第88話 乱獲をする男

山ネズミ狩りにキャンプ村に来たのだが、


マーキングを済ませて山に向かおうとすると、百匹近い〈山ネズミ〉が平伏していた


その先頭に〈ネズ〉がいて、


「旦那、ここに居るのは俺っちの兄弟や幼馴染っす。


旦那の配下になりやすので、コイツらの命ばかりはどうか!!」


と懇願する


間違えてはいけない、この山だけでも数万いる〈山ネズミ〉を乱獲しには来たが、絶滅はさせに来ていない。


俺は、ネズに、


「キャンプより下のエリアで隠れてろよ。


他の冒険者に殺られても助けに行かないよ。」


と注意して山の上部の狩場を目指す。


今回は乱獲しても冒険者ギルドには売らない、


商会の肉屋チームで解体し、

肉は腸詰めや燻製にして、

毛皮は防寒着や敷物に縫製工房チームに加工してもらう。


魔石は勿論〈魔石ランドセル〉用にためて、街作りに使う予定だ。


時間停止付のマジックバッグも追加でいくつか購入したので、かなりの肉の量でも慌てること無く加工肉に変える事ができる。


サラに片手剣と小型盾を渡して、


〈今回は危ない時以外はコレで〉


と課題をだす。


狼チームが〈山ネズミ〉を物陰から追い出して、各々倒していく。


帝国では一般的にある〈刀〉使いの〈サクラ〉さんに、槍使いの〈アン〉さんは

問題無く〈山ネズミ〉を乱獲している。


しかし、驚いたのは猟師の〈ヤング〉さん〈マーズ〉さんコンビだ。


弓の正確さ、早さが二人共に異常だ。


幼い頃からライバルで、技を磨きあってきたと言っていたが、


〈A級〉冒険者と比べても見劣りしない腕前だった。


むしろ、格下の狩場なのに、馴れない武器でワチャワチャしているサラが心配だ。


ほんの数時間で辺り一面〈山ネズミ〉の死体の山で、


猟師二人が頑張って、血抜きと皮剥ぎをしてくれている。


俺たちは回収班になっているが、


コッソリついて来たネズが、


同族の乱獲現場を目の当たりにして、


盛大に先ほどまで喜んで食べていた〈故郷の草〉を山に返す作業をしていた。


気を遣い物陰に隠れているが、


テイマースキルで俺にだけ聞こえる。


〈グッスン、ごめん皆、群れが違った事を恨んで欲しいっス…!おろろろろぅ…〉


という嗚咽と嘔吐の繰り返しに、俺は心を病んでいる。


もう、〈ネズ〉は下に帰ってろ…


二週間ほど乱獲を続けて、魔石用の大型マジックバッグがパンパンになったので、


ロゼリアに戻る。


〈風呂に入れるぞ!〉


別にキャンプ村で穴を掘って水を貯めれば〈サーモ〉を遣い露天風呂ができるが、女騎士の〈サクラさん〉と〈アンさん〉のチーム〈さくらあん〉が嫌がったので皆で我慢した。


テントを3つ並べて寝たのだが、


サラが、


「兄貴とお風呂に入れるて思ったのに残念…」


と言って自分に〈クリーン〉をかけていた。


なので、乱獲チームは今お風呂に飢えています。


かなり大型の馬車で来たはずだが、帰りの荷台は〈生きた山ネズミでいっぱいだった。〉行きは荷台でのんびり寝ていた〈ヤングさん〉と〈マーズさん〉のチーム〈やんまー〉は片身の狭い思いをしながら〈ロゼリアの町〉まで帰った。



さて、次は建材を集めなければならないが、


俺の領地は平原で山が無く、森も少ししかない。


資材が圧倒的に足りない。


ガイルス様に相談したところ、


「辺境伯領内なら好きにしろ、


国王陛下にも相談するからのんびり待っておれ。」


と許可を頂いたので、


最近の俺への度重なるイタズラに対してのお仕置きとして、〈遠慮なし〉でガッツリいかせてもらうことにした。


後日、木材と石材をサラと二人でアイテムボックスに放り込む散歩に領都近くの岩場や森をまわりる。


巨石を見つければ、手当たり次第に、まるごとアイテムボックスへしまい、


木材も、一部分森が林になる程度〈集中・ウィンドカッター〉で伐採してはアイテムボックスをくりかえす。


狼チームに守られながら〈パーシー〉君が森の苗木を〈植物鑑定〉しては、スコップで掘り起こし、麻布で根っこをカバーして、リオの荷車に乗せていく。


平原しかない領地に人工の森を作り、花見や紅葉を楽しんだり、クルミ拾いが出来る場所を作るためだ。


正直、領都周辺の地図が少し変わったのでは?

と思うくらいの建材を集めた。


さて、今頃は〈山ネズミ〉組が〈ネズ〉の号令のもと、


街の建設予定地と、そこに行く迄の道の草刈り…いや、草食いを頑張ってくれているだろう。


近々商会内で〈大会議〉を開いて、町の方向性を決めよう。


〈まだまだ先は長そうだ…〉


…あれ、俺の本職は冒険者の…はず…だよね?




数日経ち、

会議が有った翌日、帝都に向けて〈受験組〉が出発した。


何人かでも〈土木魔法師〉を手に出来れば良いのだが…


会議の結果は街は中央エリアは盛り土して高い壁とお堀で囲み、道は碁盤の目に引き、エリア毎に区画を分けて、一部緑地エリアを作る。


〈どすえぇー〉な感じの街を目指す。


井戸は何処を掘ってもでるが、下水路の側は避けるルールを決め、


トイレは水洗式を一部試すが、当面は汲み取り式を採用し肥料とする。


建物や幹線道の整備は、受験組が戻ってからである。


ライスが自生している土壌は一部そのまま〈田んぼ〉として活用し米を作る予定だ、


湖と反対側の水捌けの良い小高い丘には果物などの果樹園等を予定している。


牧場も大規模にして…


あぁ、夢が広がる。

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