第7話 決戦と決断
「おいおい? もうやめようぜ? 何度やっても同じだっての」
勇者が面倒くさそうな声でそう言う。俺は地面に倒れていた。
「……勇者の言うとおりよ、もう……いいから……」
ヒーラーが俺に駆け寄って悲しそうにそう言う。
「……いいから回復しろ」
俺はそう言ってヒーラーを睨む。ヒーラーは悲しそうな顔で俺を見ている。
「いいから回復しろ!」
俺が強めにそう言うと、ヒーラーは渋々俺に回復魔法を使った。みるみるうちに怪我だけでなく、体力も回復していく。
「おいおい~。ズルくないか? 無限にそうやって回復するつもりかよ? 何度やっても同じだっての。わからねぇんだったら……魔法で一気に村ごと吹き飛ばそうか?」
勇者はバカにした調子でそう言う。しかし、俺は剣を握り直す。
「……もういいって……アンタじゃ、勇者には……」
「ヒーラー。お前、今何回目だ?」
「え? 何回目って?」
「何回俺に回復魔法をかけた?」
俺がそう訊ねると、ヒーラーは怪訝そうな顔をしながらも、数を思い出しているようだった。
「……9回よね?」
「あぁ。そうだ。9回だ。9回程で……どれくらい強化されているか、だな」
俺はそう言って一気に勇者に突っ込んでいった。勇者は少し不意を疲れて驚いたようだった。
「お、おいおい! 不意打ちは酷いだろ!?」
「不意打ち? ……違う。お前が俺の速度に反応できなかっただけだよ」
「あ!?」
俺はわざと怒らせるようにして勇者にそう言った。すると、勇者は思いっきり俺のことを蹴飛ばす。俺は腹部に強い一撃を貰うことができた。
「ぐっ……」
「ふざけんじゃねぇぞ! 俺がお前の攻撃に反応できないなんて……あり得ねぇんだよ!」
そう言って今一度俺は勇者に思いっきり蹴られて吹き飛ばされる。
「ちょ、ちょっと!」
そう言ってヒーラーがまた同じように俺に駆け寄ってくる。
「おら! もう一度回復されてかかってこいよ! お前なんかの攻撃速度に反応できないわけねぇだろ!」
勇者は完全に激昂していた。余程、完全に格下に見ていた俺に不意打ちを食らったことが腹立たしいのだろう。
しかし、それは……完全に俺の思うツボだった。
「アンタ……一体何がしたいのよ……。もうやめようよ……」
そう言って悲しそうな顔をするヒーラー。俺はニヤリと微笑んでヒーラーのことを見る。
「……あぁ。次で最後だ」
「なっ……。あ、アンタ、もういいって……」
「……次の回復は、お前の魔法の力、全部を使って回復しろ」
「え……。で、でも……アンタ、そこまで怪我してないし……」
「いいから、回復するんだ。この9回の回復で、お前の魔法がどういうものか、俺は正確にわかった。とにかく、言う通りにしてくれ」
俺とヒーラーがそう話している間も勇者は激昂している。
「さっさと来いよ! 身の程をわきまえるまでボコボコにしてやるからよ!」
俺はヒーラーの方を見る。ヒーラーは迷っていた。
「……戻りたくないだろ。アイツのパーティ」
「え……。そ、それは……」
「俺もだ。俺も戻りたくない。だから……俺のために回復してくれ」
俺がそう言うと、ヒーラーは納得してくれたようだった。明らかに過剰な魔力が体に流れ込んでくる。
そして、俺は自分が……それとともに過剰に強化されるのを実感するのだった。
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