前のエピソード――第70話　浅原兄妹

　今日はバンドメンバーで海に来た。

「正吾君どうですか？　これ紐ですよ。脱がせやすいですからね」

「お前、何アピールしてんだ。こんなところでやれるかよ」

　女子は全員ビキニだ。私の水着は婚約者の正吾君が脱がしやすいように紐だ。まだ外でした事がないのでかなり期待しているんだけど……場所がない。

　愛花ちゃんが周りを警戒するようにキョロキョロ周りを見ている。周りの視線に気付いたようだ。

「なんかさっきからヤラシイ視線感じるんだけど……気のせいじゃ無いよね？」

　空君、愛花ちゃんの言葉に呆れて溜め息を一つ吐（つ）く。

「愛花、お前ら学校でなんて言われてるか分知ってるか？　俺ら含めて『美少女達とその僕（しもべ）達』だぞ。それが水着着てたら皆見るのは当然だろ」

　とにかく海に着くなり視線は私達に集まっていた。ぶっちゃけ私達は可愛い。スタイルもそれなりにいい。しかも三人日焼け防止もあってメークもしっかりしている。

　ついでにおっぱいランキングだけど、陽葵が一番大きい。私と愛花ちゃんは同じくらいだ。標準より少し小さいくらいかな？　自分で言うのもなんだけど形は良いと思ってる。

「空、オイル塗って」

「いいよ」

　早速愛花ちゃん空君にオイルを塗って貰ってる……貰ってるんだけど……

“ﾋﾟｸ……ﾝ“　“……ｧ”　“ﾓｼﾞﾓｼﾞ……ﾝﾝ“

　なんか変な吐息混じりの声が聞こえるんだけど……愛花ちゃんって感じやすい？　後日女子トークで聞いてみたら、空君にそんな身体にされてしまったらしい……空君、何をどうすればそんな身体に変えちゃうの？　最近、彼女色っぽくなったなって思ってたけどそう言う事？

　私も陽葵もそれぞれの婚約者にオイルを塗って貰った。

　・

「ちょっと飲み物買ってくるね」

「待って下さい、私も行きます」

「じゃあ私も」

　女の子三人で売店に向かうと早速男二人が声を掛けてきた。

「ヘイ！　そこのギャルズ達、俺らと一緒にトゥギャザーしない？」

「この人何言ってるんですか？」

「意味分かんないから無視無視」

「ちょっと無視しないでよー」

　流石に人目が多いので無謀な事はしてこない。

　ついでに言うと「トゥギャザー　＝　Together　＝　一緒に」って意味だ。中学生の読者はテストに出るから覚えておこう！

　愛花ちゃん、ナンパされた事にちょっと興奮してるようだ。

「私初めてナンパされた……」

「ライブの行きとか帰りとか二人で歩いてたりすると結構されますよ」

「だね。人通り多いところなら安全だけど、少ないところは何されるか分かんないから気をつけてね」

「分かった」

　売店に着くと、食べ物もそれなりに売っていた。

「あ、焼きそばあるね。オジさんサービスしてくれると嬉しいな♪」

「おう！　嬢ちゃん達可愛いから盛り良くしとくよ」

「ありがとう♪　オジさん大好き♡」

　陽葵、よくやるよ……。

　・

　私達は彼氏達の飲み物と食べ物を買って元に戻る途中……またナンパにあった。

「ねえねえ、彼女達両手塞がってるね。それ持って上げるよ」

「あ、有難うございます。じゃあこっちに運んで下さい」

　陽葵は男達に物を持たせ、彼氏達が待つ場所に戻ってきた。

「どうもありがと、ここに置いてくれればいいよ」

「———誰？」

　寝そべってた婚約者の正吾君が半身を起こして男達を睨む（日差しが眩しくて目を細める）。低いトーンの声、そして「やんのかオルァ！」な顔つきだ。ただ、色白だから強そうには見えない。因みに大地君は脱ぐと結構マッチョだ。

「あ、この人達、なんか持ってくれるって言うからお願いしたんだ」

「———そうか……それじゃあ、お礼しないとな」

　正吾君は身体を起こすと……、

「あ、いえ俺達はこれで———」

　男達は去って行った。愛花ちゃん、興奮して空君にナンパの事、報告してる。

「空、私、初めてナンパされたの。凄くない？」

「愛花さぁ……ナンパされて当然だろ？　綺麗なんだから……ﾓｼﾞﾓｼﾞ」

　何この男？　自分の彼女に「綺麗」って言って照れてる。愛花ちゃんまで照れ照れになってる。照れ照れ愛花は綺麗が取れて可愛いくなる。

　そんな二人を尻目に陽葵と大地君は浮袋持って海に入って行った。

　私達四人はビーチに残って話しをしていた。

　・

　暫くして海から戻ってきた陽葵は少し上気した顔で満足げな表情をしていた。雰囲気を察するに海の中でイッてきたな？　大地君は……いつもと変わりない。どうやら陽葵だけ満足させてきたようだ。私も婚約者の正吾君と……と思ったけど二番煎じはなんか悔しいので違う方法を考えた。だけど岩場の陰も無いし、人が多くてどこも無理だ。なので諦めた……ｼｭﾝ

　後で陽葵に聞いたら、家では場所と時間がなく、殆ど外でやってるらしい。そう考えると私の環境って……最高だね。

　・

　海から帰ってきて正吾君はソファーに横になってる。私は海での開放感から婚約者の正吾君とやる気満々だったけど、シャワー浴びて一息吐いたら……朝になってた。そんな日もあるか……。