120話 帰還
ゲートの中に入ったはいいが、辺り1面暗闇で方向感覚がなくなる。前後左右上下、自分がどこにいるのかも分からないし、これから何処に行くのかもわからない。
「あ」
試しに声を出してみる。一応、声はでるが反射するものが無いからかいつもとは違う感じ気持ちが悪い。
──これがゲート? リリア達は何処に……?
見渡す限り黒1色。もしかしたら近くのいるのかもと、気配を探るが誰かがいるような気配はまるでない。
これだけ何もないと時間の感覚も狂ってくる。まだ数分だとは思うが、体感的にはずっと長い。
それから暫く闇の中を歩き続けると、一点の光が見えてきた。
──あそこがゴールか?
距離はかなりある。歩いても歩いても大して近付いた感じはない。しかしそれでも、俺は歩みを止めずに遂には光へとたどり着いた。
拳大の小さな光だ。だが、一体どうすればいい。訳も分からないまま試しにその光に触れると──
「なんだッ!? 急に輝きが──」
闇に包まれていた俺は一変して、光の中に呑み込まれた。
────
──
─
気が付くと俺は、見慣れた景色の中にいた。
全く掃除など行き届いてはいない汚い部屋。カップ麺のゴミ等がそこら中に転がっている。
「帰って……来たのか?」
夢でも見ているのだろうか。試しに頬をつねってみると、鋭い痛みを感じた。どうやらこれは夢ではなく、俺は本当に元の世界へと帰ってきたみたいだ。
それもわざわざ自分の部屋に。
思っていた以上に感激はしなかった。勿論嬉しくはあるのだが、オシリスの言葉が頭から離れない。
──幽世と現世の融合……つまりニフェルタリアとこの世界を含む全ての世界が融合するって事だよな?
一体何が目的なのか検討もつかない。しかし、アイツは願いは叶えたと言っていた。
「てことは、もう色んな世界が混ざってるってことか? 馬鹿馬鹿しいにも程がある」
俺は仄暗い部屋の窓を開け、外を見渡す。
「──は?」
俺の家は神奈川県横浜市。駅から数分といった立地で窓を開ければそこかしこにオフィスの入り乱れたビルが建っている。
俺の記憶が正しければ、正面のビルには不動産や、怪しい探偵事務所の看板があったはず。
ゲートをくぐる時に頭でも打ったのだろうか。
「探索者、組合ぃ?」
どうやら、この世界はもう俺が知る世界とは違うようだ。
そして聞きなれた軽快な音と共に、あるはずのないウィンドウが表示された。
【チュートリアルを完全にクリアしました】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます