第111話 ダンジョンを楽しむ師弟

特に強い敵も出ず、

良いアイテムも手に入らなかったが、

師弟との絆は深まった。


10階層のボス部屋の前にいるのだが、


「師匠、何だか駆け出し冒険者の為の階層が続きましたね。」


とブルー君がこれまでの階層を評価した。


〈確かに、練習して下さい〉みたいな敵と、バリエーション豊富なエリアが、続いた。


サラは、手応えが無さすぎてご不満の様子であるが、


考えていても仕方ないので、一旦昼飯にする。

アイテムボックスから、〈塩むすびに唐揚げ〉のお弁当をだして三人で頬張る。


シュートは、


〈敵が強くなったらまたお願い〉


と、ブルー君が牧場に送喚した。


腹も膨れて、疲れもとれて、


〈よし、ボス戦だ!〉


と意気込んで扉を開けて中に進むと、


懐かしい〈スタンプボア〉が一匹いた。


〈確定、初級冒険者対応コース〉


サラのやる気スイッチがオフになる音がした。


「兄貴、いつものよろしくね。」


とサラが言うので、


「ピットホール」


と、スタンプボアの前足の辺りに穴をあけて頭から落とす。


以前よく見た光景がソコにあった。


するとサラがアイテムボックスから槍を取り出して、


「ブルー君、我らが流派の闘い方を体でおぼえましょう。」


と優しく話しかけて、槍をブルー君に渡して、


ニコっと、微笑む


〈いやいや、そんな流派立ち上げてないから、〉


!!


〈ってか、紋所アタックをやり始めたのサラだよね!?〉


と心中で、突っ込みを入れていたら、


「ブゴォォォオァァァ」


っと、叫ぶ声が響く


見ると、ブルー君が〈無〉の表情で、アタックを開始して、


ズップリ差し込んだ槍を〈ぐるんぐるん〉していた。


「フゴォ、フゴォ、フゴォォォ…あっ。」


っと何かに目覚めた瞬間に〈スタンプボア〉はドロップアイテムに変わった。


「師匠、オワリマシタ」


と、機械的な報告をしてくるブルー君…


「師匠の流派…」


と深刻な顔になり悩んでいるようだが、


「ブルー君、俺らの流派とかでは無いから!

罠にはまった魔物を倒す基本だから、

柔い部分や急所を狙うのは。」


と俺は否定したが、


ブルーくんは


「あははは」


と愛想笑いをしながら死んだ目をしていた。


なんかゴメンね。



ボスを倒して、メダルと牙を回収してボス部屋の出口に向かうと、討伐ボーナスの宝箱が現れた。


「ブルー君、開けてごらん」


と促すと、


「良いんですか?」と言いながらも嬉しそうに宝箱をあけるブルー君、


中には腕輪が入っていた。


「何の腕輪だろうね」


と俺が呟くと、


「師匠お任せください。」


とブルー君は〈アイテム鑑定〉を使う


「師匠、わかりました。


〈ラックの腕輪〉といって運が上昇してドロップ品が良いものが出やすくなるらしいです。」


と説明してくれた。


「ブルー君が倒して手に入れた物だからブルー君が使いなよ。」


といったのだが、


「ならば、師匠が使って下さい。

師匠にする初めての恩返しだと思って…


どうぞ!」


と、俺に腕輪を差し出してくる。


まぁ、ブルー君のアイテムをブルー君が渡すのだから、有り難く貰っておこう。


「ありがとうブルー君」


と俺が言うと、


「師匠、僕も〈ブルー〉と呼び捨てして下さい。」


と可愛いお願いをれた。


「了解だ〈ブルー〉」


と俺が言うと、「えへへへ」っと嬉しそうにしていた。


するとサラが、


「兄貴、済みましたか? 次に行きますよ。」


と、素っ気なく言って進み始めた。



三人で11階層に降りてきのだが、


一階層と同じ草原エリアだった。


「兄貴、この階層から次のボス部屋前までアタイがやるから。」


と、宣言するサラに


「じゃあ、〈ラックの腕輪〉付けて、良いドロップ品をヨロシクね。」


と腕輪を渡してた。


俺がサーチ担当で、ブルーがマップ係りに専念する。


サラはボウガンと魔法を駆使して、敵を駆逐していく。


サラが凄いのは、〈マジカルボウガン〉を構えたままでも魔法が放てるので、ターゲットさえロックオン出来れば、矢で倒し切れなくてもそのモーションのまま魔法で追撃が可能なところだ。


大群に囲まれても魔力が続くかぎり何とかなるサラだが、


「ガル召喚」


と、呼ばれて飛び出る森狼のガル


このコンビならば、遠距離も、近距離も、隠密行動もバッチリだ。




順調に進むが、やはりマップ的には一階層からの使い回しのようなマップがつづく


〈草原〉→〈荒野〉→〈岩場〉→〈湿地〉→〈森〉→(休憩エリア)→〈高原〉→〈洞穴〉→〈水辺〉→〈山岳〉→〈ボス〉


の繰り返しの様だ。


何の問題もなくサラ無双を見せられただけでボス部屋前に来た。


軽く晩御飯を食べながら戦利品をチェックする。


魔石や部位のドロップに混じって、宝箱のドロップが3つあり、〈スキルスクロール〉も2つあった。


宝箱に罠感知をつかっても反応がなかったので、そのまま一人1つ開けていく。


ブルーの宝箱は〈麻痺ナイフ〉


サラの宝箱には〈魔力の首飾り〉


俺の宝箱には〈アイテム鑑定メガネ〉


とブルーがアイテム鑑定してくれたが、


アイテム鑑定メガネの鑑定が出たとたん、


「僕の、存在価値が…」


と凹んでいたので、焦った俺は、


「ブルーがメガネ使って鑑定したら滅茶苦茶鑑定できるんじゅない?


ブルーが持っておいたらは…」


と苦し紛れで、アイテム鑑定要員をブルーに絞ろうとテキトーな理由でメガネをブルーに預けた。


ブルーはメガネをかけたり、外したりして〈スキルスクロール〉を鑑定してるのだが、


「師匠は凄いです。

本当に詳しく鑑定できます。」


と、騒いでいる。


嘘!と驚く俺に、ブルーは、


スキルスクロールは

〈加速〉と〈ウォーターボール〉なのですが、

例えば〈加速〉なら、


メガネ無しなら


〈加速〉

移動速度上昇効果


ですが、


メガネ有りなら


〈加速〉レベル4

移動速度上昇効果 〈最大40%増〉


と、成ります。


と教えてくれた。


!もしかして、複製師は威力半分で複製するから、この〈加速〉を複製したら、


レベル2の〈加速〉が出来る。


その複製品を2つ使用したら、


レベル4のスキルになる計算なら!


他のスキルショップで〈レベル2〉の複製品を買って、マヨネーズの街で更に複製して〈レベル1〉のスキルスクロールを作れば、数が出回らない物や数が必要な物が簡単に手に入る?!


威力が、不安なら2つ使えば即戦力になるはず…


ダンジョン攻略が終わったら試す事にしよう。


〈そうとなれば、とっととボスを倒して今夜は休もう。〉


最悪21階層が草原かを確認して、魔物の強さを調べたら引き返し転移陣で戻ってもいいし、


行けそうなら、30階層を目指すのもいいかな…


「二人共、ボスを倒して先の転移陣部屋でマジックハウスで休む事にするよ、



さぁ、もう一頑張り、皆でボスをやっつけよう!!」


と、俺が言うと。


弟子の二人が「おーっ!」と拳を突き上げた。

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