第157話 あれから……
———卒業後の皆の経過報告だ。
まずは陽葵と大地君だ。
陽葵達は大学卒業後に結婚。そして大宮楽器店を継ぐためそのまま楽器店で働いている。陽葵は喫茶希乃音でマスターの手伝いを続けている。偶に店のピアノも弾いてて腕は全く衰えて無い。
子供は三人。女、女、男だ。
そして波奈々と小宅君は、結婚はまだしていないものの同棲生活を送っている。
仕事も二人でクリエイターな事をしていて、小宅君はCGを中心とした制作関係で、波奈々は各方面での作曲活動で生計を立ててる。
二人とも国内では一般にも名が知られる程の有名人になっていた。波奈々は容姿も頭も良いのでモデル業やクイズ番組なんかにも出演する程の売れっ子になっていた。っていうか芸能人だ。
そしてこの二人が付き合っている事も一般に知られている。早く結婚すればいいのにね。
当然、二人のサインは貰っている。
隆臣君と実莉亜ちゃんは、なんと! 付き合う事なく高校を卒業。高校卒業後も隆臣君は遠距離ながらアタックし続けているが、全然実が結ぶ事なく時間が過ぎているようだ。実莉亜ちゃんは自宅から仕事に通っているから、未だご近所付き合いを普通にしてるけど、隆臣君について聞いてみたら「たまに会うよ。一緒にいると何も気遣いする事なくて心地いいね」と言っている。それ、結婚したら長続きするやつだ。
燈李君と紗凪ちゃんは、紗凪ちゃんの地道且つちょっと強引な「外堀から埋めていこう作戦」も、大学でも就職後も続けていたけど、全然気持ちに応えない燈李君にとうとう痺れを切らして、紗凪ちゃんの方から燈李君を連日夜這い。見事に授かり婚で結婚した。目的のためには手段を選ばない……怖いね。ついでに言うけど、就職後は紗凪ちゃんが燈李アパートに押しかけ同棲してた。なんだかんだでそんな関係だった訳だ。因みに子供は男の子が二人だ。
燈李君は紗凪ちゃんと付き合う事を嫌がっていたけど、それは紗凪ちゃんを思っての拒否だ。なので結婚してからは紗凪ちゃんを凄く大切にしている。普通にラブラブだ。
ついでに言えば、実家はお向かいさんだしお隣さんなのでお盆とお正月は毎年顔を合わせてる。
そして晴乎君は、なんと! 高校在学中にライブ会場でプロダクションからスカウトされ、高校卒業と同時にドラマーとしてプロデビュー。プロダクションで組んだバンドで活躍中だ。
中性的な容姿から女性に人気もあり、そして、あのタンバリンをTVで披露。コメディアンとしての頭角も。多方面に顔を出して波奈々同様、かなりの売れっ子芸能人になった。本人はドラム叩くよりコメディアンでいる事が楽しいみたいだ。勿論サインは貰っている。
偶に波奈々とコラボしたりもしてるから縁というのは面白い。
で、ここまで話を引っ張った愛花と空君だけど、高校を卒業して大学へ。そして間も無く二人は別れてしまった。
二人の話では、大学在学中にお互いにやりたい事を見つけたそうだ。そして、お互いに相手がやりたい事を達成させる為には自分が邪魔という結論に至り、お互いに自ら身を引いてしまったのだ。思いやりってなんだろう?
最後に私と正吾君だ。
高校卒業までは受験勉強に勤しみ、二人で志望校に無事合格。そして高校卒業後、私の誕生日にすぐ入籍。私は「御前丹菜」となって、結婚しながらも大学に通った。入学直後に籍入れたから学校の色んな変更手続きが面倒で大変だった。焦りすぎた事をちょっと後悔。
大学も難なく卒業して私と正吾君はそれぞれに就職して、その後、子供も二人授かった。女の子と男の子の年子だ。
娘は二階堂家の長男と同い歳。息子は陽葵の真ん中の女の子と同い歳だ。互いの子供達は歳も近いので顔を合わせれば一緒に楽器を弾いて遊んでる。
そんな姿を見てると、私達が子供の頃、何も知らずに撮った集合写真を思い出しす。
———ある日、街が主催のフェスがあり、あの田中さんの計らいで「ハイスペックス」が復活! 波奈々はプロだから参加出来なかったけど、愛花と二人で顔を出してくれた。
そして、ライブ中、空君が愛花に向かってあのクリスマスライブを再現した。
「———想いは未だ貴女の心に。同じ気持ちなら左手を差し出して……」
結果は……この後、楽しい同窓会になったとだけ言っとく。
これにてお話は終了です。私達の子供達は勿論バンドを組んで活躍します。でもそれはまた別のお話なので……機会があったら子供達がお話してくれると思います。
それでは皆さん、また何処かでお会いしましょう。
…………そう言えば何か忘れ———そうだ! 私にはまだ正吾君に秘密があったんだ!
———私の通帳の残高……いつ教えよう。
全然バンドとか興味無いのに正体隠して生活してる隣の部屋のギタリストとカラオケ行ったらバンドのボーカルに誘われて私まで正体隠すようになった。 にもの @bucci515
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