第6話
奴を追いかけていると後ろから甘ったるい匂いがした。熟れすぎた果実の様なその匂いには思い当たりがある。
蠅が目の前を横切った。それを合図にしてか、そいつが話しかけてきた。
「待たせたな、火車」
と、月神らしき人間が後にいた。俺は振り向きざまに拳を放つ。月神は驚いた顔でそれを防ぐ。
なるほど。これは愉しい。嬉しいサプライズだ。俺は久し振りに機嫌が良くなった。
「挨拶はこの程度にして、夢魔を追いかけようか」
「そうだな。逃げ出さないうちに向かうとするか」
俺は、月神とおぼしき奴の後に付いて奴に導かれる。そいつの黒い長髪の三編みが歩くたびに左右に揺れる。今日はそれに腹が立つこともなかった。
「今日の怪異は美味そうだな」
思わず俺は呟いた。今日の月神はそれに反応しない。これが夢なら覚めて欲しくは無い。そう、思った。
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