第10話 家族が増えた男
町に戻り宿に帰る前に冒険者ギルドに向かう。
スキル鑑定水晶の利用窓口で料金 (小銀貨六枚) を払いスキルを鑑定してもらう事にした。
この世界はステータスなどの確認は自分でする事ができない、
〈ステータスオープン〉や、〈ステータスカード〉のようなモノは一通り試してみたが反応は無かった。
冒険者ギルドで金を払って自分のスキルを調べると知った時はなぜか凄く損をした気分に成ったのを覚えている。
駆け出しの頃の六千円は、まぁキツイ、
出て来た結果がアイテムボックスと異世界言語スキルの2つだったので更に損した気分になったものだ、
と懐かしがりながら、この世界に来て二度目のスキル鑑定を行う。
まぁ、水晶に手を置けば持っているスキル名が紙に転写されるだけの簡単な作業だが、前回よりも増えている感覚があるので少しドキドキしている。
水晶が光り、文字が紙に写しだされる
〈アイテムボックス〉
〈異世界言語〉
〈罠師〉
〈弓〉
〈料理〉
〈テイマー〉
あぁ、有るなぁ〈テイマースキル〉
〈罠師〉と〈弓〉は解るが、〈料理〉までスキルが生えていたのは驚きだ。
さて、さて、〈テイマースキル〉が有ると解ったので、正式にこの森で出会った狼…たぶんガルと同じ〈森狼〉を家族として登録をする事になるのだが…
足元に〈お座り〉して大人しくしている狼を見つめて、
〈名前すら決めて無かったな〉
と考えていた。
〈メスの狼だよな〉
森狼、ふぉれすとうるふ?
もりおおかみ…も、リオ、女将…
〈リオ〉でいいか?
と決めたとたん、狼は尻尾をブンブンと振り舌を出して喜んでいた。
新たな家族は〈リオ〉という名前に決まり、ギルドショップで鑑札付の首輪を買ってから宿屋に帰る。
オヤジさんと女将さんに事情を話して狼用の寝床を追加してもらったが、
サラはまだしも、ガルは新しい俺の家族と仲良くしてくれるだろうか?
心配しながら宿の風呂で、長旅の疲れと〈リオ〉を丸洗いしていた。
「まぁ、成るように成るか!」
と諦めてリオの水気を拭き取ると、ホワッホワの美人さんに仕上がった。
「うん、美人さんに成ったな」
と、満足して〈リオ〉の頭を撫でると
〈やったぁー、嬉しい!〉
みたいな声がした気がした。
うーん、なんだか、ペット好きの人が、〈ウチの子、喋るのよ!〉みたいな事を言う気持ちが少し解った。
あれはたぶん〈テイマースキル〉だ
部屋に戻り、サラとガルが戻るまで〈リオ〉とゆっくり過ごす事にした俺は、アイテムボックスからガル用のオヤツの鹿肉ジャーキーを取り出して、
〈お座り〉
〈待て〉
〈ヨシ〉
〈伏せ〉
を試してみた。
やはり、〈テイマースキル〉の能力で簡単な指示は理解できる様子だ。
もっと二人の関係が出来上ればもっと複雑な指示でも伝わる様に成りそうだ。
そんな事をしていたら、サラとガルが今日の仕事を終えて宿に帰ってきた。
「ユウの兄貴、お帰りなさい!」
と俺に飛び付くサラの頭を撫でながら、
「ただいまサラ」と言ったのを聞くか聞かないかで、
「兄貴、可愛い!!」
と、〈リオ〉に抱きつき撫で回すサラ。
ガルを見ると、リオを見て、俺を見て、サラを見た後に少し考えて、
〈はい、はい、そうですね…〉
みたいな感じでリオに歩み寄り、ヨッコイショと腹をみせて服従のポーズをとるガル…
「なんで?」
と不思議そうにする俺にサラが、
「森狼はメス中心で群れを作るし、この群のリーダーはユウの兄貴で、兄貴の相棒のこの可愛いメス狼の方が自分より上の存在だからガルは子分宣言をした。」
と説明してくれた。
案外複雑なんだな狼の世界も…。
なんだか可哀想に成った俺は、ガルを撫でながら鹿肉ジャーキーを与えていた。
その後、〈リオ〉にパーティーメンバーの紹介とサラ達に〈リオ〉との出逢いを説明してその日のは終了と成った。
翌日、ガイルス辺境伯様のお屋敷にパーティー全員で向かい、肉やキノコの納品をする
〈スタンプボア〉も〈タックルボア〉料理長が丸ごと買い取ってくれた。
辺境伯様は、〈美味しい茸〉の山をホクホク顔で買い取る…大好物だそうだ。
念のためと、ついでに獲れた鹿肉と山菜も買い取ってもらったが、婚約発表会まで数日ありもう少し〈美味しい茸〉の追加をお願いされてしまう。
まぁ、〈リオ〉の嗅覚が在るから前より楽に探せるので良いけど…。
「料金は全て終わってからで良いですよ。」
と告げて、サラ達を連れて冒険者ギルドに寄り残りの森の採集物の買い取りを窓口で依頼する。
大物はご領主様に売り払ったので、大した額では無かったが、其なりに成ったのでヨシとした。
食材の買い出しと弓矢やロープの追加をしてサラとガルに、
〈美味しい茸〉の追加をまた獲りに森にキャンプしに行くと告げて別れようとすると、
サラが、「一緒に行く」と言い出した。
「キャンプになるし、夜の森に良いイメージが無いんだろ?」
と、心配したのだが、
「兄貴と一緒なら大丈夫だろうし、狼が群れている場所に突っ込んでくる馬鹿な魔物はそうそう居ないから。」
とモジモジしながら言ってきた。
〈は、はぁーん、寂しかったな。〉
と納得した俺は、二人で1泊2日で〈美味しい茸〉狩りに向かったのだが、
狼の嗅覚を使い香りが強いキノコを探すのがあれ程楽に成るとは考えて無かった。
ガイルス辺境伯のパーティー会場に目玉食材として使える量の〈美味しい茸〉が俺とリオ、サラとガルのコンビで難なく集まってしまった。
新たな家族は頼もしいな…
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