第49話

九州に着いたらすぐに遺跡のあるダンジョンに向かう。


向かう先はここ、熊本県にある阿蘇山だ。


『熊本阿蘇山第1ダンジョン』


ここは珍しい近くに二カ所あるダンジョンだ。

一つは洞窟型の第1、そしてもう一つが火山型の第2。


今回行くのは洞窟型の第3級ダンジョンだ。


ちなみにもう一つの火山型は第8級だ。

まだ攻略はできていない。


だがスタンピードを起こさせないために浅い階層をちょくちょく狩っているらしい。

浅い階層だとレベルも低いからできるらしい。

そのかわりレベルはほとんど上がらないらしいけど。


とはいえ、それでも起きるときは起きるのだが。





俺たちはダンジョンに近くに作られた施設に入る。

見たところなんというか、ダイバー専用のショッピングモールって感じだな。


中はずらりと様々な店が並んでいる。

人も多い。

ここら辺から魔石目当てのダイバーもいるんだろうな。


しかしそれにしても多いな。

こんなところを利用するのはダイバーだけのはずだが。

一般人もいるのだろうな。


あそこはカフェ…か?

お茶してる人が多いな。


それにカップルも多いな。

さすがにダイバーはそんないないはずだから、片方は一般人だろうか?


モテるんだろうな…。

いやあれ、女性の方だけがダイバーか。

アイテム袋、というかポーチを女性の方が持っている。


別の店では酒飲んでる人もいるなぁ。

今日はもう上がりなのかな。


風呂場もあるな。クリーニングも。

後、ふつうのショップとかも併設されているのか。


ん? ポスターだ。


「ダイビングスクール 君もここで一流のダイバーになろう?」


これ絶対にネタで名前付けただろ。

しかし、ダイバーの学校か。そんなのあるんだな。


いや命のことを考えたら普通はこういう所で学ぶか。

いきなりダンジョンに潜るなんてアホのやることだ。


そういえば俺はいきなりダンジョンに入ったな…。


…。




「あ、『リュミエハーツ』だ」

「本当だ。そういえば遺跡の調査をするって話だったな」

「今日もかわいいねぇ」

「荷物持ちでいいから一緒にいけないかな…」

「なんか新しい子いない? 付き添いか?」


施設に入って数秒でリュミエハーツが噂になった。

めっちゃ有名だな。ツイートされてそう。


そして早速認知される俺。

やっぱしオリジナルにしてよかった。


遙達はそんな人たちを気にせず、施設の中にあったダンジョン受付で申請をしていく。


「食事をとったら、ダンジョンに行きましょうか」


遥達は施設をでて、ダンジョンへと続く道を歩く。

俺もそれに続く。






「すげぇ守りだなぁ」


ダンジョン付近は結構な防備が固められていた。

ここら辺から本格的なものになるのか。


「ここは結構防備が厚いんだなぁ」

「第8級のダンジョンもありますからね。とはいえ、8級となると焼け石に水なんですけどね…」と遥。

「そうなんだ?」

「避難する位の時間は持ちますけど、普通に壊してきますよ。何もしないわけに行かないからと言うことで作られました」

「なるほどねぇ。以前訪れた1級とは大違いだな。あそこは乗り越えられないって話だったし」

「1級とは懐かしいですね。小学生の頃によく訪れてました」

「へー。遥の小学生の頃とはどんなんなんだろ」

「どんなって。普通の小学生でしたよ」

「絶対違うな」

「…皆そういいます」

「ははは」


お互いが笑う。


「…ッチ」

「ヒッ!」


殺気!


後ろから舌打ちが聞こえた。

振り返ると明らかにいらいら顔の杏奈がいた。

ニヤニヤしている紬と瑞樹もいる。


…遥との会話は程々にしておこう。




ゲートをこえ、カードをかざしてダンジョンの中に入る。

ブザーは鳴らなかった。実はドキドキしていたんだ。


入るとそこは洞窟の中だった。

洞窟を見ると最初のダンジョンを思い出すな…。


だがあちらとは違い、土の色は普通の茶色。

そしてこちらは素人ながら整備されている感じがしている。


「ここのダンジョンは結構きれいだね」

「阿蘇山第1はメインがコボルトなんですよ」と遥。

「そうそう」と瑞樹。


「コボルト…。犬頭の?」


ファンタジーの定番モンスターの一種だよな。


「はい、それです。彼らは洞窟型のダンジョンの中で出現することが多いですね」

「へー。いろんな所で出てくるんだね」

「彼らのやっかいな所はそこら辺の穴から奇襲し、徒党を組んで襲ってくることです。おそらく旭には攻撃効きませんけど、注意して下さいね」と、遥。

「来たらけっ飛ばしなよ」と、瑞樹。


コボルト達の攻撃は効かないらしい。

まぁそうだよな。

ちょっと前まで死にかけてたけどレベル99だものな。


リクエストに応えてけっ飛ばしてみるか。

出てきたところにシュートしてやろう。


「今回は護衛の練習もします。今回守られる役は莉奈です」

「おう。だまって食ってりゃいいんだろ?」

「はい。旭も護衛参加してみますか?」

「いいけど、何で護衛?」

「当日は一般の研究者もくる予定なんですよ」

「ああ、それで護衛の練習か」

「まぁ、私たちは初めてではないので、再確認ですね」


ふーん。

なんか、俺のためにやってくれてるっぽいなこれ。


…いやいやいやいや、なんかすごい勘違いしている人間みたいじゃん。

あれもこれも自分の為だ、とか考えるの。


けど冷静に考えたらそうだよな。

リュミエハーツは多分再確認する必要ないよな…?


「やるか」


そして俺の護衛訓練が始まった。



護衛訓練は案外難しかった。

ただ単に倒すだけなら余裕だが、今回はそれを訓練だからと禁止された。

使えるのは盾だけ。


ちなみに装備はアイテムポーチに入っていた。

鎧も他のメンバーとお揃いだ。


特に味方の位置を把握しながら動くというのが難しい。

阿吽の呼吸というのをしなければならなかった。


ボス戦の時は基本俺は陽動か攻撃しかしてなかったからな。

一人でできるところばかり。

パーティとしての動きは初心者だ。


そして守られ役の莉奈がすごい動く。


実際、護衛の場面になるとこういう風に護衛対象が勝手に動くことは結構あるらしい。すげぇ困る。


当然、護衛はそれに対応しなければならない。

当然、俺にはできない。


一度俺の後ろに抜けていったコボルトが莉奈にからみ、莉奈がそいつを俺の方に蹴飛ばして俺の頭にぶつかって消えてくなんて言うのもあった。


皆に笑われたよ。屈辱の極みだ。

リクエストには応えられなかった。できたのはヘディングだ。


だが、楽しかったね。

その後、色々と言われながらも遺跡のある3層へと向かった。

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