全然バンドとか興味無いのに正体隠して生活してる隣の部屋のギタリストとカラオケ行ったらバンドのボーカルに誘われて私まで正体隠すようになった。

第68話 奇跡の写真

　———日も変わり今日は土曜日。先週私がかけた迷惑と正吾君とのことを黙っていたお詫びを兼ねて、正吾君の部屋にご招待した。

　折角集まるならということで、ついでに期末テストの勉強会も開いた。テーブルが足りないので一つ私の部屋からも持ってきた。

　空君が私達の生活の状況に一言。

「しかしお前ら部屋が隣同士って……で、何？　一緒に飯食ってんだろ？　完全に同棲じゃん」

「平日はちゃんと別々に寝てますよ」

　私の一言に陽葵が反応する。

「それ、休日は一緒に寝てるって事でしょ？」

「えへへ、そうですね」

「———おい丹菜、少し黙ってろ。お前が喋るとどんどんボロが出そうで怖い」

　正吾君が私の暴走を制止しようとしている―――け・れ・ど・♪止まってなるものですか！　今です！　ここです！　皆に知らしめるのです。

「大丈夫です。結婚の話は内緒ですから」

「はい？　結婚って何？」

　愛花ちゃんがビックリしている。空君も目が丸くなった。

「おいおい！　お前、絶対わざと言ってるだろ？　怒るぞ」

　正吾君、言ってることと顔が真逆だ。ニヤけてる。何だかんだで正吾君も嬉しいんだよね。

　でも、正吾君、心配しなくても大丈夫。仲間はもう一組、私達の傍に居るのです。

「ふふふ。大丈夫ですよ。陽葵と大地君だって似たようなもんですし」

　私の一言に大地君が驚く。陽葵はニコニコしてる。

「え？　俺と陽葵？　あー……あー言われてみればそうだよな。そっか、俺らって許嫁な感じなんだな」

「私も丹菜に言われて初めて気付いたんだけど……と言う事で、今度私達のこと紹介する時は『大地の許嫁』で宜しくね」

「おいおい、それは……悪く無いかな？」

　大地君の言葉に正吾君、複雑な表情になってる。陽葵達の関係を公にしちゃうなら、丹菜も……って心配してるのかな？　大丈夫。私は公言するつもりは無いと思うから……ふふふ。正吾君はここにいる全員の状況を見てちょっと呆れていた。

「大地……それでいいのかよ……ま、この場にいる奴ら全員頭ん中お花畑になってるからな……いいのか？」

　私達と陽葵達のやり取りに、空君も決意が固まったのかな？　愛花ちゃんに将来の約束っぽいことを言ってる。

「俺も愛花とこいつらと同じような関係になるように……愛花に飽きられないように頑張るよ」

「あんまり頑張んないで。じゃないと私が付いていけなくなる」

　すると突然、正吾君が、

「そうだ！　空で思い出した。この写真見てくれ」

　どうやら、ここにいるメンバーと空君がキッカケになったのか

正吾君はあの事を思い出したようだ。

　正吾君はスマホに写真を表示させテーブルの中央にそのスマホを置いた。

「何？　あ、これってこれ私で、これ大地、正吾君に丹菜だ。あは♪　ホントに四人で会ってたんだね」

「五人だよ」

「え？」

「これ」

　陽葵が「五人」と聞いて驚く。正吾君が後ろに写っている男の子を指差す。その男の子を見て陽葵は吹き出す。

「ぶっ！　空じゃん！　どう見てもこれ空でしょ？」

「どれ？　……確かに俺だな？」

　愛花ちゃんも画面を覗き込みクスッと笑う。

「ホントだ。前見せて貰った子供の頃の写真と一緒だ」

　後で空君から聞いた話しだけど、空君が自分の両親にこの時の事を聞いたら、このフェスでとあるバンドのベースを聞いて、その楽器が欲しいと言い続けていたそうだ。それで、小学一年のクリスマスにベースを買ったらしい。

　そして空君が食いついたその時のバンドなんだけど、空君のご両親二人とも、そのバンドの歌声が印象に残っていて未だに覚えていたそうだ。そのバンド名が「LION heart」……空君のベースのキッカケは実は陽葵のお父さんだったのだ。

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　———勉強も皆順調に進んでお昼ご飯の時間になった。お昼ご飯は女の子達皆で作ろうと思ったんだけど……空君がキチンに立ち、手際よく三品作った……しかも私（丹菜）より美味しいと陽葵が大絶賛。

　———愛花ちゃんがちょっと羨ましくなった。

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　そして時は進み、何事も無い日々が続き終業式を迎えた。

　その終業式のステージに、空君、愛花ちゃん、大地君、そして私の婚約者の正吾君がステージの上に立っている。

　その四人に向けて校長先生から一言。

「先月、ここにいる四人は交通事故現場で率先して人命救助にあたったとして消防署から感謝状が送られました——————（以下、省略）」

　校長先生の話は無駄に長いからね。要点だけで後は割愛。

　事故では死者がいなかったそうだ。正吾君達の措置のお陰かは分からないけど良かった。

　目立ちたくない私の婚約者の正吾君は今年に入ってから目立ちまくってます。