第99話 あの頃の私達を見てるみたい

 ―――新学期が始まり私達はいつもと変わらない朝を迎え既に学校にいた。


「おはよう御座います」


「葉倉さんおはよう」


 私が登校して席につく時にはすでに浅原君は席に座っていた。彼とは文化祭で色々有ったが特に意識すること無く普通にお話はしている。陽葵は完全無視だけどね。


「つかぬ事聞きますけど、今日は波奈々と一緒に来たんですか?」


「いや、今日は……今日から一本遅い電車で登校するって言って僕一人で来たんだけど……突然どうしたんだろ?」


「そうですか……有り難うございます」


 私はその話を聞き、ベランダからEクラスへ急いで向かった。そしてベランダへの出入り口が丁度正吾君の席がある場所だ。私は吾君の隣に立った。私は正吾君と二人で波奈々と小宅君が来るのを待っていた。


「早速今日から一緒に来るみたいですよ。浅原君から妹が今日から遅い時間の電車で行くって言ってたそうです」


「そうか、彼女も行動力あるな」


 すると波奈々が教室に入ってきた。


「おはよー」


 その一分後、小宅君が教室に入ってきた。二人を見てるとなんか余所余所しというか他人のをしているというか……事情を知っている私達が見ると「わざとらしい」感じに見えて、ちょっと笑いが込み上げてくる。


 波奈々は私をみると


「―――ニコ♪」


 もう、その笑顔が全てを物語っていた。そのリアクションが嬉しくて私は思わず正吾君のホッペに「チュッ♡」ってして何も言わずに教室に戻った。


 ・

 ・

 ・


 ―――その日の晩。波奈々から電話があった。

 

『丹菜……いい♡ 電車いいね』


「でしょ? たまに身体と身体ぶつかって……正吾君は結構ガッチリした身体で力強さみたいなの感じたんですが、小宅君はどうなんですか?」


『それが意外といい身体してんの。聞いたら中学生の頃、マンガのヒーローに憧れて筋トレしてたら習慣付いたみたいで、未だに続けてるんだって』


「動機はどうかと思いますが凄いですね」


『あと、言ってたとおり、匂いが……いい♡』


「でしょ? それだけで朝ご飯要らなくなります」


『わかる♪ なんで早く丹菜に相談しなかったのか、ただ今絶賛大後悔中だよ』


「ところで朝って待ち合わせとかどうしてるんですか?」


『私のマンションの方が遠いから、私が彼のマンションの前で待ってる感じ』


「だったらインターホン押しちゃったらどうですか? 家族の人も巻き込んじゃいましょう。小宅君のお母さんも喜ぶと思います。正吾君のご両親は私という存在に凄く喜んでくれました」


『うん……ちょっと聞いて見るよ。ただね……オタク君にお姉ちゃんいるんだよ。ちょっと……それが怖い……かな?』


 お姉さん……敵か味方か……。


 ・

 ・

 ・


 ———翌日の昼休み。


「丹菜……お前、波奈々になんか吹き込んだ?」


「何かあったんですか?」


「波奈々、朝、オタク君の家のインターホン押して来たらしい」


「えー! 早速実践したんですか!」


「やっぱりそうか……」


「で、どうだったんですか?」


「お姉さんに大層気に入られたそうだ。休みの日、遊びに来いとも言われたらしい」


「それは良かったです」


「……男紹介するとも」


「それは良く無いです」


 私達の会話を聞いた陽葵も、


「小宅君は波奈々の事なんて言ってるの? 結局好きなの? どうなの?」


「あー……オタク君の心境を簡単に言うと、付き合う前の……ゲーセンで陽葵達と会った時の俺と丹菜……だな」


「小宅君が一歩踏み出せば……ってところね」


「オタク君曰く、高嶺の花過ぎて全然実感が無いそうだ。向こうの気の迷いだとも思ってる位だからな」


「まぁ、気持ちは分かるね」


 ・

 ・

 ・


 そんな平穏な日々が過ぎつつ、波奈々はゆっくり恋を育んで来たんだけど……間も無くそれが一気に爆発する出来事が起きる……

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