第50話
「おおー」
3層にでると、急に巨大な空間が開けた。
道は下っており、その先にあるもの見下ろす。
眼下には遺跡があった。
レンガ作りと言うほど立派ではないが、土でできた建物がずらりと見える。
道もある程度整っており、所々金属で飾り付けられた何かが見えた。
明らかに文明の香りがした。
そして中央には馬鹿高い塔が立っていた。
文様がいくつも入っており、上るための塔ではなく、象徴として作られた塔のようだ。
その上に大きな黒い玉が浮かんでいた。
すげぇ…。
地下帝国って感じか。
かつてここに住んでいた何かがいたんだろうな。
「すげぇな、こりゃ…」
「初めてみたときは驚きますよね。こんなのがあるなんて」と遥が言う。
「ああ、何でこんなのがあるんだろう。ダンジョンの不思議か」
「もしコボルトがモンスターではなくて、普通に知的生命体として生きていたらこんな感じだったんでしょうね」
「なるほどなぁ」
コボルトが知的生命体なら…か。
地下帝国もだが、何より中央にあるあの塔がすごいな。結構高い。
あんなのをよく地下に作ったな。上から作ったんだろうか。
そして俺たちは地下帝国へと入っていった。
下る道中、遠くに他のダイバーたちの姿が見えた。
彼らはそこら中を見回ったり、なにやらタブレットと睨めっこしているな…。
何してるんだろ。
遺跡に入り、塔の所まで行くと遥が指示を出した。
「では、アイテムポーチからタブレットを出して下さい」
他のパーティメンバーも自分のタブレットを出していた。
「そこに以前の調査で撮影したデータがあるので、それを見ながら怪しいところや変わったところとかないか見て下さい」
「分かった」
間違い探しはあまり得意じゃないけどな。
「とりあえずエマと莉奈は周辺の掃除を。ただ一般のダイバーもいるので気をつけて下さいね。」
「分かった」「承知」
「では調査開始で」
俺達は遺跡を見て回った。
「これは家か…」
目の前にある建物の中に入っていく。
普通の家にあるだろう居間とかが見える。
「台所…はさすがにないか」
あれは水道が各家庭にまで整備されないとできないもんな。
「なんか普通の家だな」
とはいえ、かつては何かが住んでいただろう場所を見るとちょっと感動する。
「で、怪しいところとか違いはあるかな…?」
遺跡探索に感動するのも程々にして、データと見比べる。
タブレットで見れば以前のデータが表示される。
「不審な所とか違いは、ほとんどないな。まぁ、あるとしたらこんなところじゃないか…」
細かい違いは無視していいな。
他のも見ていこう。
これは集会所だろうか。
いろんな人が集まれるような場所だ。登壇する場所もある。
ここは貯蔵庫かな…。
食料品が多くおけそうな場所だ。棚とかも見える。
ここは…鍛冶屋か?
炉が見える。
ふーん。本当に文明があったっぽいな。
とはいえ、おかしなところは見えないな。
…データと見比べても異変らしき物はあまり見えない。
そういうのを繰り返して見ていく。
しばらく超高難度間違い探しをしていると遥がやってきた。
「旭、何か見つかりましたか?」
「いや、特に…。そちらは?」
「こちらもだめでした。やはり異変となる場所は特に見あたりませんね」
「そうか」
向こうもだめだったらしい。
そういえば最初に見込み薄いとかいってたな。
「旭は魔王の壁画はみましたか?」
「まだ見てないな」
魔王の壁画とかあったな。
元々はそれが目的だったんだよ。
「行きましょう」
遥に連れて行かれた場所は、どこか儀式の場というかそんな感じの所だった。
宗教施設だろうか。
朽ちているが、その前はずいぶんと立派な建物だったことが伺える。
柱が何本も並び、その奥には登壇する場所があった。
さらにその奥に像が見える。
犬頭の巨像だ。コボルトだろう。
コボルト達の英雄だろうか?
…かつてこの場で多くのコボルト達がこの像を崇めていたのだろうか。
足元を見るとすれた後が何個のもある。
「こんな像があるんだな」
「旭、こっちです」
そして別の場所に壁画もあった。
壁画は巨大な塔が片側に描かれていた。
もう片側には塔に向かって祈っているような、崇めているような人たち。
塔はあの遺跡で見たような物と変わらない。
崇めた先は塔の天辺にいる化け物。
大きい。非常に大きい。
塔の下で崇めている人を普段みるコボルトサイズと考えるとでかいビルくらいはあるな…。
様々な魔物を集めたかのようなキメラのような形をしていた。
その化け物がコボルト達を睥睨している。
「あれが…、魔王?」
「ええ、そういわれています。魔物の王と書いて魔王ですね」
「へぇ」
「世界中の遺跡でこのように塔の天辺や地下の奥深くに王がいるという描写をした壁画があるので、何か意味があるのではと噂されてました」
「なるほどなぁ」
魔王と、魔王種か。
…けど先ほど倒したコボルトはコボルト種だったか?
「魔王って、ステータスでも魔王種とは書かれてたな」
「そういえばそういってましたね」
「あれもこれと関係があったのかな」
「…どうでしょうね。ただ、ステータスに表示されている名前は現地の人にわかりやすく設定されているので、おそらく関係がある、と思います」
「なるほど」
だが、ここに表示されているのは結構でかい化け物だった。
明らかに犬の大きさとは違う。
「あのスライムの魔王種はここまで大きくはなかったんだけどな」
「犬と言ってましたね」
「そう。車でひいちゃうくらいの」
「…確かに大きさは全然違いますね」
ん?
「よく見ると、この化け物に立ち向かっているのがいるな」
「どこですか?」
「ほら、あれ」
俺は塔を上り、武器を持って化け物に立ち向かう小さな人影を指さす。
「本当ですね…。ただあれだと、立ち向かっているのか逃げているのか」
「あー。確かに」
正直どちらともとれるような姿勢だ。
「…あんだけでかい敵なら逃げちゃうかねぇ」
「…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。