第86話 土木魔法を買う男

帝都のスキルショップに着いて、


商品を見る。


見馴れない魔法やスキルはあるものの、土木魔法らしきスキルはない。


店員さんに、


「すみません。

道とか壁をつくる魔法スキルってどこに有りますか?」


と聞くと、


「ここには有りませんねぇ」


と、だけ答えた。


〈接客どころか愛想も何にも無い…〉


でも、俺は知っている。


こういう場合は。


スキルを買えばいいのだ。


サラと二人で店内を巡り、スキルを物色する。


〈帝都魔法技術研究所特性、生活魔法・温度調節!〉


とポップが書いてあった。


〈プチフリーズ〉と〈プチホット〉の生活魔法に、新開発の〈温度調節〉を合わせる事で、指定の温度-20度 から 100度までの調節が可能な、複合生活魔法〈サーモ〉になります。


と、説明があった。


「サラ、一旦これを買うよ。」


と、サラに告げて店員に、


「プチホットと温度調節の2つを、下さい。」


と、伝えると、


「合わせて大金貨二枚。」


とだけ答える。


あれ?態度が悪いままだな…


と思いながらも、俺が大金貨二枚を渡すと。


店員は大金貨を見つめて、


「けっ、王国金貨かよ。」


と悪態をついて天秤計りを出して帝国の大金貨と、俺の王国大金貨を乗せて重さを調べたのち、


「はぁー王国金貨は手間だから次からは帝都金貨で持ってきな…


これだから田舎者の接客は嫌なんだよ。」


…ただただ、感じの悪い店員に当たっただけか?


と面食らっていたら、


店の奥からピンクのスーツ姿のオッサンが現れて、


「お客様になんて態度をとってるのよぅ!!」


と店員の頭を張り倒した。


「アンタって子は、

いっつも言ってるだろうがぁ!!


愛想良く丁寧な接客をしなって。


そんな事ではアタシみたいな立派なレディに成れないわよぅ!」


と…


張り倒された店員は、床でポロポロ涙を流し、


「ゴメンなさい。ママ…」


…と…


情報量、情報量!!

一回で処理出来ない情報量の出来事が起こっている。



ゆっくり整理しよう、


店員は王国システムのスキルショップ店員の〈買ったお客様に接客スタート〉ではなくて、ただの態度の悪い店員


店長かな?のオッサンは

ピンクのスーツの〈オネェ〉様


で、態度の悪い店員も〈オネェ〉道を極めんとする〈猛者〉と…


整理しても飲み込むには一苦労しそうな事が目の前で、今、起こっている…


「ゴメンなさいねぇ

この子ったら、つい先日彼氏にフラれちゃって、ご機嫌斜めなのよぅ」


〈いや、知らんがな。〉


「もう、ママぁ。

バラさないでよ、恥ずかしい。」


と店員さん


〈兄貴、アタイ達は何を見せられてるの?〉


とサラが念話の指輪で聞いてくる。


〈良い子は見てはいけません。

向こうの棚の商品を見てましょうね。〉


と念話で答えた。


ピンクスーツのオッサンが俺を見て、


「お客様、何かお探し…


あら、嫌だ!タイプぅ~。


アタシは店長の〈エドモンド・キャサリン・ホンダ〉よ〈エドりん〉って呼んでねぇ~」


と店長が自己アピールしてくる。


〈道端でヨガの達人と喧嘩する力士みたいな名前…〉


〈キャサリンで良くない? 〉

〈エドりんって…〉


と一人で遠い目をしてると。


「奥でユックリ話しましょう。

お客様テーブル席に、ご案内ぃ!」


と連行される俺、


〈兄貴!〉


と心配するサラに、


〈良い子は見ちゃダメ!

お願いだからこんな姿、見ないで…〉


涙を一粒流し、ピンクスーツオジサンの小脇に抱えられ運び去られる俺、


着いたさきは!


…普通の商談室でした。

意外。


そこで、謝罪を受け、

土木魔法なるものを探していると告げると、


〈エドりん〉は、〈建設ギルド〉で扱っていると教えてくれた。


その後軽くお話をして、


「仲間を待たせて居るので!」と逃げ出した。



精神を削られグッタリしている俺に


「兄貴、大丈夫だった?」


と、優しく声をかけてくれるサラ


〈あら嫌だ、泣きそう…〉


「ちょっと疲れただけだよ。」


と、引き吊る笑顔で答える俺に、


〈今晩、寝る時イイコイイコしてあげようか?兄貴〉


と念話を飛ばすサラ、


〈きっと泣いちゃうから止めとく…〉


と俺は念話で返して、トボトボと、


〈建設ギルド〉に向かった。


ちなみに〈エドりん〉は帝国で有名な大賢者〈本田〉さんの末裔らしい、


知らんがな…



建設ギルドに着いたが、また長くなると悪いので、狼チームも一旦〈送喚〉してから全員でギルドに入り、


「〈土木魔法〉を手に入れたい。」


と窓口の職員さんに伝えると、


別室に、連れて行かれた。


そして、


「制限時間は30分です。

一度退室すると再度入室は出来ません。


教本等の持ち込みは発見次第に失格となります。


では、よーい、始めっ!」


と、テストをさせられた。


テスト用紙には、


『90センチの幅の〈石壁〉が作れる魔法を真横に連続十二回使えば石壁は、何センチに成りますか?』


みたいな問題が続く。


小学校の文章題だな…


一瞬専門的な試験かとヒヤリとしたが、心配して損した。



試験結果は即日発表され、


俺が、〈一級土木魔法師〉に合格し


サラとノーラさんは、〈二級土木魔法師〉に合格、


残念ながらガルドさんは 失格点だった。


マジか!我が家の騎士達にも、お勉強会が必要かもしれない。


合格者はギルド内のショップが利用できて〈級〉に応じたスキルや、便利アイテムの購入ができる。


〈一級土木魔法師〉スキルは


〈形状変化〉魔法技術研究所特製

〈硬化付与〉魔法技術研究所特製

〈ストーンウォール〉帝都のみで販売

〈ピットホール〉

〈アースウォール〉

の複合スキルで


道の舗装

〈ストーンウォール〉を〈形状変化〉と〈硬化付与〉で硬くて平い石畳の道を出現させる。

※アースウォールで硬い土道も可能


整地

〈アースウォール〉と〈形状変化〉

で、土を盛ったり、〈ピットホール〉と〈形状変化〉で指定の区画の土を削ったりする。


壁生成

〈ストーンウォール〉と〈形状変化〉と〈硬化付与〉で思った幅や高さの石壁が作れる。

※魔力使用が多いために注意が必要


溝生成

〈ピットホール〉と〈形状変化〉で、溝や配水管など、真下に穴を空けるだけでなく溝は勿論、真横にピットホールでトンネルを掘る事めも可能である。


これらのスキルと


特殊アイテムの〈魔石ランドセル〉の購入が可能になる。


魔石を、中に積めると装備者に魔力を与える〈外部魔力タンク〉


登録者のみが使用者可能なマジックアイテムだ。

※自然修復ありの逸品



そして

〈二級土木魔法師〉は


〈ウッドブロック〉魔法技術研究所特製

〈形状変化〉魔法技術研究所特製

〈石レンガ生成〉魔法技術研究所特製

〈接着〉魔法技術研究所特製


の複合スキル

※一級土木魔法師は二級のスキルも購入可能


ウッドブロックは木材を規定の大きさのブロック体にかえる。

質量さえ有れば端材の寄せ集めでも生成可能。


ウッドブロックを生成時に形状変化を掛ければ、質量の範囲内で自由に形を変えられる。


石レンガ生成は決まったサイズのレンガを石から作り出す魔法


接着は同じ素材ならば、くっ付けられる魔法


である。


〈魔法技術研究所〉がなければ出来なかった帝国産のスキル購入し


俺は一級と二級


サラと、ノーラさんは二級


土木魔法師スキルを取得し、


勿論魔石ランドセルも一番容量の大きな物を購入した。



さぁ、街作りだ!!



あぁ、あとガルドさんはお勉強ね。

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