第115話 弟子と男の物語

ワイバーン騎士団の正式配備も完了した。


女性騎士の〈ノーラ〉さんを団長に


サトラから来た、あの瀕死だった兵士の〈アベル〉さんを副団長 として、



適正の有った者〈高所恐怖症でない〉を八名を配属し


総勢十名の〈ワイバーン騎士団〉を作った。


たった十名で、


〈なにをそんなエラそうに自慢して。〉


と、思うかもしれないが、


剣、槍、弓などの個人技能は勿論、


マヨネーズの街の複製師が様々なスキルスクロールを複製出来る様になり


レベル1のアイテムボックスを


全員に5コずつ渡して取得してもらい、


ターゲット・集中・従魔召喚


それに好きな魔法を一種類をレベルMAXと


フィジカル


を身につけた我が領地の最高戦力なのだ。


このワイバーン騎士団の最大火力の攻撃は、俺の昔からの十八番(オハコ)の〈岩雪崩れ〉だ。


しかし、遥か上空からの巨石の自然落下、〈プチメテオ〉と云ってもいいぐらいの破壊力だった。



国王陛下がワイバーン騎士団の視察にマヨネーズの街に訪れた時に、


この〈プチメテオ〉を披露すると、


「王国に喧嘩を売っている他国にだけは寝返らないでくれ、頼む。


あれを相手に3日と持たずに滅ぼされる自信がある…」


と宰相さんと二人して青ざめていた。


俺が


「さぁ、どうでしょう?」


とイタズラっぽく微笑むと、


「よし、伯爵にしよう。


いや、空軍を作り空軍大将か?


どうだ!?」


と王様が慌ていたので、


「いえいえ、今のままで十分ですので、」


と断っておいた。


今は書類上はガイルス様の子分だから、面倒臭い交渉や会議は、俺が関わってない限りガイルス辺境伯に丸投げできるが、


伯爵だの、役職持ちに成るのは正直勘弁して欲しい。


〈べつに、国からのお給料はあてにしていないので…〉


それと、


領内の予定は順調に進んでいる。


次は、領主としてではなく、師匠としてブルーをサラと同じ〈B級〉にするために〈冒険者〉を頑張ろうと思っている。


しかし、


ブルーはサラにも気を遣って肩身が狭そうだ。


もっと気楽にノビノビとして欲しいし、


俺とも少し心の距離を感じる…


これは師匠として、〈仲良くなろう作戦〉を開始する必要が有るかもしれない。



翌日からブルーと一緒に買い食いしたり街ブラしたり、あとは大浴場の解放日では無かったので、掃除中〈アンナちゃん〉と〈ミーアちゃん〉にお願いして、ちょっと贅沢に貸し切りのお風呂を堪能した。


ブルーはやはり〈大人越え〉事件から人前での裸に抵抗があったが、


俺と二人きりで、サウナに水風呂を3セット繰り返すうちに解放感や高揚感から俺の前では平気になったのか湯船でプカプカ浮いていた〈仰向け〉


ブルーはアシッドスライムの時以来、本音で話すこともなく気を遣い続けていたが、風呂で師弟の絆が深まったようで、


ブルーが例の〈ボーボー〉の件について相談してきた。


確かにギャランドゥもご立派な〈ザ・男性ホルモン〉的な毛量だった。


細身のクールガイに神様はなんて残酷な十字架を背負わせたのか…


俺はしばらく考えた後に、


「剃っちゃえ、剃っちゃえ!」


という結論に至った。


「師匠、コレって剃っても、その…いいのですか?」


と心配そうに聞いてくる、ブルーに、


「剃っちゃ駄目って王国法もないし、剃ってブルーの悩みが一つ無くなるなら、いいんじゃない?」


と答えると、ブルーはパァっと笑顔になった。


お互いに真っ裸でなければ絵になる光景だろうに…


アイテムボックスから折り畳みのカミソリを出して、ブルーに渡す。


ブルーは石鹸を泡立て、


いざ!


という時に、


「師匠、何か怖くて出来ません


すみませんがお願いします!」


とヤバいお願いをしてきた。


ここで断れば、折角強く結ばれた師弟の絆にヒビが入る恐れが…


俺は、〈当たり前〉みたいな顔を必死で作り。


「いいゼェ。」


と答え、カミソリを手にジョリジョリしていく


ブルーはもう一人のブルーをあっち向け、こっち向けと…


俺は、怖さで顔を背けて立っている弟子の前に膝まづき、いったい何をしているのだろうと客観的に考えてしまっていた。


何だかバタバタと脱衣室から聞こえるが、アンナちゃんと、ミーアちゃんが、女風呂の掃除を終えて、男風呂に来たが、まだ使っているから帰ったのだろう。


そうこうしてるうちに粗方を剃り終えた。


ブルーがとても満足そうなのでヨシとしよう。


精神力は削られたが、ここで疲れを見せてはブルーが気にする、


俺は、


「いい風呂だったなぁ」


と元気よく振る舞い、


ブルーは


「身も心もスッキリしました、師匠。」


とニコニコしている。


男湯の前で待っていたアンナちゃんとミーアちゃんに、


「ゴメンね、待たせた? 掃除よろしくね。」


と声をかけて風呂を後した。



そして、数ヶ月後に俺は、


城に呼び出しをくらい駆けつけると、


王様の横で、頭を下げるジェルバ公爵様が…


〈全く訳が解らない…〉


「あの~、何がどうなっているのですか?」


と聞けば、ジェルバ様が、


「落ち着いて聞いてほしい。」


と前置きをしてくる


なに、なに、何!?


「実は、我が屋敷のメイドがこの様な不届きな書物を所持しておってな…」


と言って薄い本を渡してきた。


読んでみると、


……腐っていた……


弟子の『コバルト君』が師匠の『ワイバーン様』にお風呂場でイタズラをされる物語、


ほぼ、弟子のセリフは『師匠』『いけません。』以外は、〈あ行〉、


中の挿し絵は、どう考えても俺とブルー


そして、この場面に見覚えが…


ある…


ジェルバ様は、


「所持していたメイドを部屋に閉じ込め、出所を聞いたのだが、


〈乙女会の誓いは破れません!〉


と答えぬのだ。」


と頭を抱える。



…ジェルバ様、スンマセン。

多分出所は、ウチのメイドです。



絵の腕前も文才も有るが、題材が…よろしくない。


帰ってお仕置きだな。

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