全然バンドとか興味無いのに正体隠して生活してる隣の部屋のギタリストとカラオケ行ったらバンドのボーカルに誘われて私まで正体隠すようになった。

第76話 二学期の嵐

　―――夏休みが終わり、二学期が始まった。

　私と陽葵は今日からちょっと本気のナチュラルメークでビシッと決めて登校だ。

　一応昨夜、陽葵に連絡して「絶対オシャレにキメる」って念押ししといた。

　―――マンションを出てから視線を感じまくっている。慣れてるって言えば慣れてるが、見られるって余り気分のいいものでは無い。

　学校最寄りの駅から学校までの道のりでは私への声がハッキリ聞こえてきた。

「葉倉さんなんかメチャクチャ可愛くなってない？」

「目で追っちゃうね」

「正吾君が余計に引き立ててない？」

「御前……お前は俺達の誇りだ！」

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　Ａ組の教室前、いつもと同じくここで正吾君とお別れだ。

「新学期初日から辛いです」

「俺のネクタイで我慢だ」

「そうでした。ス——— …… ハ——— …… 大丈夫です」

「何も、今俺いるんだから直接吸えばいいだろ」

「そうでした！　うっかりです。もう一回」

　私は正吾君に抱きついてもう一回……五回深呼吸した

「丹菜、朝から何処でイチャついてんの。そこ邪魔。家でやりな」

　手ぶらの陽葵が廊下から声を掛けてきた。トイレの戻りかな？

「おはようございます」

「うす」

「おはよ。約束どおりちゃんとキメて来たけど……丹菜もキメて来たね」

「———じゃ、陽葵、丹菜頼む」

「あいよ。じゃね」

「正吾君行かないで———」

　私は陽葵に手を取られ教室に入ると、教室内が騒めき出した。

「希乃さんに引き続き葉倉さんもなんかバージョンアップしてんだけど」

「可愛い子が二人手繋いでるとメチャクチャ可愛いくない？」

「尊い……」

「眼福である」

「可愛いは正義」

「同じクラスにしてくれた神（作者）に感謝する」

　私は席に着くと陽葵は私が座る椅子に無理やり半分座って来た。可愛い子が二人仲良く一つの椅子に座ってる状況だ。

「これ落ち着かないよ。皆ジロジロ見るんだもん」

「しょうが無いですよ。可愛い子の宿命です。私だってジロジロ見られてるんです。『大地君の彼女可愛いよね』って大地君皆に言われたら、彼、喜びますよ」

「―――だね。大地喜ぶ顔見たいね」

　私の席は、廊下から二列目で一番前。朝、教室に入って来た子は真っ先に私達に目が行く。私達の様子を見た子は立ち止まり、見惚れてから自分の席に移動していた。

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　教室では久しぶりの顔ぶれと夏休みの出来事自慢な話しで盛り上がっていた。そんな中、

「なぁ、この机って誰の？」

「ん？　無かったよね？」

「1、2、3、……あれ？　一つ多くない？」

　その事で陽葵も、

「転校生、このクラスに来るみたいだね」

「どうして分かるんですか？」

「机、私の隣に一つ増えてる」

　どうやら、あの編入生……「浅原波奈々（あさはらばなな）」さんか、お兄さんの「浅原大河（あさはらたいが）」さんがこのクラスに来るようだ……席は陽葵の右隣。

　クラスは40人。一列七席が四列。廊下側の二列は一列六席。なので二席ほど余裕がある。

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「みんなおはよう。早速だけど転校生だ。入って来い」

　”ガラッ”

　女の子が響めき出す。入ってきたのは浅原（兄）だ。彼は教室に入った瞬間、私と目が合った。すると「お！」って顔をした。夏休み、コンクール会場で素顔は見せてる。私は一応愛想笑いする。

　彼はそのまま皆の前に立った。

「自己紹介よろしく」

「浅原大河です。双子の妹がＥクラスに編入しています。兄妹共々宜しくお願いします」

　高瀬さん並……いや、それ以上のイケメンぷりに女の子がみんな小さくキャーキャー言ってる。しかも爽やかだ。

　男子は彼から出た「双子の妹」の言葉に何かを期待しているようだ。

　しかし今、気になるワードが聞こえた。「妹はＥクラス」……正吾君のクラスじゃ無いですか！　しかも、正吾君の座席は陽葵と同じ位置。そうすれば席は100%正吾君の隣です。

「（正吾君の危険が危ない！）」

　危険が危ないって意味不明な事思っちゃいましたが、これは早く助けに行かなければなりません。

「席は、一番後ろの空いてる席な」

　浅原兄は先生の言葉に机の方に目をやると、私と目が合った時と同じ反応をした。陽葵と目が合ったんだろう。

　浅原兄が静かに机の間を歩いて行く。皆、彼の姿を目で追いかけている。前の席の子は振り返ってまで見ている。私は首が回る範囲だけ彼を追いかけた。

「よろしく。希乃さん」

　後ろの方で彼の挨拶の声が聞こえた。しかも陽葵の名前を呼んでる。さり気無く皆に「陽葵と知り合い」アピール入れて来たようだ。陽葵は無言のままだ。

　今日は始業式のあと、LHRで下校になる。