第114話 猫達を里子に出す男

我が家のワイバーンに狼は住む場所も決まり、従魔としての活動に励んでくれている。


しかし、

困っているのが、〈やんちゃな6匹〉の影豹だ。


俺の影に6匹が出入りしている間は良かったのだが、流石に育ち盛りの影豹は6匹全てが俺の影には入りきらない程成長した。


でも、甘えん坊で俺の行く場所にはぞろぞろついて来たがるので、屋敷にいる間は四六時中〈肉食獣〉に取り囲まれて過ごしている。


俺の留守中はメイドさんが、ご飯をあげているのだが、


「旦那様、以前は良かったのですが、最近〈ミーちゃん〉達のご飯やりが怖くて…


一匹ずつなら良いのですが、6匹まとめてだと、順番待ちの間の目線が、獲物を狙うソレでして…」


と苦情が来てしまった。


すぐにどうとも出来ないので、


「少し時間を下さい。」


とだけ言ってその場をやり過ごした俺だが、決断の時はすぐにやって来た。


俺がトイレに入ったら、影豹達も個室に入ってきて、


窮屈だわ、暑いわ、扉は閉まらないわ、

丸見えだわで…


リャ駄目だ、トイレだけに…〉


影に潜むボディーガードと呼ぶには少し甘えん坊でやんちゃだが、


もう、兄弟別々でも大丈夫なくらい成長したから〈ヤングさん〉や〈マーズさん〉とかに預けちゃうことに便座に座りながら決めた。



後日、ヤングさんとマーズさをに屋敷に来てもらい、


二人に向かいニコッと微笑み、


「二人共、ありがとう。

ガンバっている二人にご褒美だよ。」


と、俺が言うと、


「何ですか?気持ち悪い…

旦那が悪巧みしている時の笑顔だよ。」


とヤングさんが警戒する。


「旦那様、私共にご用とは?」


とマーズさんが質問するので、


隣の部屋に待機しているメイドの〈アンナちゃん〉と〈ミーアちゃん〉に、


「では、ヨロシク。」


と合図すると扉が開かれて、


6匹の大型肉食獣がゾロゾロ入って来る。


二人は一瞬〈ギョッ〉としたが、


すぐに、


「旦那、あの時の影豹達ですかい?!」


と驚くヤングさんに、


「いやぁ、大きく成りましたね。」


と感心しているマーズさん。


俺は、


「実は、大きく成りすぎて、俺一人では遊んだり、世話したりが大変だし、


留守の間のお世話はメイド組が担当してくれているんだけど、6匹は流石に〈迫力があって怖い〉と云われて、


二人に懐いてた兄弟を一匹ずつ〈お供〉にしてもらおうと思ってね。」


と、白状すると


6匹は、それぞれに二人に挨拶のスリスリをした後、一匹ずつが二人の足元でくつろぎだした。


〈あの二匹で決まりだね。〉



ヤングさんは影豹に〈コーン〉と名付け


マーズさんは影豹に〈ゴッド〉と名付けた。


なぜゆえ?


理由を聞いたら、


ヤングさんは


「こいつの粒々柄をみてたら〈焼きモロコシ〉を思い出したからでさぁ」


と言って、


マーズさんは、


「狩人達の間で〈影豹〉は神として崇められているので、大層な名前ですが、この子に狩猟の神の恩恵を賜るようにと名付けました。」


と語っていた。


ヤングコーンに、ゴッド…


いや、ネーミングセンスが御臨終している俺は、これ以上言わない事にした。


「二人とも二匹をヨロシク。


コーンとゴッドもご主人様の為に頑張ってね。」


と俺が言うと。頷く二人と


「ガルッ」と鳴いたあと、それぞれの主人の影に飛び込む二匹


ヤングさんとマーズさんはしばらく自分の影を眺めたあと、


「ありがとうございました。」


と礼を言って仕事に戻って行った。



続いて、4匹を連れて騎士団の訓練所にきたのだが、


テイマー持ちのワイバーンナイトに託す為ではない。


テイマースキルを取得してもらい、〈ワイバーンナイト〉の団長をしてもらう予定だった〈ガルド〉さんに会いに来たからだ。


なぜ予定だったかというと、


彼は、自分も知らない事実があった為、ワイバーンナイトを辞退したのだ。


それは、


〈チビる程の高所恐怖症だったのだ。〉


いや、実際チビッてた…


〈馬鹿と煙は高いところに登りたがるが、アホはその限りでは無かった様だ。〉


なので、現在テイマースキルを持っているが、従魔が〈トラベルホース〉しかいない近衛騎士団長に影豹をプレゼントに来たのだが、


〈これで猫アレルギーとかならどうしよう?〉


と不安だったが、ガルドさんは無事に影豹と契約でき、〈クーガー〉と名付けた。


いやいや、豹とクーガーは別の生き物だし、アホなの?


と思いながら由来を聞けば、


「クイーンガードの略称です!」


と語ってた。


嫁馬鹿でもあるんだね…


残るは三匹、長女の〈ミーちゃん〉は残すとして、あと二匹…


悩んだ末に、影豹を使いこなしそうな人物に託す事にした。


トーマスさんに、

2つのテイマーのスキルスクロールと共に、


「屋敷の警備や護衛など、トーマスさんが思うように使って欲しい。」


と頼むと、


トーマスさんは、〈ゴードン〉さんと〈ヘンリエッタ〉さんを連れてきて、


「我が子二名にその仕事を任せたいと存じます。」


と申し出た。


勿論、何の問題もないので了承した。


ゴードンさんはライザさん担当の執事のようなポジションについて、影から護衛などをしてくれている。


ヘンリエッタさんは同じ様にアイシャさんについてくれているので、マヨネーズの街で頑張ってくれている二人の婚約者もこれで安心だ。


現在、

一匹になった〈ミーちゃん〉は俺の影に入ってくつろいでいる。


〈寂しくないのかな?〉


と考えていたら、


〈別に…〉


とミーちゃんから返事があった。


一瞬驚いたが、


今まで6匹バラバラで同時に語りかけるから上手く聞き取れ無かったが、


一匹に成ったんだなぁ


としみじみ感じて、俺が少し寂しくなった。

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