第130話 男の嘘など三秒で見抜く人々

マヨネーズの街の人々の回です。



ー放牧場にてー



〈えっ、ご主人様が死んだ事にするの?〉


と驚くクロイに


〈内緒でお願いします。

ご主人様を庇って死んだサブローさんとミーちゃんの仇討ちらしいので。〉


と説明するママン。


少し考えながらその場で一周回り、


「ぶるるるぅ」っとため息を吐くクロイは、


〈多分、内緒には出来ないよ。〉


と言い切る


〈えっ?〉


っと驚くママンに向かい、顎をクイッっとして放牧場の柵の外を指す。


婚約者三名を筆頭に十名程がこちらをみている。


〈ご主人様が死んだと聞かされても、だれも取り乱していないでしょ〉


とクロイが説明する。


ママンは〈確かに〉と納得したのだが、何故こうなったかは解らない様子、


クロイは、


〈魔物鑑定でアタイらが誰の従魔か確認してるのよたぶん…〉


と言って草を食べ始めた。



ー放牧場の柵外ー



「サラさんどうです!?」


とうるさい外野に見守られながら〈魔物鑑定〉をかけるサラ、


「やっぱり、〈クロイ〉にも〈ママン〉にも〈ユウ・ツチヤ〉の従魔と有ります。

家名を捨てただけで、兄貴は生きてるよ。」


と呆れている。


集まった全員が、〈ホッとしたり〉〈呆れてたり〉〈頭を抱えたり〉と、まちまちだが、


ライザさんが、


「多分王国貴族と掛け持ちでは戦えない…もしくは大規模な組織で私たちを巻き込まないため…ってところかしら?」


と分析する。


トーマスさんはソレを聞いて、〈ゴードン〉と〈ヘンリエッタ〉に何かの指示を出す。



困り果てたのは〈ベン〉であった。贈与された特許などの書類を作り直さなくてはいけない上に、主を失った街の手続きなども取り掛からなければ成らなくなったからである。


アイシャは純粋に生きている事を喜び泣いているが、


サラは、


「兄貴は、死んだ事にしてもらわないとヤりたいように出来ないみたいだから、


アタイ達は、兄貴が死んだ様には振る舞わないと駄目だよ。


でも、〈貴族家〉としてではなくて、ただの〈家族〉として、強くなる必要がある。


今回、兄貴について行ける強さと信頼が無かったのが駄目だったんだ。


アタイは強くなる!」


と決意するのを見て、アイシャも


「私も、ユウさんの為に出来る事をさがす。

周りの人に頼ってユウさんの隣に座らせて貰うのはもうイヤ。


ユウさんが頼って隣に来てくれる様になる!」


と、涙を拭く。


ライザさんは、


「私はこの街の事を片付けてからになるので出遅れますが、


ご主人様の居るところが、王国だろうと他国だろうと、未開の大地であっても、


ご主人様の家でも、街でも、国でも管理出来る知恵と人脈を手に入れて見せます。」


と宣言をする。




一方その頃、


戦争を終わらせ、隊列を組みマヨネーズの街を目指しているワイバーン騎士団は、


「ノーラ団長、ご領主様って、羽の生えたヤツ普通に撃退してましたよね。


どのタイミングで死ぬんでしょう?」


と団員が質問する。


ノーラは、


「私に聞くな…

しかし、ご主人様は今回の進軍で自由に動けずに、歯がゆく思っておられたみたいだから、


逃げた羽根付きを追いかけるのに、〈子爵〉が邪魔だったのかもしれない…


憶測だがな。」


と答える。


他のワイバーン騎士団員が、


「ノーラ騎士団長は、どうされます?」


と聞くと、


「私は、爵位に忠誠を捧げたのではない、ご主人様に全てを捧げる為にここに居る。


居場所を突き止め次第に、騎士でも、冒険者でも、なんならメイドでも文句はない、

ただ、お側にお仕えするのみだ。」


とノーラは淀みなく答える。


ワイバーン騎士団員が


「俺も、サトラ国王陛下から、ご領主様に〈プレゼント〉された立場だから、ノーラ団長と一緒にメイドになります。」


と答えると皆クスクス笑い出す。


ノーラが、


「こら、仮にも主君を失った騎士団…

笑ってたら怪しまれるでしょ。」


と小声で叱った。





そして1ヶ月後、


マヨネーズの街では盛大な葬儀が行われていた。


泣いているのは後から合流した新規の市民と、

次の領主が決まるまでの仮領主のガイルス様が、


「子爵よ、そなたが頑張ったのは知っておる、なのに泣いて見送る者が、なぜ少ないのだ?」


と…何も聞かされていないオッサンが泣いているぐらいで、その他の者は新たな決意を胸に未来に進もうとしていた。


あの少し抜けているガルド男爵でさえ…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る