第127話 スタンピードホイホイを作る男
空からスタンピードに接近した俺たちだが、
魔物群れが大きな山の麓に沿って南西に向かっている。
だいたい北西を目指して進んでいる辺境伯軍とはいずれ交わるコース、
辺境伯軍の足が速ければ迎え撃つ事が容易だったのだが…
まぁ、今更言っても仕方ない。
万に近い魔物の殿を確認すると、
最悪な気分になった。
ドラゴンだ…
はじめましての飛べて、ブレスを吐くタイプの青色のドラゴンが、わざとゆっくりと魔物を追いたてている。
ドラゴンより弱い地竜が怯えて走り出す、
その地竜にビビった魔物が我先にとパニックを起こす…
と、ヤバい〈ピタゴラ〉のせいで大軍勢が出来上がっている。
何とか進行方向に布陣せねば、ただただこの魔物超特急の通過を見送り、国王軍本体にぶつける事になる。
魔物の群れの鼻先を追い越して、山麓沿いの隣の岩山との間の溪谷を第一次防衛ラインとした。
自然に〈V字〉になっている地形に親方を降ろして、大規模な誘導壁を立てて貰う。
ブルーに呼びに行ってもらったワイバーン騎士団が到着して、アベル副団長と四名のワイバーン騎士に、
残りの親方の迎えとここまでの誘導を指示する。
残りのワイバーン騎士団には、アイテムボックスから岩を出して誘導壁の延長や抜け道の封鎖を指示する。
ワイバーン騎士団は次々と逃げ道を潰す為に岩を撒いていき、岩が無くなれば現地の岩山が消える勢いで調達してくる。
俺もランドセルを背負い〈ピットホール〉で奈落を壁の合流地点に広く、深く空ける。
しかし、この罠で雑魚は倒せたとしても、地竜やドラゴンは倒せないだろう。
遠くに砂煙があがるのが見えたころ、残りの親方部隊が到着し、スタンピードホイホイの一例うしろに第二次防衛ラインを建設し始める。
第一次防衛ラインを完成させた親方は、魔石を補充し、最終防衛ラインと簡単な砦をつくる。
一夜城ならぬ半日城が完全する頃には、先頭の魔物が目視出来る程に近づいていた。
第二次防衛ラインの分厚い石壁の上には、ガルド男爵率いる騎士団がバリスタを並べ、魔法とバリスタで奈落を越えようとする魔物をねらい、
ヤング隊とマーズ隊は左右の山に隠れ側面から遠距離攻撃をかけるように配置、
アベル副団長とワイバーン騎士団の半数はスタンピードの中の大型魔物を潰す担当で、
ノーラ騎士団長と残りのワイバーン騎士団と俺は、あの青いドラゴンを仕留めに動く。
親方隊は休憩のあとで魔石を満タンにして、第二次防衛ライン周辺でバリアを使用しつつ壁の補修や追加で防衛ラインの保持をお願いした。
そして、
「皆、死なない様に!危なくなったら逃げる事、もう、半分に減らしたら勝ちだと思って無理しないでね。
では、各自作戦開始ぃぃぃぃ!!」
と開始の号令をかけた。
谷のあちらこちらから「おー!」
と返事がかえり、戦いが始まる。
俺は、サブローに乗りスタンピードの最後尾を目指す。
後方では魔法の爆ぜる音や、魔物の悲鳴が聞こえる。
ヤングさんとマーズさんがファイアドラグーンを召喚したようだ…
〈雑魚は任せて大丈夫だろう。〉
問題は中間から後方の強い魔物が防衛ラインにたどり着いた時に持ちこたえれるかが勝負だ。
早く元凶のドラゴンを討ち取るしかない。
後方の地竜はノーマルな地竜だし、プチメテオで沈められるはずだ。
〈アベル副団長頼んだよ。〉
心強い仲間に背中を任せて
ドラゴンに向かう俺とノーラ率いる5名のワイバーン騎士団
…勝てるよね?ドラゴンなんて初めてだけど…
不安や心配は尽きないが、やって殺れないことはないはず。
俺もパパンとテオを召喚して、
「青いドラゴンの討伐に力を貸して。」
とお願いすると、パパンは〈了解した。〉と乗り気だが、テオは〈あいつにファイアブレス効きにくいから…〉と言っていたので、
「それならテオはスタンピードの後から数を減らして。」
と言うと、テオは〈任してくれ!〉と元気よく飛んで行った。
パパンが〈妻と息子も呼べば良いぞ、ご主人様よ〉と言ってくれたので、追加で〈ママン〉と〈サン〉を召喚した。
ランドセルのお陰で魔力のは大丈夫だが、抜け出る魔力感が半端ではない。
ママンは前と同じだが、〈サン〉が成体になって巣立ちを目前にした、立派なドラグーンに育っていた。
パパンが
〈最終試験だ、ご主人と共にブルードラゴンを倒す。〉
と言うと
〈了解です、父上。〉
と〈サン〉が答える。
ドラグーン子爵騎士団の名前に負けない軍団は少し離れた位置に陣取るブルードラゴンを確認できる所まで近づいた。
〈野生の勘というのか、アイツの行動がやけに引っかかる。
狂乱している様には見えない…〉
ブレスに注意しながら〈魔物鑑定〉をかけると、
〈ブルードラゴン〉
〈アクアブレス〉〈飛行〉〈水の牙〉〈頑強〉
〈
と結果がでた。
…日本人だな…最悪な出会いだよ…
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