第129話 ツチヤ、貴族辞めるってよ。
2体の仲間を失い、
哀しみと同時に怒りに震える俺…
あの魔族野郎に一瞬、〈無理やり連れてこられて…〉と、同情しそうに成った自分を殴りたい。
しかし、まだ後方では戦闘が続いている様子
深く深呼吸を一度して、ミーの亡骸に〈ありがとね〉とばかりに、トントンと軽く触れ、ヤツの立っていた場所に向かう、
何かヤツの手がかりを探す為だ。
リオが噛み千切った左手からはふたが空き半分こぼれたポーションと指輪が2つ手に入った。
アイテム鑑定スキルが無いので、コレが何かは全く解らない。
レイが噛み千切った右足からは特に何も出てこなかった。
しかし、その近くにはグシャグシャに成ってはいるが、ギリギリ対戦車ライフルのような厳つい〈兵器〉が転がっていた。
近づき手に取るが、ゲーム等で見たことがあるライフルと明らかにちがう〈何か〉であった。
弾丸を込める場所も薬莢を吐き出す場所も無い…
ただ〈魔石ランドセル〉にもある、〈帝国魔法技術研究所〉の製品に付いているロゴが刻印してある。
〈ガワだけ近代兵器に似せた魔導兵器みたいなものか?〉
アイテム鑑定の無い俺にはソレ以上は解らないが、
〈魔力で威力が出るのなら魔力次第でライフルよりおっかない代物だ。〉
とりあえず、魔法技術研究所が凄くてヤバい組織だとは理解した。
壊れたライフルもアイテムボックスにしまい、
そして、軽く辺りを見回すが、右手は見当たらなかった。
砕け散ったのかも知れない…
回収が終わり解ったのは、
松下竜司は帝国側の誰かに、何らかのかたちで魂のみで召喚されて魔族に定着させられたらしい…
なので、帝国には不完全とはいえ異世界召喚技術が有る。
そして、この世界に魔族がいる。
アイツの言ってた〈ジジィ〉も気になるが…
あとは、魔法技術研究所は武器製造も行い量産も出来ているっぽい。
結論としては、王国では勝てない程の戦力を保持している可能性と、
王国の枠組みの中では仇討ちも難しい現実が理解出来た。
格上相手に王国が探りを入れたらバレた時に戦争の口実にされる…
しかも、貴族のままなら社交や軍規で身動きが取れない…
カレー州は正直、俺が居なくても大丈夫なぐらい人材に恵まれているし、
王国の慣わしで、出陣前に遺書も書いたから、特許などはベンさんが引き継ぐ、
残った家畜系の従魔は街に残る者に渡してある。
貴族社会に未練は微塵もない。
婚約者は…〈絶対今すぐ結婚したい!〉と云うわけでは無いのが本音だ…
〈仇討ちの後でも良いよね…〉
よし、ドラグーン子爵にはここで戦死してもらおう。
俺は元より〈冒険者〉だから、
貴族をやめて、帝国に潜りこみ、
力を付けてアイツを倒す!
でも、今回気を回し過ぎて、ゴッソリ従魔を外して街に残したけど、ミスったかな?
〈シズカ〉や〈コッコ〉達のプラス補正ステータスが有れば二人を死なさずに済んだ道も有ったかもしれない…
落ち込む俺にリオとレイが寄り添ってくれた。
遠くでドラゴンの断末魔の叫びと、空中を飛び回るワイバーン騎士団が見える。
おっ、無事に終わったか?
すぐに隊列を整えるワイバーン騎士団、
ノーラ騎士団長達は、防衛ラインの方に加勢に行くようだ。
こちらには、パパン一家が飛んでくる。
〈ご主人様、ご無事ですか?〉
と心配しながら三体のウィンドドラグーンが目の前に降りたった。
パパン達に、
「仲間が殺され、仇が出来たので、
この国から去る事にした。
召喚スキルが奪われたから高原に送り返してやれない…すまん」
と話した。
パパンは、
〈巣には自力で帰れますのでご心配なく
来る途中にワイバーンの亡骸を見ましたが…〉
と聞く
「あぁ、サブローとミーは俺の代わりに攻撃を受けてくれた。
俺はこのまま敵を追う
何年掛かるか解らない、俺は死んだ事にするから、王国にはもう戻らないかも知れない…
悪いがパパン、殺された二人をマヨネーズの街の側に埋葬してくれないか?」
と俺が頼むと、頷くパパン。
〈では、息子をお供に連れて下さい
一旦本体と合流した後に巣立ちをさせ、ご主人様の後を追わせます。〉
と、ママンが答えた。
「解ったありがとう二人共、頼んだよサン。
ではママンには悪いんだけど、
この魔族の手足を騎士団の誰かに渡して欲しい。
それと、マヨネーズの街にいるクロイっていう馬にこっそり事情を教えてあげて、
お願い。」
と伝えて森の中へと向かった。
アイツはシバくし、
無理やり召喚したヤツもシバく!!
サヨナラみんな、ごめん…
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