第17話
その後さまざまな擬態と行動を試すとスキルを5つ引き出せた。
スキルを引き出すのは、引き出す人が増えるほどに簡単になっていった。
最後の行動の発見まで20分しかかかっていない。
そして一度引き出したものはその人に擬態せずとも引き出せるようになった。
このままだと最初にスキルを引き出すのも簡単にできるかもな。
おそらくこの先ほどコピーするために行った行動は、その人の心か何かを刺激するものなんだろう。
それでスキルが出てくる。
今の俺だとその人のおそらく代表的なスキルが引き出せる。
引き出せたのはこれらだ。
『中級槌術』、『中級剣術』、『中級盾術』、『下級氷結魔術』、『下級粘着魔術』
スキルを持っていたダイバーは6人だが、『中級剣術』がかぶって現状コピーできるスキルは5つとなった。
「ふーむ。とりあえずこれで戦うことになるわけか。」
ちなみに『中級盾術』は鍋の蓋、『中級槌術』は日曜大工で買ったハンマーで発動可能だった。
つまり俺の初期装備は『さびた包丁』、『鍋の蓋』、『日曜大工のハンマー』だ。
…いつの時代の勇者だよ。
とりあえず、こいつらを『初心者勇者セット』と名付けよう。
なんちゃって勇者の完成だ。
スキルの具体的な検証に関しては、やはりダンジョンに入ってからになる。
家の中ではできることに限りがあるからな。
次のダンジョンは、一応目星をつけていた。
そこでは攻略よりも検証に重きに置くことになるだろう。
そして少しばかり家の中で使えたスキルのことも考える。
スキルはステータスに基づいた動きを見せていることが予測できる。
『下級氷結魔術』のあのバカでかボールもそうだし、『下級粘着魔術』を使ってみたらめちゃくちゃデカイ粘着球が出た。
さきほど冗談で出した粘着玉というか巨大鳥もちのめっちゃ処理に困ってる。
困っているというか、もう、考えたくない。
今日は風呂場に入れないことは確定だ。
時間経過で消えてくれるといいのだが。本当に消えるよな?
そして思ったより粘着球の衝撃が強くて壁ドンが来た。
で、スキルだが、おそらく他のもこんな風にステータスが高いと威力もでかくなるのだろう。
スキルはあらかじめセットされた効果と行動を引き起こすのではなく、ある程度自由のあるものだ。
仮説として挙げられるのは、スキルはレシピなのかもしれない。
ステータスは素材。引き起こした現象が出来上がった料理。
MPは貯蔵庫の大きさ。HPは…なんだろう。店の壁? もしくは作り置きした何か。
初級とか中級とかは、初心者用のレシピとか熟練者用のレシピとかの感じかな?
そしてステータスという素材を用いて、レシピの手順通りに氷や玉という要素に変換して、現象をだす。
シンプルに言うと、力3、速力1、魔力5の組み合わせで混ぜる、みたいなレシピだ。
実際にはもう少し細かいと思うけど。
それならスキルがステータスに依存し、なおかつ自由度があるという話も分かる。
で、俺はステータスだけは世界で一番優れているから、下級でもあんな現象を引き起こした。
いうなれば、至高の卵と至高のしょうゆ、至高のご飯を用いて作った、至高の卵かけご飯を作ったのだ。
あ、卵かけご飯食べたい。
ま、これはあくまで仮説だし、ひょっとしたら全く違うかもしれないけれど。
ただ、だとするとレシピを覚えれば、いちいち擬態でコピーしなくてもスキルを使えるようになるのかもしれない。レシピの癖を理解できれば下級から上級や王級を引き出せるかもしれない。
スキルをコピーするなんて言う話は聞いたことがないから、まだ誰も体験していない話だ。
基本はスキルはスキルオーブで覚えるものとなっているのだから。
もしスキルコピーからのスキル習得ができれば、それは俺の強みになるだろう。
レベルよりも圧倒的な強みに。
そして前回の戦闘で課題となった、戦闘技術の習得はどうするか…。
そもそも戦闘技術なんて、一朝一夕で身につくのか?
今から空手教室にでも通う? それともボクシングがいいか?
よくよく考えれば俺の相手は人間じゃなくてモンスターだ。
対人戦闘技術なんて大して意味がない気がする。人型のモンスターが相手なら別だけれど。
モンスターへの訓練を行っている施設って、基本ダイバー関連の施設なんだよなぁ。
免許証の掲示が求められるだろう。
俺はいけない。ちくしょう。
まぁ、モンスターに関してはレベルでごり押しできるレベルのダンジョンに行くとして、人が襲ってきたら真っ先に逃げよう。
レベル99の力とかもう見せなくていい。調子に乗ってみじめな姿を晒すのはもう勘弁だ。
相手がどんなスキル持っていて、どれくらいの強さなのかはわからないし、これが一番安全だ。
けど何も新しいことを覚えないのもなぁ。
…とりあえずネット上にある動画をめぐって、回避するにはどうすればいいのかとかを勉強しよう。
そしていくつか脳内シミュをして、その後実際に行ってみたら壁ドンされた。案外うるさかったらしい。
そろそろ、直にクレームが来るかもしれないな…。
完全にこちらが悪いが、もし来たら擬態使って怖い人に変化して乗り切ろう。
もしくは美人にするか?
こう考えると便利やな、擬態。
一般人相手には最強じゃないか?
「あー…。お金どうしよう」
今日は仕事を休んでいる。だがおそらく仕事はやめるだろう。
少なくとも一年後に何が起こるのか判明しない限りは、仕事のことは考えずにそこに全振りしようかなと。
貯金はまだある。あるにはあるが、ダイバーとして働けない以上すぐになくなるだろう。
お金が無くなれば、この家も引き払わないとなぁ。
「ひょっとしたら山暮らしになるかも? まぁこんだけのステータスがあれば余裕だろうけど」
日本は田舎の方とか空き家がめっちゃ多いから適当隠れてればばれないだろう。
とはいえ、食事は普通に取りたい。お金は稼がないと。
「宝くじとかどうかな」
運999だ。当たりを引くのはそれほど難しく、ない?
いや、いやいやいや。
今までの運999のしてきたことを考えると信用できない。
宝くじを当ててそのせいで俺が不幸になるみたいな展開が待っているはずだ。
…やめとくか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。