第21話

再び森の中を走り回り、別のゴブリン達を見つけた。


「ほっ」


俺はゴブリンの集団の片方に『下級氷結魔術』、もう片方に『下級粘着魔術』を使った。


片方は食らうそばから凍り付いていき、もう片方は粘着魔術からでた鳥もちに手足が絡まって動かなくなり、こけて丸まっている。


二つの集団はその場から動かなくなった。


「今思ったらこれ、効果かぶってるな」


両方とも足止めスキルだ。

まぁ、ダイバーからコピーしたスキルだから仕方がないのだけれど。


だが、練習すれば他の攻撃もあるかもしれない。

あらかじめ想像していた使い方を試してみよう。


さっそくゴブリン達を的にして魔法をあれこれと試すと、いくつが新しいことができた。


『下級氷結魔術』のほうは、一つの大きな球を細かく分解し、先端を鋭くして何本ものつららに変えれた。

これでゴブリン達を串刺しにする。


「雑魚ならこれだけで一掃できそうだな」


串刺しになったゴブリン達が消えていく様を見ながら言う。


それに加えて、『下級氷結魔術』は足元を凍らせて足止めしたり、逆に床をつるつるにすることで滑らせることもできた。


「ひねれば汎用性は高そうだ」





『下級粘着魔術』の方は、一本の紐のようにすることができた。そしてその紐は伸縮する。

つまり、ゴム紐のようにできるのだ。


これにより、木に次々とゴムひもを粘着させて某『蜘蛛男』のように移動できる。


できるが…。


「普通に走ったほうが速いんだよなこれ」


使い道は…、まぁそのうち思いつくだろう。

とはいえこの紐を使ったスイング移動は楽しかったので、しばらく森を某『蜘蛛男』スタイルで移動した。





魔法の訓練もそこそこにして、次に行いたかった回避訓練をすることにした。


再びゴブリン達を探し、接触すると当然のように襲ってくる彼ら。

全部で8体ほどか。さっそく回避訓練を始める。


「む」 


案外、難しいな。


いや、よけること自体は簡単だ。速度は明らかにこちらが上。


それに単純に攻撃を受けないだけだったら距離を取ればいい。

距離を取るだけだったらすでに最速の自信がある。


俺がしたいのはつかず離れずで相手の行動を読んで回避することだ。


こうほら、敵に囲まれていて、それらの攻撃を全部交わしながら倒していくってやつ、あるじゃん。あれよ。


だが、案外全部避けるの難しい。囲まれていたら大きく避けた場合、避けた先に普通に別のゴブリンがいる。


というか避けるときに勢いがよすぎて体が相手に接触して吹っ飛んじゃうんだよな。


それでゴブリンが死んで塵となり、魔石がどこかに飛んでいく。

それを見送る俺の頭に後ろからゴブリンの剣が振られ、剣が砕ける。


ずっとそんなんばっかだ。あんまし上手くいかない。


だがまぁ、やらないよりかはやった方がいいと信じて、それからゴブリンの集団に対する戦闘訓練をつづけた。





そうして戦闘訓練を続けていると、ある程度の回避や予測ができるようになってきた。


相手のゴブリンを使って迫ってきた矢の盾にしたり、相手の剣を奪ってその剣で他のゴブリンを倒したり。


今ちょうど、奪った相手の剣で相手の剣を巻き込んで上に飛ばし、空いた胴を切るという芸当もできた。


いいね。








「おー」


俺は拍手した。

訓練の果てに、ある程度はできるようになったな。

力加減もできている。


レベル99になると運動神経もよくなるのかな。

以前の俺だと、こんなことたった2,3時間では絶対にできなかった。

まだまだではあるけれど、ある程度の成果が出せた。


これなら、あのダイバー集団も上手く倒せるんじゃない?

どうだろう。


俺が自分で自分に拍手していると、さきほど俺が弾き飛ばしたゴブリンの剣が上から降ってきて、頭に当たった。


「…慢心するなってか?」


慢心、ダメ、絶対。






さて、そろそろ行くか。


訓練で森を走り回っているときに、ダンジョンのボス部屋と思しきところは発見している。

島の中央に小さめの湖があり、その中央に虹色の入り口がある。おそらくあそこだろう。


いざ行こうとして、足が止まった。


ドドド・・・・


遠い場所から何か地響きのような音が聞こえてきた。


「なんだ?」


外周の砂浜側からか?

あそこらへんにこんな遠くまで音を鳴らすような奴いたっけな?


「ふむ」


どうするか。しばらく止まって考えた。


何か危険があるか? ユニークモンスターとかは・・・。

高ランクだとあるらしいけれど、低ランクではどうだったかな…?


まぁけど、あったとしてもどうせ第2級のダンジョンなわけだし。

ダメージは大して食らわない。


ちょっとゴブリン倒して自信もついてきたし、思い切っていってみるか。

いざとなったら逃げればいいだろう。


俺は地響きの音がした方へ軽く駆けだし、『蜘蛛男』スタイルで木々を移動していく。


「速度はともかくとしてやっぱ楽しいなこれ」


『下級粘着魔術』を繰りだしながら、森を移動し、そろそろかと開けたところに着地する。







すると、目の前になぜか美女がいた。


…しかも、裸で。

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