第3話

「最高位の10級ダンジョン上空に奇怪な円環が出現!」


なんだよこれ、奇怪な円環? 

円環の理ってこと? 導かれちゃうの?


記事に掲載されている画像には、スカイツリー上空に白い円環が浮かんでいた。

円環なので中空であり、輪っかの部分にはよくわからない文様がいくつも象られていて、その端には鳥の羽毛のような形が無数についていた。


なんかスカイツリーが冠かぶってるみたいだな。

こういうマーク見たことある気がする。エンゼ〇スか?


…なんでこんなの出来てるんだろう。

記事を詳しく見てみよう。



「今朝8時ごろ、ダンジョンランク最高位の10級を冠する【スカイツリーダンジョン】上空に奇怪な円環が出現した。円環はスカイツリーの上空で輪を描いており、見たことのない文様がいくつも象られている。


朝の通勤ラッシュ時ということもあり、突如として出現したこの円環は多くの人の目に留まり、またこれを起因とした事故も発生している。


東京の一番のダンジョンであるスカイツリーの異常事態に周辺の住民は不安な心が隠せていない。


【スカイツリーダンジョン】周辺ではダンジョン協会防衛部が警備にあたっており、現在スカイツリーダンジョンは一時的に封鎖されている。


ダンジョンビッグバン以降、このような現象が起きたことはなく、ネットでは様々な憶測が飛び交っており、世界各国から注目の的になっている。


ダンジョン協会は今回の件に関しては、直ちに関係者及び専門家に連絡後、会議を開くと発表した。


24年前にスタンピード現象を確認して以降、【スカイツリーダンジョン】は最重要警戒ダンジョンに指定されており、スタンピード現象発生を防ぐために多くの人員が割かれている、か」





ツキッターを覗くと、上空の円環を背に様々な写真が撮られ、呟かれている。

写真は通行人が円環を撮影をしており、それにより渋滞が起きている光景も見える。


「ラグナロクきた! やった! みんな死んで全部リセットや!」

「それスタンピードのたびにいってる奴いるよな」

「あれはダンジョンを作った神のみしるしです。ダンジョン神を信じる者にとって幸福の象徴です。皆拝みましょう」

「天使でも来るのかな? 俺仏教徒だけど改宗しようかな?」

「誰か10級を攻略したんじゃね? それであれが出たとか」

「いくらダンジョン先進国日本とは言えそれは無理。現在最高クリア級数は6級だし。それにクリアしたら誰か発表してるでしょ」


いろんなことが言われてるわ。めっちゃ盛り上がってる。楽しそう。

俺も交じっていい? 俺関係ないからね。


うん。これは俺は関係ないね。当然だよ。

だってここは東京じゃない。埼玉だよ? スカイツリーからどれくらい離れていると思ってるの?


それに今日俺がしたことといえば、遅刻したことと犬をひいたことだよ? 何が関係あるってのさ。

ほら、ダンジョン関係のことなんて何もしていない。だから関係ないんだ。


犬をひくこととスカイツリー上空に変なものが発生すること、これに因果関係を見出したらそらサイコパスだ。

俺はサイコパスじゃない。だから俺は関係ない。証明終了。


「さーて、明日もあるし寝るかぁ」


俺はベッドに飛び込んで寝る。深く布団をかぶる。


が、10分、20分と経っても寝れなかった。


円環…。スカイツリーダンジョンの上空に円環。

先ほどの画像が何度も頭をよぎる。


思わずステータスを開く。


鏑木旭

レベル:99


HP  :9516/9516


MP  :914/914


力  :922

速力 :601

体力 :807

魔力 :943

運  :999


所持スキル:王級完全擬態


称号:魔王種を最初に倒した者 第1限界に到達せし者 魔王種討伐者


…なんか、よく見ると称号重くね?

こんなのいらんよね? 誰がこんな仰々しい称号を作ったんだよ。今すぐ消してくれ。


文句を呟きつつ、思わず称号を突っつくと詳細が表示された。



魔王種を最初に倒した者

魔王種を最初に倒した者。これよりその道が開かれる。ステータス10%上昇

第1限界に到達せし者

第1限界に到達したもの。限界突破の条件未達。ステータス5%上昇

魔王種討伐者

魔王種を討伐したもの。その魔王の代表スキルを受け継ぐ。ステータス3%上昇


…。


もう一度見る。


魔王種を最初に倒した者

魔王種を最初に倒した者。これよりその道が開かれる。ステータス10%上昇



その道。その道!


もう絶対これじゃん! あの円環、絶対これのせいじゃん!


どうすんだよこれ! 魔王種倒したら次のステージ開きますよって文面じゃねえか!

来なくていいよネクストステージ! 俺は一生1面で馬鹿みたいに笑って楽しめるからさ。


くそう。これ、人類のレベルが高くて魔王種を倒せるほどに高ければ問題ないのだろうけれど、そんなんじゃないからめっちゃ問題だ。


まだ誰も魔王種倒してないんだよな…。俺だけだよ。しかも偶然車でひいただけ。

1面のボス倒せない奴に2面のボス倒せるわけないよ…。


やべえよ。他人事で楽しもうと思ってたら本当にラグナロクっぽいの来たよ。


「誰だよ、こんな仕組みにしたやつ! ダンジョン神か? いやオーディンか! ラグナロクといえばオーディンだもんな!

来いよ! 俺がぶっ飛ばしてやる!」


やけくそ気味に叫ぶと、隣の部屋から壁ドンされた。

ごめんなさい。遠くのオーディンより隣の隣人の方が怖い。


それによくよく考えるとラグナロク関係ないわ。

はぁ。


俺はため息をつきながらもう一度ツキッターを見てみる。

あー、みんな楽しそうだなぁ。他人事だもんなぁ。俺も無責任にラグナロクやべぇとか言いてぇ。


すると一つのつぶやきが目に留まった。


突如として現れた円環、その大きな輪の端にある無数の羽、この羽の一つが白から黒に半分ほど変わっているという。

今朝現れたばかりの画像と、夕方前の画像では確かに色が違っていた。


おそらくこれはカウントダウンであり、全てが変わったときにに何かが起こる可能性がそれのリプライで指摘されている。

羽の数は360本。そして今は一つ目の半分くらいまで色が変化している。


完全に変わるまで360日…。いや、359日か


「あと1年の猶予が残されている、いやあとたった1年ってことか」


そして完全に黒に変わった後に何が起こるのか。

ろくでもないのは確かだ。いいことが起きるならあんな風には書かないだろう。


くそう。経験値ガッポガッポでお金ガッポガッポだと思ったら不安な未来ガッポガッポだ。

勘弁してくれよ…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る