をする。


小屋の中に設置した手押しポンプ付きの井戸で水を浴槽と浴槽横の釜に汲んでおく、


普通は浴槽横の釜で沸かしたお湯を手桶で浴槽に移して水で調節するのだが、


俺には〈サーモ〉の魔法があるので、浴槽の水を直接、〈丁度の湯加減〉に変えられるが、魔族兄弟は釜を使わないと風呂が沸かせないので、練習も兼ねて釜で湯もわかしている。


準備が完了した頃には二人の解体作業も済んでいたので、


「二人共、順番にお風呂に入って。」


というと、アドラが


「えっ、ご主人様あの小屋、風呂なんですか?」


と驚いている。


メレクは、


「兄さんから入ってよ。」


とアドラに一番風呂を薦める。


しかし、アドラは、


「メレクは畑仕事で疲れてるから先に入れよ。」


と…「兄さんが…」「いやいや、メレクが…」


などと譲り合い話が進まないので、


「もう二人で入ったら?俺も後から入るから早く済んで丁度良い。」


と俺が提案すると、


「「では、ご主人様から!」」


と声を合わせて言ってくる。




…で、なんやかんやありまして、


今、風呂の使い方の説明も兼ねて、

三人横並びで風呂に入っている。


…少しキツイ…スペース的にも、精神的にも…


そして、


「ご主人様お背中を流させて頂きます。」


とメレクが洗い場でゴシゴシと背中を洗ってくれる、


実に気持ちが良い、


手持ち無沙汰のアドラが、


「では、俺はご主人様の前を…」


と、恐ろしい提案をしてきた。


恐怖を感じた俺の心を感じ取った〈奴隷紋〉がアドラに軽い罰を与える。


「あっ、えっ、痛っつぅ、何か出そう…」


と、騒ぐアドラ、


最悪な場面で最悪な事が起こりそうになる。


俺は必死で心を落ち着けると、アドラの腹痛も治まった様だった。


〈ギリギリセーフ!〉


騒ぐ兄を見たメレクはため息をついて、


「兄さんがご主人様の背中を流して、僕が兄さんの背中を流すから…」


と提案してくれて、


結局、三人一連になって洗いっこをする事になった。


あぁ、風呂小屋を従魔も洗える様に広めに作って良かった。


三人で入ってもギチギチに成らなくてすんだから…


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