第74話 双子の美男美女
―――今日はライブの日だ。
夏真っ盛り。外は暑い……いや熱い。ライブハウスは地下でしかもエアコンが効いているから涼しいって言えば涼しい。
大地君が空君と話しをしているけど……こんな話しをしている二人を初めて見た。
「なぁ、空、この『天国への扉』ってバンド、聞いた事あるか?」
「いや、この辺じゃ耳にしたこと無いな」
「夏休みだし、遠征にでも来たのかな?」
「順番は?」
「俺達の前だ」
「じゃあ、先に袖に行って演奏聞いて見るか?」
「だな」
あまり無い事だけど、私達はステージ袖に行って前のバンドの演奏を聴きに来た。まだ、ライブは始まっていない。
すると、このバンドにはキーボードのパートがいた。女の子だ……け……ど……あれ?
「―――あれ? あの子って……」
私は記憶を辿った……どこかで見た記憶がある……最近だ……最近どこかで……あ!
「陽葵、バナナちゃんです。あの赤ドレスの」
「あ―――! あの子か。だからコンクールの演奏、ロックっぽかったんだ。ギターは双子の兄だね」
「ですね」
キーボードの子は、コンクールで話し掛けてきた子だった。
クラシック曲にロックを混ぜてた理由が分かった。彼女もバンドやってたんだ。
―――そしてライブが始まった。
サイザーは勿論、ギターも凄く上手い。ギター……婚約者の正吾君に匹敵する? 私が初めて婚約者の正吾君のギターを聴いた時の気持ちを少し思い出した。そのくらい印象に残る演奏だ。
「なんか、ギターの音……正吾君に似てますね」
「そうかなぁ……うーん……似てるって言われれば似てるけど……」
陽葵の言葉が煮え切らない。そして陽葵は私の婚約者の正吾君にギターの演奏の事を聞く。
「正吾君、あのギター聴いてなんか感じる?」
「上手い! ただそれだけだな」
「でしょ? でもキーボードは……伸びしろ感じるかな?」
「ああ、ちょっと今つけあがってる感じはするけど、それが無くなったら陽葵2号になりそうだな」
「そうだね。ちょっとライバル居なくて上を知らないって感じだね」
なんか、陽葵と私の婚約者である正吾君が納得しあってて、二人の世界を作られた気分だ。ちょっと嫉妬するんですけど!
「なに二人で納得しあってんですか!」
怒っている私を見て、婚約者の正吾君が私に問いかける。
「ん? 納得って言うか、お前に分かるように言えばこのバンドに『ロックを感じない』かな? 違うか? なぁ陽葵」
「だね。『ロックを感じない』が一番しっくりくるかな? 初めて正吾君の『ロック』が理解出来たよ」
「今、ロックを演奏してるのにロックを感じないって全然分かりませんよ」
「そうだな……コンクールでの小学生の旋律は『ロック』だったな」
「そうだね。あの子達とは私もセッションしたいね」
「余計分かりません。なんなんですかその『ロック』って」
「思い出せよ、お前が言ったんだぞ。『熱量』って。このバンドからはその『熱量』を感じないんだよ。」
「あ……そう言われたら分かりました。確かに、私もこの演奏に自分の声、乗せても乗らない気がします」
「ンだべ?」
私の言葉に、陽葵は珍しくこの辺の方言100%で相槌した。
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